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第8章・侵入者
◆ 29・犯罪者たち(前) ◆
しおりを挟む「へ、ヘクター……なんで、あんたが一人でココに?」
過去の色々から、私の部屋には近寄らないように言い置いていたはずだ。彼もそれもを守ってきた。
「やぁやぁ、お姉さん! 驚いてるね? ベルベルに頼まれた護衛さ! 俺がしっかりお守りするよ! さぁ、この面白い厄除けを」
「ベル……って、誰よ?」
「坊ちゃんだよ! 友達になったんだっ、俺たちとっても気が合うんだよ! いわば魂の双子だね」
あぁ……エイベル! よりによって、あんたこの男と友達になるって、どんな確立引き当ててんだ……!
意識が吹っ飛びそうになるのを必死で留める。
知らない侵入者よりも知っている殺人犯の方がマシだろう。少なくともどういうタイプの危険人物か分かっているのだから――。
しかもコイツ、フローの友達でもあるわけだし……友達二人の姉を殺害する事は、な……い、よね? って、そういえば、フローがいなくなった事どう思ってんだろ?
「ねぇ、ヘクター? フローレンスとは……最近どうだった?」
捕まっている事を知らない可能性を考え、選びに選んだ質問をする。
だがヘクターは奇妙な顔をした。
「普通に仲良しさ? なんで?」
いやいや、連絡が取れないとか色々ない? フロー捕まってるんだから最近は話せてないはずだし……。
「私は……最近話せてなかったから、えーっと……フローレンスと最後に話したのって、いつ?」
我ながら可笑しな質問だと分かっている。ヘクターとて頭が悪いわけではないから、何かを察知する可能性もある。むしろ知っていての返答だったかもしれない。
思い悩む私に、彼は満面の笑みで応じる。
きもちわる!!!!
「あのね、お姉さん。俺は優しい男だから教えてあげるよ! フローレンスは投獄中さ! 話したくても話せなかったから大丈夫だよ!」
何が、大丈夫なんだ?
「へ、ヘクター的には、フローの投獄について思う事……あったりしないの?」
「え? しないけど?」
ヘクターに常識を求めた事が間違いだった。普通の感性をしていないから世紀の犯罪者になったのだろう。
「それにね、お姉さん」
「それに?」
「俺には意味がないんだよ、牢屋って! こう見えてもかつてから今に至るまでたくさんの投獄経験があるからね! 抜け出す事も侵入する事も自由自在さ! だから最後に話したのは昨日だねっ」
マ、ジ、か。
「天使も認めるクソ犯罪歴を舐めてたわ」
「お姉さん、そういう事は心で思うだけにしなよ。人間関係に傷が入るよ? 俺は気にしないけどね!」
「……で、フローどうだった?」
ヘクターに気遣い無用と脳内メモを取る。
「元気だったよ? ヒマだって!」
「へぇ……」
フローレンスは心配無用も付け足す。
そこで丁度、扉が開きエイベルが入ってきた。
「全員捕まえて来た。顔、見てよ」
どうやら私の『顔を見た後』という言葉を実行する気らしい。一応、姉として立ててくれているようだ。
だけど、顔を見た後……が、問題よね。
さて、どうしよう?
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