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第9章・思惑の行方
◆ 23・妹との面会(中) ◆
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その日はいつもよりも二時間は早く起きた。
いや、起こされた。
曇天気味の空はまだ明けてもいない。
なんでこういう時間選ぶのかしら……いっそ人の多い時間の方がよっぽど隠れやすいんじゃないの?
眠気は全く晴れず気分も空も暗い中、ミランダに任せた馬車に乗り込む。どうやら、辻馬車を拾ってきたようだ。
「お嬢様」
渡されたのは本当に紙の束。
「これを振って鳴らせと?」
「そこは任せます」
あっそ……。まぁ、お父様がセッティングしたなら顔を出すしかない。
何度も人生やり直してるのに、親に逆らうことが一番やりにくいって何だソレ……。
「フローレンス様の安否が一番ですから、しっかり話してきてくださいね」
ミランダにとっては友人でもある妹フローレンスは、偽聖女として不敬罪となっている。実際は本物の聖女だが、それを言及するには証拠が足りない。
いっそ、今回カエルに戻す王子を救った人物として脚光を浴びせるのもアリなのでは、とも考えた。だが当のカエル王子は、それを良しとはしないだろう。
「聞くべきことは分かっていますね? お嬢様」
どっちが主だか分からない迫力で、彼女は問う。
「一番目、元気と体調確認。二番目、どんな毎日を送っているかチェック。三番目、今まで何を言われ行われてきたかの回答を貰う」
「そうですそうです。とても心配ですから二番目をしっかり聞いてください」
「いやいや、聞かなきゃいけないのは三番目な気がするけど? 教団側が何を考えてるのか見えそうだし」
「お嬢様! あなたはあの方の姉でしょう!? 心配じゃないんですかっ」
心配かどうか、ですって?
思い出してみれば、動物たちとほほ笑む妹ではなく、母の死体を前に泣く妹の姿が浮かぶ。
「まぁ、……大丈夫なんじゃないの? あの子、あんたが思ってるよりずっとヤバい子だし」
「お嬢様!!」
「あーっ、わかったわかった!」
両手を上げ、降参のポーズを取ると、ちょうど馬車が停車した。
「では、この後はお静かに。相手の指示に従ってくださいね」
降りた私たちは少し歩いた。
いつかの大乱闘をしていた神殿を前に大きく息を吐く。そして――手にした紙の束をバッサバサと揺らし、音を立てた。
揺らしすぎて、手から零れ落ちていく。
地面にバラバラと落ちた紙を呆然と見つめ、ミランダを振り返る。彼女は素知らぬ顔をしていた。
仕方なく、しゃがみ込み紙を拾い始める。この紙の音が必要なのだから自分で拾う他ない。もはや後ろに控えている侍女は侍女であって侍女ではないのだ。
ミランダったら、手伝ってくれてもいいじゃないのっ。
ふいに手元が翳る。
「お手伝い致しましょう」
壮年の男の声だ。父よりも優し気な声に顔を上げれば、神官服姿と皺が刻まれた柔和な顔。
想像よりも体ががっしりとしている。
男はそれっきり黙って紙を拾う作業をした。
いや、起こされた。
曇天気味の空はまだ明けてもいない。
なんでこういう時間選ぶのかしら……いっそ人の多い時間の方がよっぽど隠れやすいんじゃないの?
眠気は全く晴れず気分も空も暗い中、ミランダに任せた馬車に乗り込む。どうやら、辻馬車を拾ってきたようだ。
「お嬢様」
渡されたのは本当に紙の束。
「これを振って鳴らせと?」
「そこは任せます」
あっそ……。まぁ、お父様がセッティングしたなら顔を出すしかない。
何度も人生やり直してるのに、親に逆らうことが一番やりにくいって何だソレ……。
「フローレンス様の安否が一番ですから、しっかり話してきてくださいね」
ミランダにとっては友人でもある妹フローレンスは、偽聖女として不敬罪となっている。実際は本物の聖女だが、それを言及するには証拠が足りない。
いっそ、今回カエルに戻す王子を救った人物として脚光を浴びせるのもアリなのでは、とも考えた。だが当のカエル王子は、それを良しとはしないだろう。
「聞くべきことは分かっていますね? お嬢様」
どっちが主だか分からない迫力で、彼女は問う。
「一番目、元気と体調確認。二番目、どんな毎日を送っているかチェック。三番目、今まで何を言われ行われてきたかの回答を貰う」
「そうですそうです。とても心配ですから二番目をしっかり聞いてください」
「いやいや、聞かなきゃいけないのは三番目な気がするけど? 教団側が何を考えてるのか見えそうだし」
「お嬢様! あなたはあの方の姉でしょう!? 心配じゃないんですかっ」
心配かどうか、ですって?
思い出してみれば、動物たちとほほ笑む妹ではなく、母の死体を前に泣く妹の姿が浮かぶ。
「まぁ、……大丈夫なんじゃないの? あの子、あんたが思ってるよりずっとヤバい子だし」
「お嬢様!!」
「あーっ、わかったわかった!」
両手を上げ、降参のポーズを取ると、ちょうど馬車が停車した。
「では、この後はお静かに。相手の指示に従ってくださいね」
降りた私たちは少し歩いた。
いつかの大乱闘をしていた神殿を前に大きく息を吐く。そして――手にした紙の束をバッサバサと揺らし、音を立てた。
揺らしすぎて、手から零れ落ちていく。
地面にバラバラと落ちた紙を呆然と見つめ、ミランダを振り返る。彼女は素知らぬ顔をしていた。
仕方なく、しゃがみ込み紙を拾い始める。この紙の音が必要なのだから自分で拾う他ない。もはや後ろに控えている侍女は侍女であって侍女ではないのだ。
ミランダったら、手伝ってくれてもいいじゃないのっ。
ふいに手元が翳る。
「お手伝い致しましょう」
壮年の男の声だ。父よりも優し気な声に顔を上げれば、神官服姿と皺が刻まれた柔和な顔。
想像よりも体ががっしりとしている。
男はそれっきり黙って紙を拾う作業をした。
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