死亡回避困難で悪役令嬢は鬱ってる。―理想ENDは天使も悪魔も出し抜いて大往生ですけど?―

ムツキ

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第11章・恩赦

◆ 17・刺客たちの輪舞(前) ◆

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 あえなく取り押さえられた船長を取り囲む私と他二名。
 船長の背をエイベルが踏みつけている。

「知らん……! ただ場所を貸しただけだっ」

 船長は叫ぶ。

「誰に貸したのよ!」
「チャーリー、船長には相手が分からないと思うよ?」

 私の問いに答えたのはアレックスだ。

「相手だって秘密裡に事を運びたいわけだから、細心の注意を払ったろうし……だから、聞くなら『どんな見た目』だったか、だよ」
「どんな見た目だったのよ」

 改めて船長に問う。

「どこにでもいるようなヤツだったよ! 汚ねぇ身なりでっ、訛りがあって……」
「年はどれくらいに見えましたか?」
「四十、いや五十かもな。頭も髭もグチャグチャのツラだったから、ちっと分かんねぇな」
「そうですか」

 考え込むアレックスにモニークが口が挟む。

「そんなに悩む事かしら? おおかた、無職の家無しを雇ったんでしょうよ。今頃あっちでは死体が上がってるんじゃないかしら?」
「うん、だろうね」

 彼はそれっきり黙り込んだ。
 私はエイベルが壊したあたりを見て回り、部屋の半分が吹き飛ばされた儀式の間を突き止めた。
 確かに白塗りの一間、文字の羅列、中心にあったであろうイカの焼き物が砂と化している。原型をとどめていないが、数体分はありそうだ。
 モニークが私の側に立ち、舌打ちした。

「これ、先輩を狙った反教団の仕業じゃないのよね?」

 小さい声で聞けば、彼女は私を一瞥し頷く。

「本人たちが乗っている船で行うわけがないでしょう」


 本人たち……先輩を狙うべき私と、モニーク?


「任務は分かっているでしょうね?」

 モニークの言葉に今度は私が頷く。

「監視に来たの? モニーク」
「YES以外の返答を望んでいたならバカと申し上げるしかないですね。ヨーク家で『何か』が起きれば連絡を貰う事にしてましたから」


 腹立つ言い方! 確信が欲しかったから聞いただけだっつーの!


「あの男、本当は何者です?」

 アレックスの事だと思い至り、悩む。とりあえずは設定を守るべきだろうと、紹介文のまま答える。すなわち、第三王子からの見張り兼護衛だ。

「そう。なら……今、あなたを狙ったら彼は助けられる実力がある、という事かしら?」


 いやいや、それはないですね!? カエルは武力放棄して生きてきたんだし?! 護衛なんてアレックスの方が欲しいくらいじゃないの!!!!


「今は、止めた方がいいわ……」

 言葉を探す。
 視線を部屋の外に走らせ、少年と目が合う。


 素晴らしい! あんたが神か!!!!


「エイベルがいるのよ? そもそも他の護衛なんて私には必要ないのよ」

 余裕たっぷりに告げれば、彼女もエイベルの姿を認め、肩を竦めた。

「確かに……止めた方が良さそうですね」

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