死亡回避困難で悪役令嬢は鬱ってる。―理想ENDは天使も悪魔も出し抜いて大往生ですけど?―

ムツキ

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第12章・秘密は舞台

◆ 1・魔女の棲み処 ◆

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 小鳥のさえずりが耳を打つ。


 あぁ、……またなの……?
 また、ミランダに起こされる所からスタートね。今回はどんな死に様だったっけ……?


 ぼんやりした頭で体を起こす。
 目を開けば見覚えのある部屋――ではなくて、見覚えのない老婆が視界に写り込んでいる。しかもその後ろはみすぼらしい厚手の布、布、布だ。
 四方に視線を向けて見るも、円形のテントらしい事が分かった。
 改めて老婆に視線を戻せば、彼女の容姿は寝物語の魔女にそっくりだ。三角帽子も縮れた白髪も、皺のよった鷲鼻も、黒いワンピースもだ。
 老婆は私の凝視に、口を開く。

「悪魔は何体になった?」


 は?


「悪魔を何体従えておる?」
「……悪魔って、契約込みならルーファとミランダだから二匹ね」

 老婆が舌打ちをする。

「程度の低い悪役じゃな」
「ってか、あんたが誰よ」
「言葉に気をつけよ。見た目はお前が見たい物を見ているにすぎぬ」

 ずいぶんと偉そうな老婆だ。


 確か、私って……いぶされたか、燃やされたかしたのよね? いったい誰が何のために……誰も止めなかった事も気になる。
 アレックスたちは無事なんだろうか?


「全てはお前の真なる姿を見る為にした事。じゃが、まだ足りておらぬな」
「さっきから、何の話よ!」


 火あぶりされかけたってのに、足りないって何? 頭おかしいでしょ!


「帰るが良い。お前に『城』は早い」
「しろ? ……魔王城、の事?」


 え、どういう意味? さっきの悪魔を部下にした数が問題って事? 少なすぎって事よね??


 かつての私は侯爵家の令嬢として頭を下げる事もイヤだった時期がある。今の私は、誇りよりも命を信条としている。
 しかともしれない老婆だろうが、赤子だろうが、頭を下げて教えを請える人間だ。

「見識豊そうなお婆さま! どうかもっと詳しく細かな情報提供、よろしくお願いします。特に魔王城関連を!」

 老婆は首を振る。

「達しておらぬ。知識が欲しくば、会いに来よ。砂の下にて待つ」


 砂の、下??


 瞬き一つ。
 老婆は消え、布の壁も消える。
 あるのは白い煙、チラチラと見える炎――石牢だ。すでに空気取りの穴すらも塞がれている。


 私……『これから』死ぬのね……。


 膝を屈する。
 次に向けてやるべき事の一端は見えているのだから、この死は無駄ではないはずだ。


〈チャーリー……は〉
 ……アーラ、あんた、やっと起きたのね……。
〈チャーリーは、生きられる。信じて……祈って〉
 ……誰に、祈れって言うのよ……。


 アレックスか、エイベルか。どちらにしろ、今更遅すぎる。空気は重苦しく、息ができている事も不思議なくらいだ。
 火をかけられているのだ、あっという間に炎にまかれて熱さに喘ぎ、内臓から焼かれる事だろう。
 アーラが起きた所で何も変わらないと分かっていても、一人で死ぬよりは耐えられそうな気がした。


〈チャーリー、信じて……〉
 何をよ……。


 天使は好きにほざく物だ。
 信じて救われる世の中なら、私はこんなにリスタートしていない。


〈……フォティアを……〉
 フォ……ティアって、火、よね……?


 私は一瞬、場違いにも時を忘れた。
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