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第14章・灰は撒かれた
◆ 12・聖女と魔王(前) ◆
しおりを挟む「おはようチャーリー! いい朝ね!」
堕天使フローラの声で目覚める。
今日で三日目――聖女との約束日だ。憂鬱な気分で、同じベッドに眠るエイベルを揺すり起こすも、彼はフローラを一瞥し、首を振る。
間に合わなかったか……。
やはり雑魚を食べてもたかが知れてるって事ね……、三日じゃ次の町に移動が間に合わないって思って、手当たり次第に近場のモンスターを狩りまくったっていうのに!
「こまってるの、チャーリー? でもチャーリーはやりなおせるんだしー、なんどでもチャレンジしたらいいかなーっておもうよ!」
「それがイヤだから頑張ってたの」
「がんばってたの? へぇーーっ!」
腹立つな!?
「で、これからどうするの? あがくの? あきらめるの?」
「フローラ……私の導き手なら血をちょーっとエイベルにあげたりとか、どう? ほら、聖女を退ける様ように……」
「むりー。ニクもってないしー」
あっさり断るフローラに、エイベルが応じる。
「だいじょうぶ。けずって、食べる」
頼んでもダメか。
頼みの綱はアレックスだがアレ以来、音沙汰がない。
「いいわ、エイベル! 生きる為に二人で戦うわよ!」
「……うん、ザコ、たかがしれてる、でもいないよりマシ」
このクソガキ……。
さっさと起き上がり、身支度を整える。その最中エイベルは二度寝に突入し、フローラは無駄な宙を浮遊し続けた。
まずはアレックスと合流し、何かしらの打開策がないかを聞く事からだ。
憤然とドアに向かい、開け――固まる。
「おはようございます、姉様」
聖女こと妹だ。
開けたドアの先に、何故か立っている。どうやら私はまだ夢の中にいるらしいと、ドアを閉める。
ダメね、しっかりしなきゃ。
「おはようございます、姉様」
今度はドアがひとりでに開く。フローレンスだ。もちろん分かっている。
彼女は前回と全く同じ、みすぼらしい服装ながら完璧な所作で挨拶した。
「約束の日だなって、ドキドキしながら来てしまいました」
来てしまいましたじゃないわ、来るなよっ!!!!
「姉様、気のせいか……少しだけ力をつけました?」
「フローレンス! 約束は約束よ!? 三日、今日の夜中までは私の時間なんだから!!」
彼女はキョトンとして、頷く。
「もちろんです! 約束は守ります。がんばってくださいね、見ていますから」
「……見るの? え? 側で?」
「はいっ」
微笑みたっぷりなフローレンスに、顔を顰める。
私たちは敵同士のはずだ。なぜこんなにもこの女は余裕を持っているのだろう。勇者を選出し、それほどの時間は経ってないはずだ。
「オネーサマ……ヤる?」
いつの間に起きたのか、後ろからエイベルが問う。
「あら、あなたがわたしを?」
聖女は私の横を通り過ぎ、ベッドに身を起こしただけの魔王の下に近づいていった。
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