死亡回避困難で悪役令嬢は鬱ってる。―理想ENDは天使も悪魔も出し抜いて大往生ですけど?―

ムツキ

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第16章・リスタート

◆ 9・苦手な交渉相手(中) ◆

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 お父様と話すことは、昔から苦手だった。
 仕事が第一の人だし、私への興味も薄いと分かっていた。お父様にとって私はヨーク家の使える駒でしかない。いや、お互いがそう思っていたのかもしれない。
 利害の一致でしかない親子関係。
 私にとっても父は困った時に使える存在。実際リスタート人生の中では何度も、使えるものは使うスタンスで使用してきた。それくらいでしか役に立たない存在だとさえ思ってきたからだ。

 腹を割って話すなんて、無理だ。
 家族ほど厄介な存在はない。

 父の部屋の戸をノックする。

「お父様、娘1ですけど入ってもいいですか?」

 微妙な許可申請にも父はすぐに入室許可を出す。思えば父が私に怒ることもなかった。行儀や作法でうるさいのはメイド頭たちだ。
 朝ぶりの部屋に入れば、相変わらず整然と片付いた執務机の奥に父がいた。

「一日に二回も訪ねてくるなんて珍しいね。あ、もしかして誕生日だから欲しいものでもおねだりにきたのかな? しょうがないなぁ、何が欲しいんだい?」
「違います」

 これから話すことを思ってか、自然と声が硬くなる。

「珍しいね。じゃあ、聞こうか」

 父が私を見つめる。


 話すと、決めたけど……伝え方を間違ったら速攻病院よね? 過去に何度か病院に収容されたことあるし! どう伝える?


「お父様、ちょっと今、その……お知恵を、貸りたい気配の出来事がありまして、……その、……もらえますか?」
「ふむ……つまり、悩み事ってことかな? メイドや王子の方が的確な答えをくれるんじゃないかな? 父様に答えられるか自信はないよ?」


 でしょうね?!
 私も相談なんて絶対お父様にしないわ! でもオブラートに包んで言わないと即病院に収監されかねないっ。


「し、……死んだ後って、どうなると思います?」

 やっとのことで絞り出した言葉だ。


 うん、ないわ。
 マジでないわ……、何言ってるの、私? 怪しい宗教にハマったって思われるわね、これ……。


「娘1は、ずいぶん先のことを考えるね?」

 父は意外にも普通に会話をしてきた。

「いわゆる天国や地獄といった話をしたいのかな?」
「いえ……」


 勇気を出せ、私! 言い方は大事だ、病院送りはイヤだ! でも、もう病死カウントダウンなのよっ。何か突破口が必要で、あのアレックスがこの方法がイイって言うんだから……進まないとっ、この道を!


「もし、……お父様」


 言わないとっ!


「お父様、私は今から……可笑しな話をします。きっと病院に送られるかもしれないような話になります」

 死んでも死ねなくて、ずっとぐるぐる戻って回って、同じ所から出られないリスタート人生。理解など求める気はない。

「ふむ……面白そうだね、聞こうか」

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