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第16章・リスタート
◆ 10・苦手な交渉相手(後) ◆
しおりを挟む乗り気な父に驚いたのも一瞬。
話す上で、気を付けるべき点は父の思惑には気付いていないていで話すことだろう。文字通り、墓穴となる可能性がある。
ポイントは三つね!
まず一つ目は、私が天使の命令で聖女を聖女たらしめるために孤軍奮闘していること。
二つ目は、魔王などの役者と配役はすでに知っていて、下の魔王たちとも手を組んでいること。
三つ目は、オリガの庭や魔王の城までは行きついていること、だ。
父の灰色計画や実は天使かもしれない疑惑などは、全く気付いていないという方向で話を進めれば、あるいは――。
◆◇◆
「……これで、全部よ」
慎重に話したせいか、時間をずいぶん取った気がする。
途中、父はメイドに軽食や飲み物を運ばせ観覧でもしているノリで耳を傾けてくれた。一通り話し終えてみれば、うまく話せたかどうかよりも、無事に――五体満足で――終わったという安堵しかない。
私は冷めた紅茶を一口すすり、ホッと息を吐く。
ふと、顔を上げれば父が読めない笑みを浮かべていた。
これは……どういう表情?
しばらく私たちは見つめ合ったまま、無言の時間が流れた。
相手は何ともないかもしれないが、こちらは心臓がいつ止まっても可笑しくないくらいにはバクバク脈打っていた。
「……お父様、信じてくれますか?」
不安から声もか細くなっていた。
だが、父は首を傾げる。
ダメなの……?
「ん? 娘1、信じてほしいの?」
「そりゃもう!」
「ふむ、でもそれにどんな価値が? お前は話を聞いて欲しかったんじゃないの?」
「え、うん、そうですけど……」
父は緩く笑んだまま中身の減ったカップを見つめる。
「お前の要望通り話は聞いたよ。ただ、何を求めているのかは分からないなぁ。お前は父様に何を求めてこの話をしたの?」
「そ、れは……っ」
助けてほしい。
協力してほしい。
……だって、生きたいから。
「……アドバイス、が欲しいというか……、協力して欲しいというか……」
「いいよ」
あっさりと父は言う。
あっさりしすぎていて、逆に信じられない。例としていくつかのリスタート失敗話もしたというのに、伝わってないのだろうかと不安になる。
「お父様、私、何度も失敗してますよ」
「お前を生かすことは簡単だよ。天寿を全うさせるくらいなら、さした労力でもない」
「ほ……っ、本当ですか!?」
父は鷹揚に頷く。
「でもね、お前の話から推察するに時間の浪費でしかないよ。条件を達成してこそ、お前は箱庭から解放される。さて、今度は父様から質問だ」
「はぁ」
「お前は『無為な生の謳歌』と『意味ある栄誉の死』、どちらが欲しいんだい?」
こんなのバカげている。
それに、父の質問がこれほどバカバカしいとは――。
「両方ですね! 意味あっても死にたくないし、天寿で死にたいですもん」
父は満足げに拍手した。
「今までで一番いい返答だね、娘1」
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