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#9 神崎さんがVtuberになったワケ
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神崎の家は、閑静な住宅街にある一軒家だった。
大きさは普通。やや女性的な、趣味のいい外観をしてる。
玄関扉の鍵穴に、神崎がバッグから取り出した鍵を差す。
ガチャリと音を立てて鍵が開いた。
扉を開けて入りながら、神崎が言う。
「なにしてんの? 早く入りなさいよ」
「お、お邪魔します……」
俺はおそるおそる玄関に上がる。
綺麗に片付けられた玄関は、左側に二階への階段、右側に奥へと続く廊下がある。
二階にも一階にも、人の気配を感じない。
「誰もいないのか?」
俺が聞くと、
「お母さんは仕事。弟は病院」
神崎がローファーを脱いで玄関に上がりながらそう言った。
「お父さんは?」
「……いないわ」
「そ、そうか。すまん」
「謝ることじゃないわよ。いないものはいないってだけ。とくに不都合も感じないわ」
「誰もいないのに男子を上げてよかったのか?」
ためらいながら玄関に上がりつつ言う俺に、
「男子ぃ? あんたが? ぷっ、なに意識しちゃってるわけ?」
神崎から辛辣な罵倒が飛んできた。
「おまえな。俺だって一応男なんだぞ」
「男だからって、あんたに何ができんのよ? 言っとくけどわたし、空手の段持ってるわよ?」
しっしっと、左右のジャブを繰り出しながら神崎が言う。それ、空手じゃなくてボクシングだよな? ほんとに持ってんの?
「あれ? 神崎って部活はやってなかったよな?」
同じクラスにいれば、そのくらいの情報は自然に耳に入ってくる。
そんなに意識しちゃってキモい!とか言われそう、なんていうのは、陰キャにありがちな杞憂だろう。
神崎はなんてことはないという調子で、
「わたしが高校上がった頃に、弟が病気しちゃってさ。部活やってる余裕ないんだよね。お金もかかるし、お見舞いとかもしなくちゃだから」
「それでVtuberやってるのか?」
「あ、先に上行ってて。上がってすぐがわたしの部屋だから。わたしは飲み物取ってくる。下着漁ったりしたら殺すわよ」
「いちいち一言多いんだよおまえは……」
俺は一人で階段を上る。
神崎の言った通り、上ってすぐ前にドアがあった。ドアにはファンシーな文字で「EMILY」と書かれたプレートがかかってる。
「お、お邪魔します……」
本人がいないのにそう言って、俺は神崎の部屋に足を踏み入れる。
入った瞬間、ふんわりと甘い匂いが鼻を打つ。
いかにも女の子らしい部屋だった。お揃いの柄のカーテンはピンク色。ベッドとドレッサー、チェストはすべて白。フローリングの床にピンクのマットが敷かれてて、そこに小さなテーブルが置いてある。テーブルの前後にピンクのクッションがひとつずつ。
「……ちょっと、なに人の部屋の匂い嗅いでんのよ」
振り返ると、盆にグラスを二つ載せた神崎がそこにいた。
「か、嗅いでねえよ! どこ座ろうか迷ってただけだ」
「どうだか。『これがクラス一の美少女の部屋か、クンカクンカ』とか思ってたんでしょ」
「思ってねえよ! まあ、なんかいい匂いするな、とは思ったけど。芳香剤かなんかか?」
「べつになにも使ってないわよ。匂いってその日の気分次第で邪魔になるし、なによりお金もかかるしね」
「じゃあ、これは神崎の体臭……」
「ちょっと! 変な想像するのやめてくれる!?」
神崎に促されて、小さなテーブルの前に座る。
その向かいに神崎が座った。
「神崎がマジキャスのライバーになったのって、お金を稼ぐためなのか? 配信でもハイチャ投げろって煽ってたけど」
ハイチャ(ハイパーチャット)とは、マイチューブの投げ銭機能のことだ。視聴者はコメントを送信するのと同じ手軽さで、配信者にお金を投げることができる。人気のある配信者だと、俺の一ヶ月分の小遣いを軽く超えるような額が飛びかってる。
「うーん。微妙なところね。べつに、うちは貧乏ってわけじゃないわ。パパはいないけど、ママは会社員で、けっこう稼いでるみたいだから。
でも、お仕事は大変そうなのよね。出世するために残業も引き受けてるみたいだし。わたしと弟の学費に加えて、弟が病気してるから、その分も稼がないといけないの。家に帰ってくるのもいつも遅いわ。
それで、ちょっとは足しになるかと思って、マジキャスのオーディションを受けたってわけ」
「それでサクッと受かるのがすげーよな……」
マジキャスはVtuber事務所の中では中堅といったところだが、Vtuberになりたい奴なんて星の数ほど溢れてる。
こいつが受けたオーディションだって数百倍……下手をすれば千倍以上の倍率だろう。俺だったら受ける前にあきらめてる。
「なんでそこでVtuberなんだ? 普通にバイトすればいいじゃないか」
「だって、すごく儲かるって言うじゃない。ちょっと美少女のフリしておしゃべりするだけで、月収数千万とか聞いたから」
「Vtuber舐めすぎだろ。そんなに儲かるのは一部の人気配信者だけだ」
その人気配信者たちだって、「ちょっとおしゃべりする」だけで稼いでるわけではけっしてない。どうすれば配信がおもしろくなるのか、どうすれば人に見てもらえるのかと、日々研鑽に研鑽を重ねてる。もちろん、好きだからこそできるんだろうけどな。
「う……そ、そんなの、実際やってるわたしのほうがわかってるわよ!」
「……すまん。そうだよな」
厄介オタクにありがちな後方腕組みプロデューサー面が出てしまったか。
「でも、事務所の一期生の中にはマイチューブ登録者数が百万を超えた人だっているんだし。わたしだって同じ事務所の二期生なのよ? 可能性はあると思うじゃない!」
「まあ、ワンチャン狙えるポジションにいるのはたしかだよな」
だが、それはあくまでもポジションだけだ。
先日チャンネル登録者数が百万を超えたマジキャスのエースライバー・十六夜サソリは、高度な企画力、視聴者を楽しませるサービス精神、当意即妙のトーク力を兼ね備えた、天性のエンターテイナーだけどな。こいつのクソザコ未満残念配信力で太刀打ちできるとは思えない。
「芸能事務所にスカウトされたこともあるけど、顔を出すのはちょっと怖いし……。アイドルの握手会なんて、あんたみたいなキモい豚がずらっと並んでるのよ!? ネットで見てゾッとしたわ!」
神崎は身体を抱き、震え上がりながらそう言った。
「俺はオタクだけど太ってはねえよ!」
「内心でブヒブヒ言ってる精神的な豚じゃない!」
「おまえほんと口悪いよな!」
「その点、Vtuberならキモいファンと直接会うこともないでしょ?」
「それはそうだけど……」
でも、こいつの場合、それはメリットなんだろうか。
認めたくないけど、神崎は外見だけならアイドル級だ。
アイドルになる道を選んでいたら、こいつの顔は強力な武器になってただろう。
だが、Vtuberでは、見た目のよしあしは関係ない。
Vtuberになったことで、こいつは最大の武器を殺してしまった。
美少女という皮を脱ぎ捨てた神崎は、単なる口の悪い、空気の読めない地雷女でしかなかったわけだ。
「身バレが心配ってのはわかるけどな」
アイドルがストーカー被害に遭ったなんて話はよく聞くし。
今だって、中身がこんな美少女だとバレたら、絶対変なやつが湧いてくる。
そこまでは共感できたのだが、
「それに、普通のバイトなんて、時給が安すぎてやってらんないわよ。なんだって貴重な青春を、一時間800円かそこらで売り飛ばさなきゃいけないわけ?」
神崎が、余計な一言を付け加える。
「結局楽に儲けたいだけじゃねーか」
「楽に儲けて何が悪いのよ。愚直に安い時給で働いたっていいことなんて何もないわ。単純労働をいくらしたって、スキルが身につくわけでもないじゃない。人生の無駄遣いよ」
「おまえ、いまの発言で全国のアルバイターすべてを敵に回したからな。ほんま、そういうとこやで」
生きていくのに十分なお金が稼げればそれでいい、という発想だってあると思う。
それこそ、Vtuberの中には、バイトで生活費を稼ぎながら夢を追いかけていた人たちも多いはずだ。
Vtuberの「前世」を詮索するのは野暮だけど、やっぱりつい想像してしまう。
声のいい人は声優を目指していたのかもしれないし、歌の上手い人は音楽家志望だったのかもしれない。プロの芸人さん並みにトークが上手い人や、漫画家が認めるくらいにイラストの上手い人もいる。
この世界には、「この人、Vtuberになるためだけに生まれてきたんじゃないか?」と思ってしまうような人たちがたくさんいる。
でも、Vtuberという「仕事」が生まれたのは、たかだか数年前のことにすぎない。それまで、こんなにおもしろくて才能のある人たちが、無名のまま眠ってたっていうんだから驚きだ。
もしVtuberという概念が生まれてこなかったら。
こんなにも魅力的な人たちのことを、存在すら知らないままで、俺は人生を終えていただろう。そう考えると、とても切ない気持ちになってくる。
だからこそ、この奇跡をなかったことにはしたくない。
俺が全力でVtuberを推すのはそのためだ。
……といっても、高校生の俺にできるのは、チャンネル登録したり「いいね」押したりウィスパーで感想をシェアしたりするくらいなんだけどな。
「最初っから注目してもらえる規模の事務所からデビューできるのはほんとに幸運なことだと思うぞ? そこにあぐらをかいて人を見下すような態度をとっちゃダメだろ。おまえが手にしたチャンスを手にできなかった人たちがたくさんいるんだからさ」
……いや、俺も人に説教できるような立派な人間じゃないんだけどな。
家計の足しにと思ってVtuber始めたこいつのほうが万倍えらいような気もするし。
神崎が、俺の言葉に手を打った。
「あ、そっか。こういう言い方をすると、安い給料で働いてる人たちを敵に回すのね。新しい発見だわ!」
「その発言も十分敵に回してる感じだけどな! ハイチャ飛ばしてる人たちだって汗水垂らして働いてんだよ!」
こいつのことを一瞬でも「えらい」と思った俺が馬鹿だった!
大きさは普通。やや女性的な、趣味のいい外観をしてる。
玄関扉の鍵穴に、神崎がバッグから取り出した鍵を差す。
ガチャリと音を立てて鍵が開いた。
扉を開けて入りながら、神崎が言う。
「なにしてんの? 早く入りなさいよ」
「お、お邪魔します……」
俺はおそるおそる玄関に上がる。
綺麗に片付けられた玄関は、左側に二階への階段、右側に奥へと続く廊下がある。
二階にも一階にも、人の気配を感じない。
「誰もいないのか?」
俺が聞くと、
「お母さんは仕事。弟は病院」
神崎がローファーを脱いで玄関に上がりながらそう言った。
「お父さんは?」
「……いないわ」
「そ、そうか。すまん」
「謝ることじゃないわよ。いないものはいないってだけ。とくに不都合も感じないわ」
「誰もいないのに男子を上げてよかったのか?」
ためらいながら玄関に上がりつつ言う俺に、
「男子ぃ? あんたが? ぷっ、なに意識しちゃってるわけ?」
神崎から辛辣な罵倒が飛んできた。
「おまえな。俺だって一応男なんだぞ」
「男だからって、あんたに何ができんのよ? 言っとくけどわたし、空手の段持ってるわよ?」
しっしっと、左右のジャブを繰り出しながら神崎が言う。それ、空手じゃなくてボクシングだよな? ほんとに持ってんの?
「あれ? 神崎って部活はやってなかったよな?」
同じクラスにいれば、そのくらいの情報は自然に耳に入ってくる。
そんなに意識しちゃってキモい!とか言われそう、なんていうのは、陰キャにありがちな杞憂だろう。
神崎はなんてことはないという調子で、
「わたしが高校上がった頃に、弟が病気しちゃってさ。部活やってる余裕ないんだよね。お金もかかるし、お見舞いとかもしなくちゃだから」
「それでVtuberやってるのか?」
「あ、先に上行ってて。上がってすぐがわたしの部屋だから。わたしは飲み物取ってくる。下着漁ったりしたら殺すわよ」
「いちいち一言多いんだよおまえは……」
俺は一人で階段を上る。
神崎の言った通り、上ってすぐ前にドアがあった。ドアにはファンシーな文字で「EMILY」と書かれたプレートがかかってる。
「お、お邪魔します……」
本人がいないのにそう言って、俺は神崎の部屋に足を踏み入れる。
入った瞬間、ふんわりと甘い匂いが鼻を打つ。
いかにも女の子らしい部屋だった。お揃いの柄のカーテンはピンク色。ベッドとドレッサー、チェストはすべて白。フローリングの床にピンクのマットが敷かれてて、そこに小さなテーブルが置いてある。テーブルの前後にピンクのクッションがひとつずつ。
「……ちょっと、なに人の部屋の匂い嗅いでんのよ」
振り返ると、盆にグラスを二つ載せた神崎がそこにいた。
「か、嗅いでねえよ! どこ座ろうか迷ってただけだ」
「どうだか。『これがクラス一の美少女の部屋か、クンカクンカ』とか思ってたんでしょ」
「思ってねえよ! まあ、なんかいい匂いするな、とは思ったけど。芳香剤かなんかか?」
「べつになにも使ってないわよ。匂いってその日の気分次第で邪魔になるし、なによりお金もかかるしね」
「じゃあ、これは神崎の体臭……」
「ちょっと! 変な想像するのやめてくれる!?」
神崎に促されて、小さなテーブルの前に座る。
その向かいに神崎が座った。
「神崎がマジキャスのライバーになったのって、お金を稼ぐためなのか? 配信でもハイチャ投げろって煽ってたけど」
ハイチャ(ハイパーチャット)とは、マイチューブの投げ銭機能のことだ。視聴者はコメントを送信するのと同じ手軽さで、配信者にお金を投げることができる。人気のある配信者だと、俺の一ヶ月分の小遣いを軽く超えるような額が飛びかってる。
「うーん。微妙なところね。べつに、うちは貧乏ってわけじゃないわ。パパはいないけど、ママは会社員で、けっこう稼いでるみたいだから。
でも、お仕事は大変そうなのよね。出世するために残業も引き受けてるみたいだし。わたしと弟の学費に加えて、弟が病気してるから、その分も稼がないといけないの。家に帰ってくるのもいつも遅いわ。
それで、ちょっとは足しになるかと思って、マジキャスのオーディションを受けたってわけ」
「それでサクッと受かるのがすげーよな……」
マジキャスはVtuber事務所の中では中堅といったところだが、Vtuberになりたい奴なんて星の数ほど溢れてる。
こいつが受けたオーディションだって数百倍……下手をすれば千倍以上の倍率だろう。俺だったら受ける前にあきらめてる。
「なんでそこでVtuberなんだ? 普通にバイトすればいいじゃないか」
「だって、すごく儲かるって言うじゃない。ちょっと美少女のフリしておしゃべりするだけで、月収数千万とか聞いたから」
「Vtuber舐めすぎだろ。そんなに儲かるのは一部の人気配信者だけだ」
その人気配信者たちだって、「ちょっとおしゃべりする」だけで稼いでるわけではけっしてない。どうすれば配信がおもしろくなるのか、どうすれば人に見てもらえるのかと、日々研鑽に研鑽を重ねてる。もちろん、好きだからこそできるんだろうけどな。
「う……そ、そんなの、実際やってるわたしのほうがわかってるわよ!」
「……すまん。そうだよな」
厄介オタクにありがちな後方腕組みプロデューサー面が出てしまったか。
「でも、事務所の一期生の中にはマイチューブ登録者数が百万を超えた人だっているんだし。わたしだって同じ事務所の二期生なのよ? 可能性はあると思うじゃない!」
「まあ、ワンチャン狙えるポジションにいるのはたしかだよな」
だが、それはあくまでもポジションだけだ。
先日チャンネル登録者数が百万を超えたマジキャスのエースライバー・十六夜サソリは、高度な企画力、視聴者を楽しませるサービス精神、当意即妙のトーク力を兼ね備えた、天性のエンターテイナーだけどな。こいつのクソザコ未満残念配信力で太刀打ちできるとは思えない。
「芸能事務所にスカウトされたこともあるけど、顔を出すのはちょっと怖いし……。アイドルの握手会なんて、あんたみたいなキモい豚がずらっと並んでるのよ!? ネットで見てゾッとしたわ!」
神崎は身体を抱き、震え上がりながらそう言った。
「俺はオタクだけど太ってはねえよ!」
「内心でブヒブヒ言ってる精神的な豚じゃない!」
「おまえほんと口悪いよな!」
「その点、Vtuberならキモいファンと直接会うこともないでしょ?」
「それはそうだけど……」
でも、こいつの場合、それはメリットなんだろうか。
認めたくないけど、神崎は外見だけならアイドル級だ。
アイドルになる道を選んでいたら、こいつの顔は強力な武器になってただろう。
だが、Vtuberでは、見た目のよしあしは関係ない。
Vtuberになったことで、こいつは最大の武器を殺してしまった。
美少女という皮を脱ぎ捨てた神崎は、単なる口の悪い、空気の読めない地雷女でしかなかったわけだ。
「身バレが心配ってのはわかるけどな」
アイドルがストーカー被害に遭ったなんて話はよく聞くし。
今だって、中身がこんな美少女だとバレたら、絶対変なやつが湧いてくる。
そこまでは共感できたのだが、
「それに、普通のバイトなんて、時給が安すぎてやってらんないわよ。なんだって貴重な青春を、一時間800円かそこらで売り飛ばさなきゃいけないわけ?」
神崎が、余計な一言を付け加える。
「結局楽に儲けたいだけじゃねーか」
「楽に儲けて何が悪いのよ。愚直に安い時給で働いたっていいことなんて何もないわ。単純労働をいくらしたって、スキルが身につくわけでもないじゃない。人生の無駄遣いよ」
「おまえ、いまの発言で全国のアルバイターすべてを敵に回したからな。ほんま、そういうとこやで」
生きていくのに十分なお金が稼げればそれでいい、という発想だってあると思う。
それこそ、Vtuberの中には、バイトで生活費を稼ぎながら夢を追いかけていた人たちも多いはずだ。
Vtuberの「前世」を詮索するのは野暮だけど、やっぱりつい想像してしまう。
声のいい人は声優を目指していたのかもしれないし、歌の上手い人は音楽家志望だったのかもしれない。プロの芸人さん並みにトークが上手い人や、漫画家が認めるくらいにイラストの上手い人もいる。
この世界には、「この人、Vtuberになるためだけに生まれてきたんじゃないか?」と思ってしまうような人たちがたくさんいる。
でも、Vtuberという「仕事」が生まれたのは、たかだか数年前のことにすぎない。それまで、こんなにおもしろくて才能のある人たちが、無名のまま眠ってたっていうんだから驚きだ。
もしVtuberという概念が生まれてこなかったら。
こんなにも魅力的な人たちのことを、存在すら知らないままで、俺は人生を終えていただろう。そう考えると、とても切ない気持ちになってくる。
だからこそ、この奇跡をなかったことにはしたくない。
俺が全力でVtuberを推すのはそのためだ。
……といっても、高校生の俺にできるのは、チャンネル登録したり「いいね」押したりウィスパーで感想をシェアしたりするくらいなんだけどな。
「最初っから注目してもらえる規模の事務所からデビューできるのはほんとに幸運なことだと思うぞ? そこにあぐらをかいて人を見下すような態度をとっちゃダメだろ。おまえが手にしたチャンスを手にできなかった人たちがたくさんいるんだからさ」
……いや、俺も人に説教できるような立派な人間じゃないんだけどな。
家計の足しにと思ってVtuber始めたこいつのほうが万倍えらいような気もするし。
神崎が、俺の言葉に手を打った。
「あ、そっか。こういう言い方をすると、安い給料で働いてる人たちを敵に回すのね。新しい発見だわ!」
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