Vtuberだけどリスナーに暴言吐いてもいいですか?

天宮暁

文字の大きさ
22 / 34

#22 七星ルリナ爆誕

しおりを挟む
 神崎ママの用意してくれたご飯を食べ、ついに配信が始まった。

 まずは、七星エリカが俺のことを紹介する。
「今日はアシスタントを連れてきたわ。って言ってもわたしの妹なんだけど。ほら、ぐずぐずしてないで自己紹介なさい!」

「は、はじめまして! 七星ルリナっていいます。みんな、いつもお姉ちゃんの配信を見てくれてありがとー! 今日はお姉ちゃんに頼み込まれて、どうしてもって言うからしかたなく、お姉ちゃんの配信の進行を務めさせてもらうことになりました! よろしくね!」

「なによ! あんただってノリノリで準備してたじゃない!」
「な、なんのことかなー? ルリナわかんなーい」
 きゃぴっと笑ってごまかす七星ルリナ。
 瑠璃色のドレスだからルリナ。時間がなかったからネーミングも安直だ。
 俺は自分のスマホでアバターを操作し、その映像を神崎の配信用パソコンで受信して、七星エリカの配信画面に合成してる。

 神崎がマイクから口を離して言ってくる。
「うっわ。あんたの顔で萌えボイス出されると鳥肌立つわね」
「リハーサルしたろ!? 慣れてくれよ!」
 と言いつつ、俺自身も慣れてない。まだ恥ずかしさが抜けきらないのだ。北村や神崎ママもこの配信を見てると思うとなおさらな。

「今日は、メールへのお返事回だよ! まったく、お姉ちゃんときたら、ろくなメールが来ないなんて言って、全然お返事しないんだもん! リスナーのみんなも怒ってるよ!」
「何言ってんのよ? リスナーが怒ってるなんていつものことじゃない!」
「それはお姉ちゃんの配信だけだからね!?」
 わりと素でつっこんでしまった。

「それにしても、いつまでも『リスナー』じゃ呼びにくいわよね。親近感も抱けないわ!」
「気づくの遅くない!? じゃあ、お姉ちゃんはどんな呼びかたがいいの?」
「わたしの中では、キモオタとかマゾ豚とか呼んでるわね」
「呼ぶなよ! 呼んでても言うなよ!」
「ルリナ、人格が壊れてるわよ」
「じ、人格壊れてるのはお姉ちゃんなんだからね!?」
「サソリ姉は『彼氏さん』でしょ、チカちゃんは『先輩』よね」
「かざみんは『旅人さん』で、詠美子さんは『ゾンビくん』『ゾンビちゃん』だね!」
「その流れで行ったら、『キモオタ』『マゾ豚』でもよさそうなもんじゃない?」
「よくないよ!? コアなリスナーさんしか喜ばないよ!? コアなリスナーさんも、お姉ちゃんのガチな罵倒にはマジギレしてるくらいなんだからね!?」
「おかしいわね。チカちゃんに罵倒されるとみんな喜ぶのに」
「チカちゃんの罵倒には愛があるから! お姉ちゃんのはガチモンの罵倒なんだよ!」

 そこで、俺はコメント欄を見る。
 もっと早くから見ろって話なんだが、キャラを演じながらかけあいをし、同時にコメントを見るってのは思った以上に大変だ。
 それに、正直言って、反応を見るのが怖かった。

『お、意外といいね』『つっこみがあると聞きやすいな』『ルリナちゃんわかってる』『前はマジで心えぐられたからなぁ』『唐突な妹キャラの投入草生える』……

 ……あれ。意外と悪くない反応だ。

「リスナーさんのみんなさん! お姉ちゃんにどう呼ばれたいですかぁ?」
 俺は視聴者にボールを投げてみる。このまま放っとくと、引っ込みがつかなくなって『キモオタ』に決めるしかなくなりそうだったからな。

『うーん、下僕とか?』『肉奴隷』『エリカ様の椅子』『人間家具』『貢ぎマゾ』『変態紳士』『こいつになんて呼ばれても不快』『おまえなんでこの配信見てんだよw』……

「ちょっと、変態さん多くない!?」
「ほら見なさい。やっぱりわたしの配信に来る物好きなんて豚しかいないのよ!」
「お姉ちゃんそれ威張るとこじゃないからね!? っていうかひょっとして遠回しな自虐だった!?」
「コメントの傾向を見ると、『貢ぐ君』『アッシー』なんかはどうかしら?」
「言葉のチョイスが古くない!? お姉、いつからバブル世代になったの!? 十七歳だよね!?」
 ちなみに、リアルでも神崎は十七歳だ。

『七星だからテントウムシとか?』『七星なら北斗七星は?』『織姫と彦星の彦星』『かぐや姫に無理難題ふっかけられる求婚者はどう?』『ちょっとロマンチックすぎね?』……

 お、なんかまともな案が出はじめた。
「テントウムシは悪くないけど、ちょっと長いかしらね。いっそ虫?」
「せっかくの良案をクソみたいな案に変えるのやめてくれませんかねぇ!」
「織姫さんと彦星くんってのもいいわね。男女で使い分けできるわ。でも、エリカが織姫だとすると、女性のリスナーとは織姫と織姫になっちゃうわね」
「織姫と織姫の百合、アリだと思います!」
「あんたの性癖なんて聞いてないわよ。でも、織姫と織姫じゃ、あいだに天の河がないからドラマにならないじゃない」
「お姉ちゃんにしてはロマンチックな理由だぁ! じゃあ、求婚者?」
「そうね。名家の令嬢であるわたしのもとには、男女問わず求婚者が殺到してるの!」
「いまのチャンネル登録者数でも一万人ちょっといるもんね! 人気企業の採用試験みたいだね!」
「書類選考で九千九百人は落とすわ!」
「基準は!?」
「年収! 学歴! 身長!」
「バブルか!」
「エリカは現役JKですー。バブル世代じゃありませんー」
「逆に信憑性なくなったよ!? ほんとに現役JKなのに!」
「ともあれ、視聴者の呼び名は『求婚者』で決まりね!」
「と、お姉ちゃんは言ってるけど……みんな、どうかな?」
 俺は、コメント欄に目を移す。

『うん、まあいいんじゃね?』『七星エリカにあるまじき軟着地』『七星エリカの配信なのにコメ欄が荒れてない。訴訟』『むしろいつものほうが訴訟起こされるんじゃないですかね』『俺はまだ許してないぞ』『忘れるとこだったけどチカちゃんに謝れ』……

 最後のコメントに、神崎の額に青筋が浮かぶ。
 こいつがキレる前に、とっとと先に進めよう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件

沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」 高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。 そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。 見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。 意外な共通点から意気投合する二人。 だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは―― > 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」 一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。 ……翌日、学校で再会するまでは。 実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!? オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

処理中です...