異世界人αと日本人Ωの間に生まれたハーフな俺

宇井

文字の大きさ
10 / 14

10 朝を迎える俺

 朝が来た……
 違う、と思い直した。今は早朝ではない。日の高さでそう推定できた。モフモフの犬化していたガイパパはベッドの中から消えていて俺一人きりだ。
 寝すぎの頭を抱えて部屋についている洗面に行って顔を洗う。ここはトイレまで付いているから、やっぱり最上級の部屋なんだと思う。
 戻って荷物を漁っていつもの普段着を探す。もぞもぞと着替えをしている間に父さんがノックもなく扉を開けてやってきた。

「ようやく起きた。お腹空いたでしょ。ご飯に行こう。もうお昼近いよ」

 シャツは一番上のボタンまでしっかりとめて真っ直ぐ立っているけれど、どこか気だるげだ。何をしていたかなんて明白すぎて困る。さすがオメガだと初めて思った。
 親のこんな姿を見るのは初めて。まあ両親が仲良しするのはいい事だ。
 日本から持って来たシャツではないけど、ぴったりのサイズの服を着ている父さん。襟とカフスの部分だけがチェック柄の布でかわいい。ガイパパがこの日の為に用意していたんだろうなってのがわかる。

「すごーく似合ってるよ、それ」
「ありがと。歩の服もあるからね。色違いのやつ」
「やった」
「ガイはあんなだけど、歩の為に色んな物を用意してくれているよ」
                
 喋りながら二人でてくてく歩いて着いたのは大きなダイニングキッチン。
 寸胴鍋が幾つもあって、大きな竈や調理道具が溢れているから厨房かな。その隣のダイニングスペースには10人とかで囲めそうな長く大きなテーブルがでーんと置かれていて、真ん中に置かれた籠にはリンゴが積み上がっている。

「昨日今日はみんな休みなんだって。城で働いているのはギア様と数人くらい。このキッチンで働く人も今日は休み。だからこのスープはローズママの手作り。パンは……買ってきた物だね」

 大きなボウルに鍋のスープを注いで渡される。器に触れれば温め直す必要がないのがわかる。籠に山盛りになっている丸パンを二つ皿に移してテーブルに移動した。

            
「ああっ……おはようトナム。気付かなくてごめん」
「おはようございますユーリ。私はいつもこんな感じなので、気にしないで下さい」

 父さんがテーブル近くの窓際に立っていた先客に気付いて挨拶する。
 その人は手にしたカップでお茶を飲みつつ、外を眺めていたようだ。すぐそばのテーブルには空になった皿が二つ。食後だったようだ。

「まさかここで再会するなんて」

 父さんは笑顔でそちらに回り込みんでハグをする。トナムさんもそれで表情が和らいで父さんの背中をぽんと叩いていた。
 俺は父さんの後に続いて、ハグではなく握手をして笑顔を交わし、空気が和やかになると席に着いた。父さんの向かいがトナムさんで、俺は父さんの横に。

 父さんが喋るまでまったくその人の存在に気付かなかった。俺達が入ってきても無言だったし、周囲に同化していた感じ。
 でもこの人は全然モブっぽくなくて、それどころかひれ伏したくなる程のシャープな印象のイケメンだ。髪なんてキラキラ輝く銀色。しかもガイ父さんやギアじいちゃんとは違って身体はムキムキしてない。標準って訳でもなく、アスリート体型ってやつに近いんだと思う。

「会えて嬉しいな。小さかったトナムが大きくなっててびっくりだよ」
「ユーリは全然変わってないですね。顔つきも身長も」
「トナムがでっかくなりすぎなんだよ。僕が愛した美少年の面影はどこへ行ったんだ」

 二人が声をだして笑う。
 父さんがここで過ごしていた頃、トナムさんは繊細な美少年だったらしい。その美しさをキープしたまま大人になっている事が嬉しいみたいだ。

「ユーリが戻った事は聞いていましたが、疲れが残っているだろうし、ギア様はまだそっとしておけと」
「本当に昨日はちょっとあれで……ガイとすぐに部屋に引っ込んだもので。挨拶が遅れてしまって申し訳ない。正式な挨拶はまたあとで」
「ここで会ったのだからもういいでしょう。私達の仲にそんな遠慮はいりません。ガイアはあなたたちの帰還をずっと待っていました。長く離れていたアルファとオメガ。その発情を誰も邪魔できない。仕方のない事です。ギア様も複数の孫をご所望でしたし」
「期待でいえばトナムの方が大きいでしょう。トナムの方はどんな感じ、いい人はいるの?」

 トナムさんは微笑んで首をふる。そもそも興味がないといった風情だ。

「トナム。改めてだけど、こっちは僕達の息子で歩って言うんだ。性別はベータだよ。アユムが言いにくいならニールでいいから」
「はじめまして。あっと……歩です。もしくはニールで。十七歳です。二人の父がお世話になっています」

 父さんのせいでニールって名乗ってしまったよ。今さらだけどなんかハズい……

「よろしくアユム。私はトナム。年は三十だ。君がユーリのお腹にいた子なんだね。成長した君に会えた事を嬉しく思うよ」
「トナムはギア様が引退したら次の主になるのが決まっているんだ。ガイとは血は繋がらないけど兄弟関係。僕にとっても弟みたいなもので、こっちにいる間は仲良くしてもらってたんだ」

 ほほう、美形の義兄弟か……
 ガイパパもイケメンだし、陰と陽って感じだけど兄弟としての共通点はある。

「ガイとは違うアプローチでこの土地を守った守護神様なんだよ」
「おおっ、守護神さま……」

 父さんの言葉に俺は感激してのっかる。これぞラノベの世界じゃないか。

「筋肉だけの人だけじゃ国はまわらないらしいですもんね。トナムさんって凄い人なんですね」
「そうなんだよ。トナムがいなかったらガイなんて暴走して真っ先に死んでたよ。トナムは小さい頃から頭よくてさ」
「へえ、トナムさんすごいですね」

 顔も頭も最上級のトナムさん、これはトナム様と呼んだ方がいいのかもしれない。
 俺がトナムさんを見る目が尊敬に変わった所で、隣で父さんがスープを飲み出したので、俺も食べちゃう。
 ハーブが強めのコンソメスープって感じで朝にぴったりのお味。やっぱりローズママは料理全般が上手なんだね。
 パンも癖がなくて、ふんわり食感で美味しい。
 食事をしつつ二人してトナム凄いね、かっこいいね、きっとモテる、と褒めすぎたせいか、トナムさんは下を向いてしまう。

「それ以上褒めるのは止めてください」

 三十歳の人に言うのはあれだけど、なんかピュアな感じがする。色恋に慣れてないのかな。
 それに隣にいるオメガの父さんに照れたんじゃないかと思う。だって、食べ方もいつもと違ってエロいんだもん。
 独身のアルファには目の毒に決まってる。トナムさん、アルファ? だよな。
 
「ところで、ガイパパはどうしているの?」
「まだベッドの中。僕も休みたいからすぐ部屋に戻る。歩の事ほったらかしで悪いけど、あと一晩で発情おさまると思うし待っててくれる?」
「やっぱり、発情しちゃってたんだ」
「異国に来て早々独りぼっちにして本当にごめん。歩には甘えっぱなし」
「俺なら大丈夫。発情で薬使わなくて済むならそっちの方がいいじゃん?」

 父さんはいつも薬で抑えてた。薬が悪いとは言わないけど、まあ心配じゃん。
 俺は本物のバースの発情ってのが実はよくわかってないし、せっかくだから本能に従った方がいいと思う。

「久しぶりに会ったから、ガイが感情的で、発情なんて予定外で……」
「お互いに愛情が大爆発した!?」

 からかうと父さんは言い訳もせずに照れている。

「ガイアとユーリの情況がそうならば、私がユーリの代わりになります。アユムの面倒は私が見ましょう」
「ありがとうトナム。助かるよ。そんな訳だから、もしわからない事があればトナムを頼ってくれる? 今日はここにギア様いないしローズママも夕方まで帰らないはずだから」
「わかった。大人しくしてるし、心配しないでいいよ」

 それから父さん達の部屋の場所をおおまかに説明される。
 口頭だと全然わかんなくてたどり着けない自信ある。でも何とかなるだろうって事で頷いておいたよ。

「そう言えば、トナムも休みって事だよね。よかったらうちの子を案内してくれない。この子は遊びを知らない苦労人だから、城下で肉でも食べさせて観光させてほしいなぁ、なんて」
「私は構いませんよ」
「ありがとう。何から何まで助かる。息子をずっと放置しているのも気になって。ではよろしくお願いします。歩、いい子にしててな」

 父さんは子供にするみたいに俺の頭を撫でると、急いで食事を終えて手をふって出ていってしまった。
感想 2

あなたにおすすめの小説

ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!

由汰のらん
ファンタジー
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。 しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。 そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。 「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」 やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった。しかしハルの血が特殊だと知ったダンピールはハルを連れ帰って? いっそ美味しい『血』(治癒)と『体液』(バフ)と『癒し』を与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!

ただのハイスペックなモブだと思ってた

はぴねこ
BL
 神乃遥翔(じんの はると)は自分のことをモブだと思っていた。  少年漫画ではいつだって、平凡に見えて何か一つに秀でている人物が主人公だったから。  その点、遥翔は眉目秀麗文武両道、家も財閥の超お金持ち。  一通りのことがなんでも簡単にできる自分は夢中になれるものもなくて、きっと漫画のモブみたいに輝く主人公を引き立てるモブのように生きるのだと、そう遥翔は思っていた。  けれど、そんな遥翔に勉強を教わりに来ている葛城星 (かつらぎ ほし)は言った。 「BL漫画の中では、神乃くんみたいな人がいつだって主人公なんだよ?」  そう言って、星が貸してくれた一冊のBL漫画が遥翔の人生を一変させた。  自分にも輝ける人生を歩むことができるのかもしれないと希望を持った遥翔は、そのことを教えてくれた星に恋をする。  だけど、恋をした途端、星には思い人がいることに気づいてしまって……  眉目秀麗文武両道で完璧だけど漫画脳な遥翔が、お人好しで気弱な星の心に少しずつ少しずつ近づこうと頑張るお話です。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

繋ぎの婚約を契約通り解消しようとしたら、王宮に溺愛軟禁されました

こたま
BL
エレンは子爵家のオメガ令息として産まれた。年上のアルファの王子殿下と年齢が釣り合うオメガ令息が少なく、他国との縁組も纏まらないため家格は低いが繋ぎとして一応婚約をしている。王子のことは兄のように慕っており、初恋の人ではあるけれど、契約終了時期か王子に想い人が現れた時には解消されるものと考えていた。ところが婚約解消時期の直前に王子宮に軟禁された。結婚を承諾するまでここから出さないと王子から溢れるほどの愛を与えられる。ハッピーエンドオメガバースBLです。

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。