魔物に乗っ取られていた俺は自我を取り戻す。人生積んだと思ったら、その時培った経験で無双します。

千石

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第1話

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「君に与えられたスキルは『清掃』だ」

「え・・・うそだろ・・・」

無慈悲に告げられる神官の言葉に俺の目の前は真っ暗になった。

この世界では15歳になると、スキルが与えられる。

各々に一つだけ神様からの贈り物だ。

皆そのスキルを使って自分の能力に見合った職業についていく。

俺は昔に合った出来事からこの世界での花形である『冒険者』に憧れ、今まで体を鍛えてきた。

くそぉ、その結果がこれかよ・・・神様あんまりだ・・・

俺はこの瞬間、もう神に感謝することを止めることにした。

神官に背を向け、とぼとぼと歩いていると同情した同席者たちが道を譲ってくれる。

小さな村だ。

誰もが俺が冒険者に憧れ努力していたことを知っていた。

だから、気を遣ってくれているのだろう。

だが、教会の出口から出ようとする俺を止める声が上がった。

「ぎゃははは、モリスのやつ『清掃』のスキルだって!あれだけ努力して来たのにバカみたいだな!!」

「・・・バグズ」

俺は暴言を吐いてきたやつを見て忌々しそうに名前を呼ぶ。

バグズは俺と同じ15歳の癖に、大人並みの体格をしていた。

呆然としていた俺にはこいつも冒険者に憧れていて何かと俺と張り合ってきていたのがまるで遠い昔の出来事のように感じる。

「俺様は『強化』のスキルだ。悪いが英雄になるのは俺様の方だったようだな」

ガハハハ

と、人の神経を逆なでするようにバグズが笑って来る。

『英雄』・・・冒険者の中でも特に優れた功績を上げた者達のことだ。

バグズは前々から英雄になることに憧れていた。

「・・・ああ。そうだな。頑張れよ」

俺はバグズに食って掛かる気力もなく、そう捨て台詞を吐くと教会の扉を開けて出ていく。

「・・・ちっ」

ドアを閉める時に、バグズの残念そうな声が聞こえた気がしたが今の俺にはどうでも良かった。



あれからどのくらいの時間が経ったのだろうか

俺はずっと下を見て足の向くまま歩を進めていた。

「ん・・・」

ふと足を止めた俺は、見覚えのない場所に立っていることに気が付いた。

いつの間にかすっかり夜になっており、辺りは闇に支配されていた。

「・・・戻るか」

どうせ真っ直ぐ歩いてきたのだろうと踵を返そうとするが、

「いや、今更戻っても仕方がないな」

すんでのところで思いとどまってそのまま歩いて行くことにした。

どうせ俺には家族のいない天涯孤独の身だ。

今日の一件を経て過ごしづらくなるのは目に見えている。

「このまま誰も俺の事を知らない土地に向かおう」

そう考えた俺は少し気が楽になり、俯くのは止めてまっすぐ前を向いて歩いて行くことにした。



「・・・なんだ?」

あれから更に数十分後、俺は違和感を感じて立ち止まる。

「・・・あっちからだな」

どうせ行く宛もない俺は当てずっぽうで見当をつけて違和感の発生源と思われる場所に向かって歩みを進める。

さらに数分後、俺は奇妙な場所に来ていた。

「なんだ。ここは・・・遺跡か?」

俺は土の中から顔を出すように現れた遺跡のようなものの前に立っていた。

恐らく、最近多かった地震の所為で顔を出したのだろう。

「・・・雨風はしのげそうだな」

どうせ行く宛もない俺は、遺跡の中に入っていく事にした。

スキルには見放されたが、冒険には見放されなかった。

俺は先ほどまでの暗い感情など忘れてワクワクしながら中に進んでいく。

我ながら現金なやつである。

「・・・なんだこれで終わりか?」

遺跡の中に入ると、直ぐに行き止まりになってしまった。

「俺のワクワクを返しやがれ・・・ん?」

最近株価急降下の神に文句を言っていると、地面に違和感を感じる。

埃をかぶった地面のある一部から線のようなものが見えたのだ。

気になった俺は足で埃を払っていく。

もしこれが普通の人間だったら、こびりついた埃をとることは出来なかっただろう。

だが、俺は『清掃』のスキルを授かったばかりの人間であった。

数分後には地面の埃は綺麗になっていた。

「これは・・・魔法陣か?一体何の?」

俺は不用意に表れた巨大な魔法陣の一部に触れてしまった。

この時は知らなかったが、『清掃』のスキルは認識した対象を綺麗にするというものだった。

最初はこびりついた埃を対象にしたために問題無かったが、『魔法陣』を対象にして触れてしまったが故に『魔法陣』の一部を綺麗にした結果、その効果を無くしてしまったのだ。

『ふはははははっ!漸く蘇ったぞ!!永かったぞ!!!』

俺の15歳の記憶はここで途絶えることになったのであった。
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