上 下
17 / 83

第17話

しおりを挟む
だいぶ話がそれたけど、この少年が海術士かどうかわからないっていうは、海術を使うのには絶対的な条件があるのだ、あたしはクラフトだから詳しくはわからないんだけど聞いた話では、海術を発動するためにこの世界と神や悪魔のすむ世界との壁を崩さなければならないらしい。



そのためにはしっかりとした音程によるテンポが必要不可欠らしいのだ。だから、耳の聞こえないこの子には海術士がどうか判断する材料がまったくない。



あたしなら、海術士だろうがクラフトだろうが気にしないんだけどね・・・まあ、他の人はそうはいかないみたいだけど・・・。



あっと、まだルフトって何だか説明してなかったわね。ルフトっていうのは簡単に言うと、だれもがもっている素質というものを自ら悟り、鍛え上げている人たちのことなの。もちろん人それぞれもっている素質は違うわ。そのことに規則性なんてない。



ある学者が言うには「育った環境によって素質というものは決まるのだ」ってことらしいけどまだ裏付けられてないし・・・。



海術士でもクラフトでも関係なく、素質はあるわ。でも自分がどんな素質を持っているかなんて滅多にいないし、運良く自分の素質を見つけたとしても、鍛え上げていこうだなんて思う人はほとんどいないわ・・・って話だけどあたしはよく出会うのよね・・・この子とか。



「まっ、気にしてないけどね」



あたしが黙っていたので自分のことに同情していると思ったのだろう、少年が気軽にいってくる。



「そう・・・」



「じゃあ、十日後また会おう!じゃあね」



「ちょいまち!」



あたしは席を立って出口に向かおうとした少年をあわてて呼び止める。



「なに?」



少年があたしに再び意識を向けたことを確認してから、



「あなただけがあたしの名前を知っているっていうのは不公平でしょ?」



あたしは片目をつぶって右手を差し出す。



「あっ・・・そうだね」



少年は一度はっとしてから、悠然とあたしの右手を握ってきた。



「俺の名前はレベン。レベン・アインターブ。まあ、一回戦敗退にならないように頑張るよ」



「マーヘン。マーヘン・リバースよ」



相当修練を積んでるわね。あたしは少年の手を握っただけで体にあふれんばかりの“力”を感じていた。



「じゃあね」



少年は簡潔に言うと、酒場の外へと消えていった。



・・・あの子、宿どうするのかしら・・・。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

完結 お姉様、婚約者を譲っ……やっぱ良いです!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:291pt お気に入り:262

私、聖女じゃありませんから

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:65

契約結婚しましょうか!~元婚約者を見返すための幸せ同盟~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:43,403pt お気に入り:949

完結 愛人と名乗る女がいる

恋愛 / 完結 24h.ポイント:319pt お気に入り:122

旦那様は妻の私より幼馴染の方が大切なようです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:50,175pt お気に入り:5,450

完結 勘違いした幼馴染は夫と結婚するらしい

恋愛 / 完結 24h.ポイント:731pt お気に入り:261

処理中です...