その女剣士は世界を救い、英雄となる。

第20話

「マーヘン様、そろそろ参りましょうか？」

いつのまにかギルバートが準備を整えている。

「ええ、そうね。行きましょうか」

悩んでも仕方ない、実際に大会に行けばわかることだ。あたしは自分をそう納得させた。ちょうど太陽が地平線より顔を出していた・・・。      

「マーヘン様、マーヘン様」

「うーん、ついたの？」

ギルバートの声に起こされ、あたしは伸びをしながら尋ねた。

「はい、もうすぐ城門です」

「そう。やったわね、ギル！最短日数更新じゃない」

レベンにあった日から六日、たいした騒動もなくあたしたちはとうとう国都の城門近くまでやってきていた。

その間にギルバートともすっかり打ち解けて、略称で呼ぶほどになっていた。

まあ、ギルバートは相も変わらず敬語なんだけど・・・。よく名前を名乗った瞬間に略称で話し掛けてくる人がたまにいるけど、あたしはなるべくそういうことはしないようにしている。

自分がそうされたくないと言うのが大きな理由だが、ひょっとしたら自分がそういう性格じゃないことを正当化しているだけかも・・・。

「はい！ありがとうございます」

うれしそうにギルバートが元気よく返事をする。

そうこうするうちにうっすらとしか見えていなかった城門が、間近に見えてきた。

「うわぁ！話には聞いていたけど、すごく大きいわね」

「私も国都に住んで３年になりますが、未だに慣れないんですよ」

あたしはギルバートの言葉にギョッとした。３年かかっても、慣れないほど複雑なのかしら？

やだなぁ、複雑なのは・・・。だがあたしの不安はギルバートの次の言葉によって見事に解消された

「慣れないといっても、道が複雑とかじゃなくてスケールの大きさなんですけどね。私の生まれは本当に小さな村でしたから・・・」

なーる、そういえばあたしも大きな町に行くと何だか落ち着かなかった経験があったわ。

最近ではそんなことはなくなったけど・・・。そうこう話しているうちに、城門の下までだどりついた。

「入都目的と身分を示せ」

門番なのだろう、二人組の男がギルバートに問い掛ける。

「世界大会出場者マーヘン・リバースをお連れしました。ギルバート・カイザー、身分は馬術指導者です」

はっきりとした声でギルバートが言う。

門番は手に持っていた書類をぱらぱらめくり、馬車の中を覗き込み、なにやら書き込んでから、

「了解した。通っていいぞ」

ぶっきらぼうに言い放った。

「なんかぴりぴりしてたわね」

あたしがそう尋ねたのは城門をこえてから少ししたところであった。