その女剣士は世界を救い、英雄となる。

千石

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第61話

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「いや・・・冗談じゃないんだけど、まあいっか」

ぼそぼそと小声で抗議する。

まだ言ってるわ、わざとらしい。

〔レベンが言ってるのは本当だぞ〕

〔どういうこと〕

“会話”してきた『審査するもの』にあたしも“会話”で帰す。

〔戦っていてわかったことなんだが、レベンは見てから動いてはいないのだ。だから、さっきのリリヤの攻撃を見極められないのも無理ない。まあ、避けれることはできるのだろうが〕

〔・・・なるほど、そう考えるとつじつまは合うわね〕

一応言いたいことに無理な論理展開はない。

しかし、あたしにはレベンがわざといっているだけだとしか思えないのだ。

まあ、どっちでもいいけどね。

「お姉ちゃんって強いね!」

控え室に戻ってきたリリヤにレベンが話し掛ける。

「ありがとう。坊や」

リリヤは素直にお礼を言う。

「僕はレベンっていうんだ」

「そう、レベンよろしくね。あたしはリリヤよ」

レベンとリリヤが握手した。

「じゃあ、僕はそろそろ行ってくるね」

あたしが二人のところに近づくとレベンがあたしに向かっていってきた。

「心配無用だとは思うけど気を付けてね」

手を挙げてあいさつし、控え室から出ていった。

「一回戦突破おめでとう、リリヤ」

「ありがとう。あなたあの子と知り合いなの?」

どういう繋がりなのか不思議なのだろう。

怪訝な顔をしている。

無理もないけどね。

「前にちょっとね」

まさか『審査するもの』の話をするわけにもいかず、言葉を濁す。

「へー、そうなんだ」

よかった納得してくれたみたい。

「あっ、始まるみたいよ」

リリヤが映像を見て言う。

「そうみたいね」

さてさてどんな戦いを見せてくれるのやら。

「あの子って強いの?」

リリヤが尋ねてきた。

「そりゃあ、この大会に出てるんだから強いに決まってるでしょう」

苦笑する。

「まあ、黙って見てましょう。それではっきりするわ」

〔レベンの右手動かないんじゃないか?〕

〔よく気が付いたわね。あたしもそれが心配なのよね〕

ドアを開けるとき左手を使っていたことを思い出しながら心中をあかす。

〔まずいな、対戦相手はなかなかやり手だぞ〕

レベンの対戦相手は年の頃で言うと30前後だろう。

黒い上下を着込み、両手には分厚いナイフを持っている。

眼光は鋭く、隙なくレベンを凝視している。

〔そうね、パンフレットによると前大会でベスト16だったらしいわ〕

宿から持ってきていたパンフレットに目を通しながら答える。

と、そのとき『始め!』審判の合図があった。

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