その女剣士は世界を救い、英雄となる。

千石

文字の大きさ
74 / 83

第74話

しおりを挟む
「そうだな・・・今のうちに地面を掘って埋めるっていうのはどうだ?」

バガルトが真顔で本気だか嘘だかわからないことを言う。

「は?」

思わず声を上げるあたし。

「気にするな、冗談だ」

・・・笑えないって・・・レベンは笑いを堪えていたりするけど。

ザワッ

突如背筋に悪寒が走る。

あたしは反射的に横に転がっていた。

ドゴォォォン

耳元でデカイ音がする。

「まいったね・・・」

レベンがぽつりと言った。

直ぐ様身を起こしたあたしにもレベンの言っている意味がわかった。

「まさか2体いるなんてね」

レベンが吹き飛ばした奴は立ち上がり、バガルトと対峙していた。

そしてあたしがさっきいたところには何から何まで同じな怪物が腕を振り下ろした状態で制止している。

「お前達はそいつを何とかしろ。俺はこいつをやる」

バガルトがそう言った途端に空気の質が変わった。

「なんて気なの・・・」

これなら昨日の対戦相手が逃げた理由がわかるわ。

「じゃあ、向こうの化け物はスターリンさんに任せてこっちを片付けますか」

すごいプレッシャーの中であるのにもかかわらず、飄々とレベンが言う。

「そうね。でもどうやって倒す?さっきの奴は身体が硬質な上にでこぼこしていてうまく切れなかったわ。たぶんこいつも同じだと思う」

「僕も似たようなものだよ。せめてあいつの皮膚が尖っていなければ活路はあるんだけどね」

レベンが無理なことを言う。

ん・・・まてよ・・・。あたしはそこまで考えてからある方法を思いついた。

「いい方法を見つけたわ」

「えっ、ほんと?」

レベンが半信半疑で問い返してくる。

「ええ、ちょっと耳を貸しなさい」

あたしはレベンに耳打ちした。

この怪物が人語を理解できるとは思わないが、用心するに越したことはない。

まあ、耳の聞こえないレベンの耳元で話すという行動は自分でもどうかと思ったけど・・・。

「なるほど・・・それならいけるかもしれないね」

レベンも乗り気になった。

「さてと、じゃあさっそく行きますか」

あたしは景気づけに手元の剣を一振りした。

ブゥン

その音を合図にしたかのようにあたしとレベンの二人は同時に駆け出した。

先頭はあたし、見る見るうちに怪物が目前に迫る。

ビュゥン

相手の右こぶしを紙一重でかわし、懐に飛び込む。

ここまでなら最初のときと同じだがここからは違った。

懐に入った瞬間、剣を下から上にはね上げる。

「はあっ!」

キィン

乾いた音をたてて、見事に怪物の突起した部分のさきっぽが寸断された。

遅れてやってくる左こぶし。

あたしは剣の軌道に逆らわずに飛ぶ。

怪物の頭の上で一回転して反対側に着地する。

「おおおぉっ!」

あたしに続いてレベンも怪物の懐に飛び込む。

狙いはあたしが切断した部分。そこに“連破弾”をたたき込むことになっている。

怪物がレベンを吹き飛ばそうに腕を振る。

レベンはこれを屈むことでやり過ごし、絶好の場所を確保した。

レベンが腰だめに構えていた左腕を突き出す。

決まったとあたしが思ったとき、それは起こった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

処理中です...