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第78話
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あたしは先程と同様に剣を一閃させた。
ブゥン
これまた同じように剣が空振りする。
しかしここからは違った。
あたしは剣を振り切った勢いを殺さずに自分を中心に独楽のように回転する。
それは丁度あたしの右に出現した怪物にあたった。
「はぁぁぁぁっ!?」
あたしは渾身の力で怪物を吹っ飛ばす。
「・・・」
怪物は自分に何が起こったのか理解していない様子で茫然としていた。
よしっ!チャンス!?
これを逃したら、二度目はないわ。
あたしは剣を両手で握り、切っ先を怪物に向けて走りだした。
「はぁぁぁ・・・!」
剣先に全身全霊を込める。
外したら、死ぬ。
その緊張感がさらにあたしの集中力を高めていく。
あと5歩。
まだ怪物は動けない。
あと4歩。
怪物が少しだけゆっくりと身体を動かす。
あと3歩。
怪物の目とあたしの目が合う!
あと2歩。
怪物が自分の状況を確認するかのように、辺りを見る。
あと一歩。
怪物があたしに向かって蹴を放ってくる。
あたしは構わず、怪物の左胸目がけて剣を突き出した。
「やぁっ!?」
ギギギギィィィン
耳をつくような大きな音を聞きながら、あたしは意識を失っていた。
(・・・ン。・・・ヘン・・・)
何かやたら誰かがあたしを呼んでいる。やめてよ。疲れてるからもう少し、このままで・・・
(マーヘン!)
急に意識がはっきりとした。
(あたしは一体?)
無意識のうちに手が首飾りに触れる。
(あの者の蹴を食らって気を失っていたのだ。気分はどうだ?)
そうだったんだ。
通りで頭が痛いわけだ。
(頭がズキズキするけど、何とか平気よ。それであいつは?)
(あそこだ)
『審査するもの』の言った場所を見当をつけて見やると、あたしは、痛む体に鞭打って少しずつ近づいていった。
「・・・気分はどう?」
怪物などではなく、ちゃんとした人の姿となったキート・バグラスにあたしは躊躇いがちに声をかける。
「・・・最悪だ。あんたか?これを差したのは」
口から血が出ているのも構わず聞いてくる。
これとはあたしが刺した剣のことだろう。
未だ刺さったままである。
「・・・ええ。あなた自分が何をしていたのか気付いている?」
「また・・・やっちまったのか?」
心当たりがあるのか、意味深なことを聞いてくる。
「また?」
「ああ。最近になってたまに意識がなくなることがあってよ。意識を取り戻した頃にはあたり一面廃墟と化していてな・・・。それが何回も続くもんで、いい加減、頭がおかしくなってきちまったんだよ。んであの時あんたを誘ったってわけだ。普通の人間じゃあ怯えるだけだし、野郎に話すってぇのは気が引けるからな」
「そうだったの・・・悪かったわね」
あたしは馬鹿だ。
本気で苦しんでいたこの人の誘いを断ってしまって。
考えてみれば、あんなに軽薄そうに誘っていたわりに目が必死だったのはそういうわけだったんだ。
「・・・もう・・・そろそろダメだ」
吐き出す血がなくなったのか、今は口から血を流してはいなかった。
「何いってんのよ!こんなことで死ぬんじゃないわよ!」
あたしは心の底から必死に叫ぶ。
しかし、キートは不思議なほど穏やかな顔で、
「死ぬ前に、あんたにいいたいことが・・・ある・・・」
もう息も絶え絶えで段々と声が小さくなっていく。
あたしは自然と顔を近付けた。
「何!何が言いたいの!?」
「この世の中には俺・・・みたい・・・に訳もわからず・・・くる・・・しんでいる・・・人がいる・・・はずだ・・・そいつらを・・・あんたが救ってやって・・・くれ・・・」
「・・・わかったわ。あたしに任しておいて」
あたしの言葉に満足したのかキートは穏やかに微笑み、
「------」
微かな声でそう呟き息を引き取った。
「・・・あんたは何でそんなことが言えるのよ」
あたしはただただ涙を流していた。
「ありがとう」
その言葉がいつまでも胸に残っていた・・・
ブゥン
これまた同じように剣が空振りする。
しかしここからは違った。
あたしは剣を振り切った勢いを殺さずに自分を中心に独楽のように回転する。
それは丁度あたしの右に出現した怪物にあたった。
「はぁぁぁぁっ!?」
あたしは渾身の力で怪物を吹っ飛ばす。
「・・・」
怪物は自分に何が起こったのか理解していない様子で茫然としていた。
よしっ!チャンス!?
これを逃したら、二度目はないわ。
あたしは剣を両手で握り、切っ先を怪物に向けて走りだした。
「はぁぁぁ・・・!」
剣先に全身全霊を込める。
外したら、死ぬ。
その緊張感がさらにあたしの集中力を高めていく。
あと5歩。
まだ怪物は動けない。
あと4歩。
怪物が少しだけゆっくりと身体を動かす。
あと3歩。
怪物の目とあたしの目が合う!
あと2歩。
怪物が自分の状況を確認するかのように、辺りを見る。
あと一歩。
怪物があたしに向かって蹴を放ってくる。
あたしは構わず、怪物の左胸目がけて剣を突き出した。
「やぁっ!?」
ギギギギィィィン
耳をつくような大きな音を聞きながら、あたしは意識を失っていた。
(・・・ン。・・・ヘン・・・)
何かやたら誰かがあたしを呼んでいる。やめてよ。疲れてるからもう少し、このままで・・・
(マーヘン!)
急に意識がはっきりとした。
(あたしは一体?)
無意識のうちに手が首飾りに触れる。
(あの者の蹴を食らって気を失っていたのだ。気分はどうだ?)
そうだったんだ。
通りで頭が痛いわけだ。
(頭がズキズキするけど、何とか平気よ。それであいつは?)
(あそこだ)
『審査するもの』の言った場所を見当をつけて見やると、あたしは、痛む体に鞭打って少しずつ近づいていった。
「・・・気分はどう?」
怪物などではなく、ちゃんとした人の姿となったキート・バグラスにあたしは躊躇いがちに声をかける。
「・・・最悪だ。あんたか?これを差したのは」
口から血が出ているのも構わず聞いてくる。
これとはあたしが刺した剣のことだろう。
未だ刺さったままである。
「・・・ええ。あなた自分が何をしていたのか気付いている?」
「また・・・やっちまったのか?」
心当たりがあるのか、意味深なことを聞いてくる。
「また?」
「ああ。最近になってたまに意識がなくなることがあってよ。意識を取り戻した頃にはあたり一面廃墟と化していてな・・・。それが何回も続くもんで、いい加減、頭がおかしくなってきちまったんだよ。んであの時あんたを誘ったってわけだ。普通の人間じゃあ怯えるだけだし、野郎に話すってぇのは気が引けるからな」
「そうだったの・・・悪かったわね」
あたしは馬鹿だ。
本気で苦しんでいたこの人の誘いを断ってしまって。
考えてみれば、あんなに軽薄そうに誘っていたわりに目が必死だったのはそういうわけだったんだ。
「・・・もう・・・そろそろダメだ」
吐き出す血がなくなったのか、今は口から血を流してはいなかった。
「何いってんのよ!こんなことで死ぬんじゃないわよ!」
あたしは心の底から必死に叫ぶ。
しかし、キートは不思議なほど穏やかな顔で、
「死ぬ前に、あんたにいいたいことが・・・ある・・・」
もう息も絶え絶えで段々と声が小さくなっていく。
あたしは自然と顔を近付けた。
「何!何が言いたいの!?」
「この世の中には俺・・・みたい・・・に訳もわからず・・・くる・・・しんでいる・・・人がいる・・・はずだ・・・そいつらを・・・あんたが救ってやって・・・くれ・・・」
「・・・わかったわ。あたしに任しておいて」
あたしの言葉に満足したのかキートは穏やかに微笑み、
「------」
微かな声でそう呟き息を引き取った。
「・・・あんたは何でそんなことが言えるのよ」
あたしはただただ涙を流していた。
「ありがとう」
その言葉がいつまでも胸に残っていた・・・
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