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第33話 ルーク・スターリン
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「以上が事件のあらましになります。姉上」
「そうか、了解した。仕事絡みとはいえ、久しぶりに顔が見れて嬉しいよ、メリッサ」
先日のヤムイ村の事件の概要をセインツ王国近衛騎士所属第二部隊隊長のメリッサ・カイザスが、姉である強国対策支部の支部長兼大隊長エルザ―ド・カイザスに話をしに来ていた。
場所はエルザードの支部長室である。
「私も嬉しいです。全く、仕事に乗じないと会えない身の上が恨めしいです」
「その通りだな。そろそろ引退でもするかな」
「ふふふ、心にも無いことを」
「いやいや、最近私も歳を感じるのだよ」
「衰えてもその覇気ならあと30年は現役でいけますよ」
「姉に厳しい妹だな。まぁ、冗談はともあれ、まさかルークがその事件に絡んでいるとはな」
エルザードが楽しそうにそういう。
「ルーク殿が近くにおられたおかげで助かりました。もしタイミングがズレていたら、村は占拠され、今でも解放するために戦っていたでしょうね」
メリッサはルークがいなかったときを想像すると今でも背中にひやりとしたものを感じる。
「あいつは本当に昔から巻き込まれやすいんだ。そういう星の下に生まれているに違いない」
「では、その星に感謝しないといけませんね」
「ふふ、そうだな。ルークに直接会ったのだろう?どう思った?」
「・・・言葉を選ばず言うのであれば『化け物』ですね。『剣鬼』とはよく言ったものです。人の理から外れた強さが戦わずとも伝わって参りました。姉上がルーク殿を軍から追放したことを教えてくれていなければ、玉砕覚悟で捕らえようとしていたでしょうね。まぁ、実際は捕らえようとすれば抵抗する気は無かったようですが」
「そうか、『化け物』か。あいつは許嫁と生きて再会するために死にものぐるいで戦争を生き抜いただけなんだがな。今のあいつの状況を考えると不憫でならない。本当は私の跡を継いで欲しかったが巡り合わせが悪くてな欲に目が眩んだ奴らのせいで殺さないで軍を追放するくらいしかできなかった」
エルザードがルークのことを思いながら悔しそうな顔をする。
「・・・驚きました。姉上が他人のことでそこまで感情をあらわにするなんて」
少なくともメリッサは見たことがなかった。
「あいつの我が国、我が軍に対しての貢献は表面化しているものだけでは当然ない。表面化していない部分も数多い。そのことを良く知る私としては流石に感情移入しないわけにはいかない」
「なるほど。これはますます我が隊に入ってもらわないといけませんね」
「・・・ルーク・スターリンを騎士団に入れるつもりか?」
メリッサの突然の言葉にエルザードが呆れたように確認する。
「ええ。あの強さを余らせておくなんてあってはならないですからね。軍にいられないなら騎士になるのは道理でしょう」
エルザードは「道理か?」と思ったが声に出すのは控えた。昔から妹とは軍と騎士の話題だけはお互いに相容れないことを経験上理解しているからだ。
「・・・私にできることがあれば応援しよう」
エルザードは珍しく、無難なセリフしか言えなかったのだった。
「そうか、了解した。仕事絡みとはいえ、久しぶりに顔が見れて嬉しいよ、メリッサ」
先日のヤムイ村の事件の概要をセインツ王国近衛騎士所属第二部隊隊長のメリッサ・カイザスが、姉である強国対策支部の支部長兼大隊長エルザ―ド・カイザスに話をしに来ていた。
場所はエルザードの支部長室である。
「私も嬉しいです。全く、仕事に乗じないと会えない身の上が恨めしいです」
「その通りだな。そろそろ引退でもするかな」
「ふふふ、心にも無いことを」
「いやいや、最近私も歳を感じるのだよ」
「衰えてもその覇気ならあと30年は現役でいけますよ」
「姉に厳しい妹だな。まぁ、冗談はともあれ、まさかルークがその事件に絡んでいるとはな」
エルザードが楽しそうにそういう。
「ルーク殿が近くにおられたおかげで助かりました。もしタイミングがズレていたら、村は占拠され、今でも解放するために戦っていたでしょうね」
メリッサはルークがいなかったときを想像すると今でも背中にひやりとしたものを感じる。
「あいつは本当に昔から巻き込まれやすいんだ。そういう星の下に生まれているに違いない」
「では、その星に感謝しないといけませんね」
「ふふ、そうだな。ルークに直接会ったのだろう?どう思った?」
「・・・言葉を選ばず言うのであれば『化け物』ですね。『剣鬼』とはよく言ったものです。人の理から外れた強さが戦わずとも伝わって参りました。姉上がルーク殿を軍から追放したことを教えてくれていなければ、玉砕覚悟で捕らえようとしていたでしょうね。まぁ、実際は捕らえようとすれば抵抗する気は無かったようですが」
「そうか、『化け物』か。あいつは許嫁と生きて再会するために死にものぐるいで戦争を生き抜いただけなんだがな。今のあいつの状況を考えると不憫でならない。本当は私の跡を継いで欲しかったが巡り合わせが悪くてな欲に目が眩んだ奴らのせいで殺さないで軍を追放するくらいしかできなかった」
エルザードがルークのことを思いながら悔しそうな顔をする。
「・・・驚きました。姉上が他人のことでそこまで感情をあらわにするなんて」
少なくともメリッサは見たことがなかった。
「あいつの我が国、我が軍に対しての貢献は表面化しているものだけでは当然ない。表面化していない部分も数多い。そのことを良く知る私としては流石に感情移入しないわけにはいかない」
「なるほど。これはますます我が隊に入ってもらわないといけませんね」
「・・・ルーク・スターリンを騎士団に入れるつもりか?」
メリッサの突然の言葉にエルザードが呆れたように確認する。
「ええ。あの強さを余らせておくなんてあってはならないですからね。軍にいられないなら騎士になるのは道理でしょう」
エルザードは「道理か?」と思ったが声に出すのは控えた。昔から妹とは軍と騎士の話題だけはお互いに相容れないことを経験上理解しているからだ。
「・・・私にできることがあれば応援しよう」
エルザードは珍しく、無難なセリフしか言えなかったのだった。
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