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第39話 国重剣
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「そうか、お主がルーク・スターリンか」
「俺をご存知で?」
ゲインの言葉にルークが聞き返す。
一般人にはルークの通り名は伝わっていても名前は伝わっていないはずだからだ。
「もちろんだ。『剣鬼』ルークよ、お主に直接会って礼がしたいと以前から思っておった。本当にありがとう」
そういうとゲインがルークに向かって深々と頭を下げた。
「頭を上げてください。礼を言うのは俺の方です。あなたのお蔭で仲間を国を守ることができました。ありがとうございました」
今度は逆にルークが頭を下げる。
「・・・そう思ってくれて嬉しいわい。もし時間があればこの年寄りの話を聞いてくれないか?」
「ええ、もちろんです」
「ありがとう。立ち話もなんじゃし、中に入ってくれ。茶でも出そう」
「分かりました。御言葉に甘えさせて貰います」
ルークの話を聞いたゲインはさっさと店の入口のプレートを閉店中に変え、鍵をしめる。
そしてルークとともに中に入り、ゲインが話した内容は以下のようなことだった。
三十年前、ゲインが一流の鍛冶師と認められてしばらく経っていた頃、国より最高の一振りを納めるという大変名誉である勅命があった。
当時のゲインは悩みに悩んだ。
剣として最も必要な事は何なのか。
何でも全てを切断するとてつもない切れ味の剣か?
剣という常識を超えた間合いに左右されない広範囲でも攻撃できる剣か?
使い手の動きを制限しない羽毛のような軽い剣か?
ゲインは試行錯誤を繰り返し様々な剣を作成した。
だがどれもしっくり来なかった。
その時初めて気がついた。あらゆる剣を作ってきたゲインだったが、自分が本当に作りたい剣は何なのかを忘れていたのだった。
そんなときだった。事件が起きたのは。
自分が今持ちうる技術の粋を集めて作成した何者をも
切れる剣を持った親友の騎士が戦いの最中で剣が折れてしまい、守ろうとしたものも含めて全員死んでしまったのだ。
ゲインは自らを責めた。
どうしてあんな剣を作ってしまったのだろうと。
そしてようやく気づいた。
自分が本当に作れたかった件はどんなものでも斬る最強の剣ではなく、どんなときでも折れず、自分だけではなく味方を守り続けることができる最硬の剣だと。
それからあらゆる技法を学び直し、新しい技法も取り入れできた剣が国の重さを背負うに足る剣という意味を込め『国重剣』と名付たけのだ。
「しかし、最硬の剣は最重の剣でもあった。当時の国王様は儂の思想を気に入ってくださり我が国を象徴する剣として受け取ってくださったが、使い手のいない剣などただの飾りだ。十数年間使われることも無くただ眠っていた剣のことを考えると儂はずっと苦しかった。自分の考えは間違っていたのかと。そんなときだ、国重剣を使う人間が現れたのは。そうだ、お主のことだルーク。お主は、儂の思想をそのまま体現してくれたばかりだけではなく、それ以上の成果を上げ続けてくれた。最終的には、世界最大強国のジークムント王国をして『絶対に手を出してはならぬ敵』と言わしめ、10年の不可侵条約を結ぶというとんでもない偉業を成し遂げてくれた。正直儂は魂が震えた。そして、お主に直接礼を言いたいとずっと思っておった。本当にありがとう、ルーク」
ゲインは最後にもう一度深く頭を下げルークに礼を言ったのだった。
「俺をご存知で?」
ゲインの言葉にルークが聞き返す。
一般人にはルークの通り名は伝わっていても名前は伝わっていないはずだからだ。
「もちろんだ。『剣鬼』ルークよ、お主に直接会って礼がしたいと以前から思っておった。本当にありがとう」
そういうとゲインがルークに向かって深々と頭を下げた。
「頭を上げてください。礼を言うのは俺の方です。あなたのお蔭で仲間を国を守ることができました。ありがとうございました」
今度は逆にルークが頭を下げる。
「・・・そう思ってくれて嬉しいわい。もし時間があればこの年寄りの話を聞いてくれないか?」
「ええ、もちろんです」
「ありがとう。立ち話もなんじゃし、中に入ってくれ。茶でも出そう」
「分かりました。御言葉に甘えさせて貰います」
ルークの話を聞いたゲインはさっさと店の入口のプレートを閉店中に変え、鍵をしめる。
そしてルークとともに中に入り、ゲインが話した内容は以下のようなことだった。
三十年前、ゲインが一流の鍛冶師と認められてしばらく経っていた頃、国より最高の一振りを納めるという大変名誉である勅命があった。
当時のゲインは悩みに悩んだ。
剣として最も必要な事は何なのか。
何でも全てを切断するとてつもない切れ味の剣か?
剣という常識を超えた間合いに左右されない広範囲でも攻撃できる剣か?
使い手の動きを制限しない羽毛のような軽い剣か?
ゲインは試行錯誤を繰り返し様々な剣を作成した。
だがどれもしっくり来なかった。
その時初めて気がついた。あらゆる剣を作ってきたゲインだったが、自分が本当に作りたい剣は何なのかを忘れていたのだった。
そんなときだった。事件が起きたのは。
自分が今持ちうる技術の粋を集めて作成した何者をも
切れる剣を持った親友の騎士が戦いの最中で剣が折れてしまい、守ろうとしたものも含めて全員死んでしまったのだ。
ゲインは自らを責めた。
どうしてあんな剣を作ってしまったのだろうと。
そしてようやく気づいた。
自分が本当に作れたかった件はどんなものでも斬る最強の剣ではなく、どんなときでも折れず、自分だけではなく味方を守り続けることができる最硬の剣だと。
それからあらゆる技法を学び直し、新しい技法も取り入れできた剣が国の重さを背負うに足る剣という意味を込め『国重剣』と名付たけのだ。
「しかし、最硬の剣は最重の剣でもあった。当時の国王様は儂の思想を気に入ってくださり我が国を象徴する剣として受け取ってくださったが、使い手のいない剣などただの飾りだ。十数年間使われることも無くただ眠っていた剣のことを考えると儂はずっと苦しかった。自分の考えは間違っていたのかと。そんなときだ、国重剣を使う人間が現れたのは。そうだ、お主のことだルーク。お主は、儂の思想をそのまま体現してくれたばかりだけではなく、それ以上の成果を上げ続けてくれた。最終的には、世界最大強国のジークムント王国をして『絶対に手を出してはならぬ敵』と言わしめ、10年の不可侵条約を結ぶというとんでもない偉業を成し遂げてくれた。正直儂は魂が震えた。そして、お主に直接礼を言いたいとずっと思っておった。本当にありがとう、ルーク」
ゲインは最後にもう一度深く頭を下げルークに礼を言ったのだった。
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