戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

第108話 正面突破②

「何事か！？」

ケビンをいたぶる為に檻の前に移動していたバストロは急にやってきて自分の楽しみを止めさせたた部下に対して怒りの声を上げる。

「ひっ！申し訳ございません！！」

腐っても領主、バストロの威圧に呑まれ悲鳴を上げる部下。

「バストロ様、そんなに威圧したらしゃべれないですぜ」

ここで、バストロの側にいた私兵の中でも一番良い装備をしている者がそう言った。

「アグラス私兵長？むぅ。それもそうよな。それで何事だ？」

バストロが致し方ないといった様子で私兵長アグラスの言葉に従い、先ほどよりも比較的穏やかに部下に対して再度問いかける。

部下が、アグラス私兵長にこっそり頭を下げてから話し出した。

「侵入者です！バストロ様に会わせろと無理やり訪ねて来た者がいます！」

「おお！？思ったより早かったな！！遂にイリアが儂の元にやってきたか！？」

どう考えても、イリアではないだろう。周りの私兵たち含めバストロ以外の者がそう思うが口には出さない。

「い、いえ、やってきたのは男です！」

「なんだと？期待させよって・・・男などいらぬ。追い返せ！！」

「バストロ様！！」

最初にやってきた部下が答えるよりも早く、とても慌てた様子で別の部下がやってきた。

「またか、何だ！？」

バストロはやれやれといった感じで問い返す。

「侵入者が私兵たちを蹴散らし、館に無理やりやってきています！！」

「な、なんだと！！一体庭に何人の私兵を置いていたと思っている！？それが全てやられたというのか？」

バストロは漸く、緊急事態ということを理解した。

「おい」

私兵長アグラスが言葉少なく指示を出す。

「「「はっ！！！」」」

それに答えて私兵たちが『謁見の間』の偽玉座を守るように配置し、各々の武器を構える。

「バストロ様、いざという時は逃げられるようにしておいてくだせぃ」

私兵長アグラスがバストロに対して助言をする。

「わ、分かった」

不真面目な普段の態度を急に切替え、真剣な表情で言われた言葉にバストロも唾をのみ込みながらなんとか答え、偽玉座に座る。

「で、相手は何人だぃ？」

私兵長アグラスが2番目にやってきた部下に相手の戦力を尋ねる。

「そ、それが・・・一人です。。。」

「・・・はぁ？」

部下の言った予想外の言葉に、私兵長アグラスが思わず間の抜けた声を上げてしまったのだった。