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第135話 少女③

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「どう?ここなら野営に向いてそうじゃない?」

しばらくして荷物を取ってきてくれたミリーナに感謝しつつ、解体後のものを包む。

ミリーナは嫌がるかと思っていたが、サクサク包んでいく様子を見て意外に思っていたら、それに気づいたミリーナが、「何驚いているの?こういうこともあると、思って訓練してたわ。はじめは苦手だったけど慣れれば何とかなるものよね」と言ってニヤリとしていたのが印象的だった。

(騎士は普通はやらないんだがな)

とルークは思ったが言わぬが花と口に出すのは控えておいた。

その後、意気揚々とミリーナに案内されたのは川が隣に流れた拓けた場所であった。

大小様々な石が転がっている。

「よく見つけたな。ありがとう」

ルークが荷物を起き、石をどけながら礼を言う。

ちなみにミリーナは少女を運び、それ以外の荷物は全てルークが運んでくれていた。

「いえいえ、こちらこそ荷物持ってくれてありがとう」

ミリーナもルークに礼を言い、さらっと敷いてくれた毛布の上に少女を置いてやる。

「気にするな、お互い様だ」

ルークはテキパキと夕餉の支度を始める。

「はぁ~。いつ見ても見事なものね」

その様子を見ながらミリーナが感心する。

王都を出てから何度か野営をしたことはあったがいつ見ても感心してしまう。

あっという間に火を起こし、洗った木の枝に先程の熊肉を刺し焼き始めた。

「ただ慣れているだけで、そう大したものじゃないさ」

ルークはミリーナの言葉に苦笑で返す。

「あれ?でもルークって軍にいた時も偉かったのよね?それでもやっていたの?」

ミリーナがふと疑問を口にする。

「ああ、確かにそうだったが、所謂上下関係がどうしても嫌でな、新米だったときに受けた上官からの仕打ちや態度が気に入らなくて自分が上になったとしてもそういうことはしないようにしてきたんだ。その結果、関係なく部下達と紛れて野営の準備とかもやり続けていたなぁ」

ルークは偉い顔をするということが大嫌いだった。

地位や名誉があるからと言って何だというのだ。

所詮は同じ人間だ。

感情もあるし、寿命だってある。

無論、ある程度は尊重すべきだとは思うが、、、

「ふーん。ルークは部下たちのとって良い上司だったんだね」

ミリーナが嬉しそうに笑う。

「今思えば、そうだったんだろうな」

ルークは先日の裁判の時や軍を追放されたときの部下たちの様子を思い出しながら、しみじみと答えたのだった。
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