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第175話 剣術大会㉒

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「ふっ、やはりミリーナ君は見所があるな」

ミリーナも出て行った会議室でメリッサが一人呟く。

「あの調子ならルーク殿の近衛騎士への引き入れも可能かもしれない」

正直、制御しきれるか分からないがルークを近衛騎士に入れることで得られるメリットは計り知れない。

「いかんいかん。ひとまず、国王様へ今回の件の情報を報告しないとな。それにしてもしばらく見ない間にジークムント王国の王女様と行動を共にしているとは・・・。ゼーラの街のことも含め本当に行動が読めない方だ」

メリッサは心の底から面白いと笑ってから、会議室を後にした。



「お待たせ!ルークにヒルダちゃん!!」

「ああ」

「おお、ミリーナ」

ミリーナが騎士詰所を出るとルークとヒルダが待っていたので声を掛ける。

「なら行くか」

「え、ううん。行きましょう」

ミリーナはメリッサから何を言われるか聞かれると思ってどう答えようか考えていたので何も言わずに先を行こうとするルークに躊躇う。

「長期滞在できる宿を探さないとな」

ルークがこの後の行動を二人に伝えるように呟く。

「うぬぅ。今のこの人の入りようから今から宿をとるのは厳しくないか?」

ヒルダが心配したように言う。

「そうよね。どうするルーク?」

「そうだな。街の端の方に行ってみよう。その辺りなら空いている可能性もあるだろう。予選まで少し時間があるからな。街の外で鍛錬もしたいし」

「「えっ」」

ルークの言葉にミリーナとヒルダの驚きの声が被る。

「ん?どうした?街の端は嫌か?」

ルークが二人の反応に不思議そうに聞いてくる。

「いや、それはいいんだけど、ねぇヒルダちゃん?」

「ああ、もちろん良いのじゃが、のうミリーナ」

「そうか、よく分からないがそれなら宿を探しに行こう」

「ええ」

「わかったのじゃ」

先頭を行くルークについていく二人。

二人が驚いたのは『今更鍛錬なんて必要?』ということだった。

高みに登りつめても慢心せず妥協もしない。

ルークのその姿勢はミリーナやヒルダの心に良い影響を与えていた。

(あたしも見習わないと)

(我も見習わないとな)

ちなみにこの後、街の端の宿を何軒か探し歩き、漸く長期滞在できる宿を見つける事ができたのだった。
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