他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに

第124話

アリシアは静かにエルリックの様子を見る。

両拳を強く握り、震えている。

悔しくて溜まらないのだろう。

自分にはどうしようも無い、どう考えても理不尽そのものが自分の妹に襲いかかっているのだから。

「実は、バルム家には特殊な魔法が継承されております」

「？」

アリシアの言葉に疑問符を浮かべるエルリック。

当然だ。そのような魔法は聞いたことが無いはずだから。

アリシアは一度グレイの方を見る。

グレイもアリシアの意図は充分に理解しているため、口を挟んだりしないで黙って成り行きを見守っている。

アリシアは続けて、

「この魔法は人生で一度しか使えません。ですが、どのような状態であっても癒やすことができます」

とエルリックに静かに伝える。

「！？・・・そんな魔法があったなんて・・・」

エルリックが驚愕する。

それはそうだろう。

アリシアの語った内容はエルリックが喉から手が出るほど欲している内容なのだから。

「私《わたくし》がグレイさんに付いてきたのは他でもありません。この魔法をユーマリアさんに使うためです」

「本当ですかっ！？」

エルリックがアリシアの嬉しい言葉に思わず大きな声を上げ、慌てて口を閉じ、ユーマリアの方を見る。

ユーマリアはぐっすりと眠ったままだった。

エルリックはほっとしながら、アリシアの方を向き、改めて尋ねる。

「アリシアさんのお心遣いとても嬉しいです。ですが、私の妹のために一度しか使えない特別な魔法を行使してくださるのは何故でしょうか？」

エルリックは目の前の人物をバルム家のご令嬢として丁寧に尋ねる。

それは当然の疑問であろう。

バスター家は上級の貴族ではあるが最上級の貴族であるバルム家からそこまでして貰う理由が全く無いのだ。

「最もな疑問ですわね。良いでしょう。お答えします。私《わたくし》がユーマリアさんを治そうとしているのはグレイさんに頼まれたからです」

アリシアがはっきりと答える。

「グレイが？」

エルリックは思わずグレイを向く。

「親友が困っているんだ。出来ることをやるのは当然だろう？」

グレイは頷きながら答える。

「ありがとう、グレイ」

エルリックはグレイに素直に御礼を言う。

「アリシアさんは何故、グレイの頼みを聞いてくださるのですか？」

エルリックには全くもって良く分からなかった。

グレイは素晴らしい親友だが、平民だ。

いくらアリシアの付き人だとしても、その平民の頼みを3大貴族のバルム家のアリシアが聞き入れる理由が分からない。

「その時には正確に答える訳には参りません。ですが、そうですね。きっとユーマリアさんなら私《わたくし》の気持ちが分かるのでは無いでしょうか？」

エルリックに対してグレイがアリシアやバルム家に対してどれだけ貢献してくれたかを話すわけにはいけない。

そのため、過去にグレイに助けられたユーマリアならという言い方をするに留めた。

「ユーマリアが・・・」

エルリックは不思議そうにユーマリアを見る。

アリシアはこうして話している間にもユーマリアが死へと向かっている可能性が高いと考え、更に言葉を続ける。

「早く治して差し上げたいのですが、私《わたくし》にお任せ頂けますか？」

「・・・もちろんです。何卒、何卒よろしくお願い致します」

エルリックはアリシアに対して、深く頭を下げた。