他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに

千石

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第174話

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ビリ・・・ビリ・・・

たった数時間しか経ってないが、アリシアからは先ほど以上のプレッシャーが感じられる。

(嘘だろ・・・空気が振動しているようだ。俺の体が全力で逃げたいと思っているのがよく分かる)

グレイは再度アリシアと対峙し、先ほど以上のプレッシャーを感じて驚愕する。

(自主練をしていたって言ったけど、その所為なのか?)

アリシアはまだまだ成長していくという事をグレイは全身で理解していた。

一方、アリシアは、まずは、様子を見ることにしている。

(・・・先ほどとは少し異なるようですが、まだあの時とは比べ物になりませんわね)

アリシアが思い出すのはナガリアの執事に立ち向かった時のグレイ。

命を救われたこととそれに何よりグレイが生きて目の前に再び現れてくれたことがもの凄く嬉しくて少し朧気ではあるが、それでもナガリアの執事に対しての威圧感は特筆すべきものであったと覚えている。

「・・・」

「・・・」

グレイとアリシアは沈黙したまま対峙し、微動だにしない。

(・・・丁度いい。アリシアが待ってくれている間に意識を高めよう)

グレイは先ほど掴んだ戦闘時の気持ちを思い返していく。

そして、それは段々とグレイから発する威圧感へと繋がっていく。

「っ!?」

グレイの様子を伺っていたアリシアは声を出さずに驚く。

(これ、これですわ。まだあの時には及びませんが、充分です)

ダッ

アリシアがそう思った瞬間、グレイがまっすぐに駆け出しアリシアの方へと向かってくる。

ゾクッ

アリシアはその様子を見て背筋に冷たい感覚が宿る。

(私《わたくし》に対して真正面から向かってくる。このような学園の生徒はいませんでした)

この光景を見たアリシアのことを知る魔法学園関係者は皆揃ってこう言うだろう。

『何て無謀な奴』

と、だが、アリシアは知っていた。

(グレイはどんな相手であろうと真っ向から挑む方ですわ。・・・それにしてもこの威圧感に加えてこうされると来るものがありますわね)

アリシアはかつてグレイと戦闘してきた者たちの立場に立って初めてその事に気づく。

そして、向かってくるグレイをどうにかしようと魔法を放つ。

「【炎】よ!」

ゴォォォ!

「!?」

呪文を唱えず、魔法を放つ言葉だけで構築された炎がグレイにすぐさま襲い掛かり、着弾したのか大きな音を立てる。

アリシアは追撃するでも無く、気を抜くでも無く、後ろに飛び距離を取る。

ブゥゥン

タイミングが少しズレた状態で、現れたグレイがアリシアが先ほどまでいた場所に右拳を振るが虚しく空を切る。

「・・・」

グレイは拳を振った勢いを利用し若干左に進み、そのままアリシアの方へ向かう。

(・・・流石ですわね。全くの無傷とは。これをされると何も知らなければ尚更自信が無くなりますわ)

アリシアの額に汗が一筋流れる。

カラクリとしては、グレイの左腕の服がボロボロになっていることから左拳で炎を殴り、無効化した後、【エリクサー】で瞬時に治したのだろう。

グレイの秘密を知らなければ、少なくとも一瞬は思考停止してしまうに違いない。
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