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果たしてキーラは逆転ホームランを打ったのか
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キーラはとんとん拍子に王族との結婚が進んだことに喜び、優越感に浸っていた。
父からは暗にアランやバルトサールに取り入ればいいと言われていたが、それ以上の極上の男が自分の魅力に惹きつけられた。
いつも見下げていたノエルが侯爵家の養子になり、さらには公爵家の次男と婚約をしていると聞いたときは腹が立った。自分たちを平民に追いやったくせにノエルだけ幸運をつかんだことが許せなかったのだ。
しかし、王弟が自分に求婚をしてきた。王族と結婚となれば身分はノエルよりも上となり、贅沢三昧の生活が保障される。
性癖に癖があるらしいが、たとえ愛人や想い人がいても構わない。うんと若い子や逆にうんと年かさの女性が好きだったとしてもそんなのいくらでも我慢する。平民から抜け出し、ノエルの上に立てる最大のチャンスをみすみす逃すわけにはいかない。
バルトサールやアランが必死で引き止めていたがあれは、自分より身分が上の者に嫁がれるのが嫌だったのだろう。
殿下は非常に容姿がよかった。整った顔に柔らかい物腰、スタイルも声も良くて身分も高い。現王の一番末の弟らしく、国王からも非常にかわいがられていると聞く。これまで見た中でも最高のこの男を絶対に逃したくないと思った。
仕事でも重要な仕事を請け負っているらしいが、そのあたりのことは極秘であり、結婚してから少しずつ教えられる事柄なのだそうだ。
自分に王族に嫁げるほどのマナーや教養がないことは自覚していたが、殿下は難しい公務や社交は気にしなくていいと言ってくれた。
ただ子供を作る行為をすることが条件だと言った。これまでなかなか子供を授かる機会がなかったが、キーラとなら子作りが出来そうだと嬉しそうに殿下は笑った。
もしかして性癖と言いながら不能だったのかもしれないとキーラは思った。
それなのに魅力的な自分には興奮することが出来ると言われたのだと、キーラはいいように解釈をしたのだ。
これまでの不運をすべて帳消しにし、それを上回る幸運にキーラは有頂天だった。
大げさな結婚式やお披露目はされないままキーラは迎え入れられた。
それには少し不満はあったが、すぐにでも一緒になりたいからと言われて喜んで承知した。
そして初めての夜、殿下は不能なんてことはなくとても激しく、しかし優しく大切に妻にしてくれた。
暮らすことになった屋敷は予想以上に立派で、使用人たちも子爵家出身のキーラを見下すことなく礼を尽くして受け入れてくれた。
ノエルに勝ったと胸の内で笑いが止まらなかった。
今度会ったときはどうやって見下し、みじめな思いをさせてやろうと考えるだけで、爽快な気分だった。
しかし現実は酷だった。
ある日、とある貴族家でパーティが開かれた。
今回のホストは孤児院関係に尽力をしている貴族であり、一応平民として生活をし社交界にはあまり出ることはなかったアランやノエルも出席していた。
アランとノエルは他の参加者やこのパーティのホストと楽しく歓談し、楽団が音楽を奏で始めるとアランがノエルを誘って楽しそうに踊っていた。
それを離れたところからひっそりと見つめる人物がいた。
幸せそうなノエルの姿から視線をそらし、キーラはそっと身を隠した。
夫の王弟殿下は知人と歓談中で、この国に友人がいないキーラは一人寂しく惨めな思いを抱えたままノエルたちに見つからないようにと祈っていた。
いつも社交はしなくてよいとパーティなど連れていってもらえないのに、今日は珍しくつれてきてくれたと思えばまさかのノエルがいた。
輝くような最高の生活が待っていると思っていたのに、結婚生活は地獄だった。
決して冷遇されているわけではない。大事にもしてくれている
だが人としての尊厳をズタズタにされみじめで毎日頭がおかしくなりそうな生活。
王族と結婚して自分の人生は大逆転すると思っていたのに。
ノエルを跪かせて笑ってやろうと思っていたのに、今ではノエルに見つからないように姿を隠すことしかできなかった。
父からは暗にアランやバルトサールに取り入ればいいと言われていたが、それ以上の極上の男が自分の魅力に惹きつけられた。
いつも見下げていたノエルが侯爵家の養子になり、さらには公爵家の次男と婚約をしていると聞いたときは腹が立った。自分たちを平民に追いやったくせにノエルだけ幸運をつかんだことが許せなかったのだ。
しかし、王弟が自分に求婚をしてきた。王族と結婚となれば身分はノエルよりも上となり、贅沢三昧の生活が保障される。
性癖に癖があるらしいが、たとえ愛人や想い人がいても構わない。うんと若い子や逆にうんと年かさの女性が好きだったとしてもそんなのいくらでも我慢する。平民から抜け出し、ノエルの上に立てる最大のチャンスをみすみす逃すわけにはいかない。
バルトサールやアランが必死で引き止めていたがあれは、自分より身分が上の者に嫁がれるのが嫌だったのだろう。
殿下は非常に容姿がよかった。整った顔に柔らかい物腰、スタイルも声も良くて身分も高い。現王の一番末の弟らしく、国王からも非常にかわいがられていると聞く。これまで見た中でも最高のこの男を絶対に逃したくないと思った。
仕事でも重要な仕事を請け負っているらしいが、そのあたりのことは極秘であり、結婚してから少しずつ教えられる事柄なのだそうだ。
自分に王族に嫁げるほどのマナーや教養がないことは自覚していたが、殿下は難しい公務や社交は気にしなくていいと言ってくれた。
ただ子供を作る行為をすることが条件だと言った。これまでなかなか子供を授かる機会がなかったが、キーラとなら子作りが出来そうだと嬉しそうに殿下は笑った。
もしかして性癖と言いながら不能だったのかもしれないとキーラは思った。
それなのに魅力的な自分には興奮することが出来ると言われたのだと、キーラはいいように解釈をしたのだ。
これまでの不運をすべて帳消しにし、それを上回る幸運にキーラは有頂天だった。
大げさな結婚式やお披露目はされないままキーラは迎え入れられた。
それには少し不満はあったが、すぐにでも一緒になりたいからと言われて喜んで承知した。
そして初めての夜、殿下は不能なんてことはなくとても激しく、しかし優しく大切に妻にしてくれた。
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ノエルに勝ったと胸の内で笑いが止まらなかった。
今度会ったときはどうやって見下し、みじめな思いをさせてやろうと考えるだけで、爽快な気分だった。
しかし現実は酷だった。
ある日、とある貴族家でパーティが開かれた。
今回のホストは孤児院関係に尽力をしている貴族であり、一応平民として生活をし社交界にはあまり出ることはなかったアランやノエルも出席していた。
アランとノエルは他の参加者やこのパーティのホストと楽しく歓談し、楽団が音楽を奏で始めるとアランがノエルを誘って楽しそうに踊っていた。
それを離れたところからひっそりと見つめる人物がいた。
幸せそうなノエルの姿から視線をそらし、キーラはそっと身を隠した。
夫の王弟殿下は知人と歓談中で、この国に友人がいないキーラは一人寂しく惨めな思いを抱えたままノエルたちに見つからないようにと祈っていた。
いつも社交はしなくてよいとパーティなど連れていってもらえないのに、今日は珍しくつれてきてくれたと思えばまさかのノエルがいた。
輝くような最高の生活が待っていると思っていたのに、結婚生活は地獄だった。
決して冷遇されているわけではない。大事にもしてくれている
だが人としての尊厳をズタズタにされみじめで毎日頭がおかしくなりそうな生活。
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