ブリアール公爵家の第二夫人

大城いぬこ

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馬車は駄目なのに




 なんとも思わん、は正直に言いすぎただろうか?ロシェルが好きだった父上の死もそうだったと言ったも同じだ。 

「…無情というあなたが私だけに」 

 ロシェルはそう小さく呟き、顔を近づけ俺に口づけをした。 

「私だけ…そう理解する度に…嬉しくなる」

 俺は何度、いつまで、目の前の女に胸を高鳴らせる?初めての口づけでもないのに、軽く触れただけなのに自分の鼓動が聞こえるほど内から激しく鳴ってる。顔が熱くなる感覚に走り出したくなる。 

「私だけのディオルド」 

 ロシェルが妖艶に微笑んだ。俺はなにか言おうと思っていたのに、口は開くが言葉が出なかった。それほどロシェルの言葉に感情が高ぶった。 

「ふふ、えい」 

 かけ声ともとれる、愛らしい『えい』のあと、俺の足に乗せていた足に力を込めたのか若干重さを感じた。 

「呆けたお顔」 

 そう言いながら俺の頬を撫で、間抜けに開いた唇に触れ、指先でつつかれても動けなかった。 

「ふふ」 

 水色の瞳に俺への欲を見た。

 俺の感情を独占していることへの優越に喜び、そして安堵するロシェル。

 触れることに満足をしたのか離れようとするロシェルに思わず迫っていた。

 突然動いた俺に驚いたのか、ロシェルが馬車の隅に背を預けた。 

「お前だけの俺だ」 

 他の男が口にする愛は勘違いなんだ、軽いものなんだと心底思う。心変わりなんてあり得んし、ロシェル以外の女に目移りなど考えられん。そんな移ろいやすい想いじゃない。思惑も野心もない、ただ強い想いなんだ。 

「私のあなた」 

「ああ…名を…呼んでくれ」 

「ディオルド」 

「ああ…ロシェル」 

 ガガはロシェルより美しい女がいると言ったが、俺は見たことがない。瞳の色も髪の色も放つ呼気も落ち着いた声も白い首も色づいた乳首も淫らな秘毛も素直な心も… 

「お前は美しい」 

 こんなに美しいんだ。誰かに盗られたらどうする?盗られないよう必死にもなる。 

「嬉しい」 

 俺はゆっくりと顔を近づけ、柔らかい唇に口づけをする。無垢だったこの唇から快感の喘ぎを発し、俺の名を叫び絶頂する夜のロシェルで頭が満たされる。

 そして醜い欲を想像する。 

 この小さな口に俺の陰茎を含ませてみたい。ぬめる舌で竿を舐めて欲しい。亀頭を咥えて俺を見て欲しい。苦しかったら噛んだっていい。その痛みさえ、きっと愛しい。 

「ん…ふ…っん…ディオ…」 

 馬車が叩かれる音とガガの声、脳を痺れさせる甘美な香りと不快な香水の匂いに我に返る。 

 俺はロシェルの口に舌を突き入れ、舐め回していた。 

「…なぜ…こうなった…?ロシェル…」 

 夢中で口付けていたせいでロシェルの息が荒い。胸を上下させて呼吸する姿に陰茎が痛いほど漲り跳ねた。 

 俺は馬車窓のカーテンを閉めることすらしていなかった。

 ロシェルの背後の窓から馬を走らせながら体を屈めている変な体勢のガガの怒りの形相が視界に入るが、カーテンを掴み窓を閉ざす。 

「閣下ぁー!」 

「ディオルド…」 

 ロシェルの視線が揺らぎ、閉ざした窓へ向かった。 

「ガガが平行して走っていた…外からは見えていない」 

 だよな、ガガ。 信じているぞ…

「すまん…高ぶってな」 

 また変な噂が出回るだろう。ロシェルの匂いが外まで漏れているはずだ。 

「いつまでも落ち着かん…いつでもお前が欲しい…俺は下劣な男だと」 

 女に陰茎を舐めさせたいなど思ったこともなかった。辺境で部下が娼婦に舐めさせているところは何度も見たが、なにも思わなかった。娼婦にさせることを愛する女に望むなど、俺は真の変態となった。 

「ディオルド」 

 ロシェルが名を呼びながら俺の股間に触れ、陰茎を握った。 

「…なにを…」 

「硬くて…熱くなっています…準備が」 

「ああ…だが…もう馬車では抱かんと誓っ…ち…ちか…誓った…くぅ…」 

 ロシェルが手のひらを動かし、刺激を送り始めた。 

「私も欲しい…でも…ここでは駄目なら…気持ちよく…あなたに気持ちよくなってほしい…教えてください」 

 赤い唇が淫らなことを言い、微笑んだ。それを見た瞬間、誓いなど捨てていた。 

 俺はトラウザーズのボタンを外す手間を省くために思い切り生地を裂いた。 

「直接握ってくれ」 

 水色の瞳は驚きと欲を含ませ、陰茎を見ている。 昼日中、それも馬車のなかでこんな格好をしている自分が信じられんが、俺は真の変態だと思えば尊厳なんぞ消えていた。 

 美しい音色を奏でていた指が陰茎に触れると勝手に揺れたが、ロシェルは驚くことなく俺の言うとおり握ってくれた。 

「見慣れんだろ…?嫌なら無理するな」 

 いつも俺が好き勝手に触って舐めて吸って飲んで入れて突いて快感に酔わせているから、陰茎なんぞしっかり見せることはなかった。 

「つ…つるつるして…熱くて硬い…嫌ではないです…いいですか?」 

「ああ」 

「痛く…」 

「ない…強く握れ…お前のなかはもっと強く握るぞ…ロシェル…もどかしい…」 

 俺は我慢ならずロシェルの手の上から陰茎を握り、激しく上下に動かす。 

「わかるか…俺のここは…こうして…お前のなかをこする…すごい快感なんだ…ロシェル」 

 ロシェルの水色の瞳は困惑したように垂れ、頬を染めて俺の顔と陰茎を見た。 

「ディオルド…」 

「ああ…くっ…そうだ…握れ…」 

 お前が俺の陰茎を握っているというだけでもう果てそうだ。 

「見ていろ…出るぞ…」 

 俺は馬車にいることさえ忘れて快楽に耽った。 片手でロシェルの頭を掴み陰茎に近づけ、射精の瞬間を目に焼き付けろと思いながら吐き出した。 

「くっ…」 

 俺は変態だ。 




 目の前でディオルド様の局部の先端から白濁とした液体が飛び出し、破けたトラウザーズを汚した。

 手のなかの局部は熱を持ち、何度も跳ねて子種を吐き出した。先端から垂れる子種が私の手を濡らしても、離していいのかわからず、ただ握っていた。 

 頭を押さえていた手が離されても、見つめ続けた。この局部が私のなかをこうして動き、お腹のなかへ子種を出していると想像しただけで体が震えて、恥ずかしいくらい秘所が濡れている感覚もしている。 

「ロシェル」 

 名を呼ばれても顔を上げられなかった。臙脂を見てしまえば、欲しいと口に出してしまいそうだった。 

「ロシェル」 

 ディオルド様の手が私の手を陰茎から離した。 

「すまん…嫌なものを見せたか?」 

 私はただ顔を振った。 

「…だよな…お前は欲しがっているよな」 

 私の恥ずかしい欲情を言い当てられていたたまれず、ディオルド様から離れようとすれば、素早く腕が肩を抱き、引き寄せられた。

 たくましい胸から聞こえる速い鼓動は私と同じだった。 

「わかるんだ…お前が…濡らしているのがな」 

 ディオルド様が頭に口づけをした感覚にもお腹がうずいた。 

「こんな真似はお前にしか見せられん」 

 私はちらと局部を見る。まだ硬いのが見てわかった。 入れて欲しいという願いを飲み込み、ディオルド様の服を掴む。 

「エコーに怒られるな」 

 御者台にいるエコーには見えていないのに知られているの? 

「閣下の馬鹿ー!閣下のすけー!もうやめてぇー」 

 すけー…? 

「エコー!遠回りしろ!」 

 ガガ様の声のあと、ディオルド様が声を上げた。 

「ロシェル」 

 呼ばれて顔を上げれば、近くに臙脂がいた。 

「乗るか?」 

 臙脂の瞳が局部をちらと見て首を傾げた。 

「…乗る…?」 

「こうだ」 

 ディオルド様に体を持ち上げられ、頭が天井につくほど浮いた。 

「下ろすぞ…跨ぐんだ」 

 私は意図を理解して、足の力をゆるめる。下ろされた私の秘所に先端があたり、まだ与えられていない快感に声が出そうだった。 

「…下着が邪魔で繋がれん」 

 ディオルド様が意地悪い顔をして口角を上げた。こんな表情も外では見せない。 

「…待って…」 

 浮いた状態でなんとか手を伸ばし、ドレスをめくって下着をずらす。 

「下ろして」 

「ああ」 

 熱くぬめった先端がゆっくりと私のお腹の奥へと向かい、お尻が乗るまで耐えていた声が我慢できなくて、手で押さえたくても下着をずらしていてできなくて、下唇を噛む。 

「ロシェル…噛むな」 

 その時、馬車がたてに揺れて局部が深くお腹を押し上げるように突き入れられたと同時に私の唇はディオルド様の唇に覆われ、叫びは出せなかった。 

「んん!!」 

「ほら…な…一つだ…俺とお前…こんなにも…深く…くっ…なん…て…快感だ…こんなに濡れて…」 

 唇を合わせながら聞こえるディオルド様の途切れ途切れの声と与えられる快感にもう羞恥も体裁も考えられず、目の前の臙脂を腕に抱いた。 

 妹のチュリナの死を聞いたばかりなのにこんなことをしている私はやっぱり薄情だと喘ぎながら考えたのは一瞬だった。 

「ロシェル…感じていろ…俺を…」 

 もう意識は与えられる喜びで満たされていた。








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