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お披露目されます1

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「おはようございます。」
「むにゃ…」

ミーアに起こされて目が覚める。目を擦りながら隣を見たけど、レオはもういなかった。

「魔王様はもうお目覚めですよ。さあ、リナ様もおめかししましょうね。今日は謁見の日ですから。」
「謁見?」
「ええ、週に一度ある謁見の日です。魔王様に報告のある者や、良い働きをした臣下が魔王様に会いに来る日ですね。」
「そうなんだ。」
「なんでも本日はリナ様を連れて行かれるそうですよ。さあ、もう魔王様がドレスをお選びになりましたからね。それを着ていきましょう。」
「うん。」

相変わらずゴスロリっぽい服を着せられ、今日は髪を結ってもらう。腰まである長い髪はそのままだと少し邪魔だ。肩くらいまで切ってくれないかな。

「ミーア、髪が長すぎるから切ってもらえないかな。長くて邪魔なんだ。」
「え!?髪をですか?こんなに艶々で美しい黒髪ですのに…魔王様の許可がなければできませんので、後で聞いてみたらどうでしょう?」
「分かった。」
「今日は邪魔にならないように結いますからね。」
「ありがとう。」

ミーアはツインテールを作り、毛先をドリルのように巻き始めた。あ、これ知ってる。悪役令嬢の縦ドリルだ!確かに巻いちゃえば少し短くなるよね。最後にレースのヘッドドレスを装着すれば、可愛いドールの完成だ。いや私だ。私だった。でもどこからどう見ても本当お人形さんみたいに可愛い。この顔に生まれ直して良かった。私は鏡の前でクルクルと回ってその可愛さを堪能した。少し前まで全裸で過ごしていたとは思えない仕上がりだった。

「何をしている。」
「レオ。」

自分の姿に見惚れている所をレオに見られてしまった。恥ずかしい。私は恥ずかしさを誤魔化すように、両手を上げて抱っこを催促した。レオはそれに気付くとすぐに抱き上げてくれた。

「似合っている。」
「ありがとう。レオもカッコいいね。」
「当たり前だ。」

レオも今日はおめかししているようだ。黒を基調とした豪華な詰襟の服に、金色の刺繍がたっぷり入ったマントを羽織っている。髪もオールバックにしており、男前が増している。私の好みではないけど、顔も整っているし地位もあるし、レオってすごくモテそうだ。

「餌の時間だ。」

そう言うと、レオは私を居間のソファに下ろした。そういえば朝ごはんを食べていなかった。前は朝はいつも食べてなかったけど、今は子供の身体だからね、三食きちんと食べた方がいいよね。昨日はお菓子を夕飯にしちゃったし。
テーブルの上にはすでに料理が並んでいた。カリカリベーコンと目玉焼き、チーズの乗ったトースト、サラダ、ポタージュスープ。完璧な朝ごはんだ。量が多いことを除けば。大人の姿でも食べきれないと思う。昨日から思ってたけど、毎回量が多いよね。残すのが心苦しいんだよね。でもこの身体じゃあ大した量は食べれないし…

「もっと少なくていいよ。この半分くらいでも多いくらい。」
「では担当の者に伝えておきますね。」

取り分けてくれたミーアにそうお願いし、私は早速この豪華な朝食を口に入れた。まず空きっ腹にはスープ。胃が温まって食事の受け入れ準備が整ったようだ。ベーコンがカリカリで美味しい。家でやってもここまでちゃんとカリカリにはならないんだよね。目玉焼きも半熟で完璧。チーズも漫画みたいに伸びる。おっと、野菜もちゃんと食べないとね。本当の子供じゃないんだから、ちゃんとバランスよく食べないと。
口を一杯にしてモグモグ食べ続ける私を隣に座ってじっと見つめるレオ。

「うまいか。」
「うん!レオも食べる?」
「リナ様、魔王様は…」
「そうだな。」
「はい、あーん。」

ミーアが何か言いかけていたようだけど、レオが食べる気みたいなのでとりあえずベーコンをフォークに刺してレオの口元に持っていく。レオは一瞬の間を置いて口を開き、ベーコンを食べた。

「おいしい?」
「普通だな。」

魔王様は舌も肥えてらっしゃるようだ。王様だもんね。きっとフォアグラとかしか食べないのだろう。

「チーズトロトロで美味しいよ。」
「伸びるな。」

お、チーズトーストは気に入ったみたいだ。味が、というより伸びるのが面白かったみたい。とりあえずレオの口にポイポイ食べ物を放り込んでいく。残すのももったいないからね。私はもうお腹いっぱいだし。レオは大きな口で次々と料理を平らげていく。あっという間にお皿は全て空になった。

「ごちそうさまでした!」
「で、ではお皿下げますね。」

ミーアの顔がなんか引きつってる。もしかして魔王様を餌付けなんて不敬だったかな。

「ごめんなさい。」
「なぜ謝る。」
「魔王様にこんな事して不敬かなって思って。」
「気にするな。」
「はい。」
「行くぞ。」

レオはナプキンで私の口の周りをゴシゴシと綺麗に拭くと、私を抱いて立ち上がった。

「これから謁見の間に行く。」
「はい。」
「お前は俺の隣で好きに過ごしていればいい。」
「はい。」

部屋を出ると、サムエルが扉の前に待機していた。

「おはようございます。では参りましょう。本日も予定が詰まっております。」
「皆暇だな。」
「魔王様を一目見たいと集まっているのですよ。」
「ふん。」

レオの長い足だと目的地まではあっという間だ。嘘みたいに豪華な扉を騎士が二人がかりで開ける。
部屋の奥には立派な王座と、そこに行くまでの道には赤い絨毯が敷かれている。レオはズカズカと絨毯を踏みながら進み、王座にどかりと座った。

「鎖を。」
「かしこまりました。」

レオの一言で、サムエルは鎖を取り出し私の首輪に取り付けた。それを確認し、レオは私を床に下ろした。

「適当に遊んでいろ。」
「はい。」

素直に返事をしてはみたが、何をして遊べばいいのか見当もつかない。だってここには何もないのだ。王座しかない。王座登りでもすれば良いのか?

「リナ様、遊び道具をお持ちしました。」
「ミーア。」

救世主ミーア登場。私は大きな木箱を持ったミーアに駆け寄った。

「ぐえ」
「リナ様!」

忘れてた。鎖を付けてたんだった。

「あまり遠くに行くな。」
「ゲホ…はい。」

私はすごすごとレオの元に戻って行った。ミーアが王座の隣に木箱を置いた。正直この豪奢な謁見の間には不釣り合いな箱だ。誰も気にしないのだろうか。

「さあ、リナ様。お好きな玩具をお選びください。」
「うーん…」

ゴムボール、ネズミの玩具、誰かの骨、鈴…見事に対犬猫用だ。しかも私は見た目は子供、頭脳は大人。玩具と聞いたらいかがわしいものを思い浮かべるくらいには大人だ。こんな子供も喜ばないような玩具でどう喜べと言うんだ。
私がなかなか玩具を選べないでいると、ミーアが困った顔をして言った。

「お気に召しませんでしたか?何か他のものをお持ちしましょうか。希望はございますか?」
「うーん…」

じゃあゲーム機!なんて言っても通じないだろう。折り紙?あやとり?だめだ、魅力を感じない。よみがえれ私の子供心。

「あ、本!本が読みたい。字が読めないから、ミーア読んで?」
「本でございますか?そんなものでよろしいのですか?」
「うん。昨日レオに魔法見せてもらってすごくカッコよかったの。だから魔法の本が読みたい。」
「ふふ。かしこまりました。それでは何冊か見繕ってまいりますね。」

王座の隣にペタンと座ってミーアを見送る。あれ、謁見の間で本を朗読とかうるさくて怒られるかな。というか不敬か。

「レオ。」
「なんだ。」
「本朗読してたらうるさいかな。別の部屋に行こうか?」
「ここにいろ。遮音結界を張ってやる。」
「ありがとう!」
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