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人間の国に行きます5
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「リナ様も、絶対にあり得ないことだとは思いますが、人間の国ではお一人で出歩かない方がよろしいかと。その愛らしい見た目ではすぐ悪人に目をつけられてしまいます。」
「そうだね、こんなに可愛いもんねえ。」
私は艶々の黒髪を指でクルクルしながら答える。ナルシストだって良いじゃない。だって実際に美幼女だし。街を一人で歩いてたら、きっと私の後ろに誘拐犯達が列をなすよ。
「理由は違いますが、大魔王国でもお一人での行動はお控えくださいね。人間に非友好的な魔族もいますから。」
「うん、ミーアとアロンと一緒にいるよ。」
次はスリチア王国の情報誌を読んでみる。今度行く国だからね、少し勉強しておかないと。
「こちらがスリチア王国王都の街並みですね。」
「へえ、雰囲気は結構似てるね。」
「人間は魔族と違い魔法が使えませんから、電気やガスを使って生活しているそうです。」
「え、電気ガスあるんだ。」
「大魔王国にはありませんが、ほとんどの人間の国では普及していますね。なんでも百年前の勇者達が広めたのだとか。」
「あー、なるほど。それならスリチア王国に行っても不便とかはなさそうだね。」
「はい、文明の遅れなどは特にございませんので問題ないかと。」
その後も何冊か情報誌に目を通したけど、どれも似たような内容で特に新しい情報はなかった。まあ、この世界が古いヨーロッパの雰囲気を持ってるってことだけでも分かって良かったよ。人間の国でも不便なく過ごせるみたいだしね。
写真を見ながらミーアの解説を聞いていただけなので、まだあまり時間は経っていない。これなら余裕で昼前にレオの所に帰れるね。私はミーアに入れてもらった甘いミルクティを飲んで一休みしてから、図書室を後にした。
ーーーーーーーーー
「明日スリチア王国に発つ。」
「え。」
図書室で人間の国の事を調べてから一週間。執務室のソファで寝転がる私に、レオが唐突にそう言った。
「旅支度をしておけ。しばらく滞在する。」
「かしこまりました。」
レオの言葉にミーアが恭しく頭を下げる。一週間前に人間の国に行くぞって言われてから今まで、いつ行くとかの話は出ていなかったからもっと先のことなのかと思ってた。明日って。ポカンと口を開けたままの私の姿は、さぞかしアホっぽかったことだろう。
休憩を取ることにしたのか、レオは執務机からソファに移動し、開いたままの私の口を手で閉めると私を膝に乗せた。あのままだと涎垂れちゃいそうだったもんね。危ない危ない。またレオの一張羅を汚す所だった。いくらペットといえど、お行儀が悪いのはだめだ。なんてったって魔王様のペットなんだから。お上品でないと。
私は姿勢を正して頭上にあるレオの顔を見上げた。
「明日行くの?」
「そう言っている。」
「聞いてない。」
「言わなかったからな。」
「むむ…」
「何か問題でもあるのか?」
「うーん…ない。」
「なら良いではないか。」
ただのペットの私は、旅の準備とか必要ない。そういうのは飼い主が用意してくれるものだし。政治的な仕事があるわけでもないからその類の準備もいらない。うん、何の問題もなかったわ。私は気を取り直してレオに向き直った。
「どうやって行くの?」
「馬車に乗って転移する。」
「それ馬車必要?」
「体裁だな。面倒臭いが。人間には分かりやすく力を見せつける必要があると、サムエルが。」
「ふーん。」
「そうです。大陸の支配者である魔王様が、徒歩で城に入るわけにはいきませんからね。」
確かに、そのまま転移したらなんかシュールかも。昔のヨーロッパっぽい雰囲気に、王朝でしょ。やっぱり馬車の進む道の両脇に兵隊さんが並んでて、ラッパとか吹いて歓迎するんじゃないかな。私はその兵隊でできた道をレオが歩いて進む場面を想像した。その傍らには鎖に繋がれキックボードで進む私。うん、シュール。馬車必要だな、確実に。
「どんな馬車に乗るの?大きい?」
「お前を基準にしたらどんな馬車も大きいだろうな。」
「そうですね、魔王様が6人乗っても余裕がある大きさの馬車を用意してあります。」
なんでもレオを基準にすれば良いってもんじゃないのよ。レオが6人馬車に乗ってる姿を想像しちゃったじゃない。
「まず国境まで転移し正式に入国。その後王都に転移し、そこから馬車で王城まで進みます。」
「馬車は本当にただのパフォーマンスなんだねえ。」
「全く無駄な事だ。城に直接転移すれば良いものを。」
レオはこの周りくどい訪問に不満があるみたい。無駄なことは嫌いだもんね。でも確かに権威を示すのは人間相手には有効かもしれない。ただ力が強いだけの野蛮な種族と誤解されるのは得策ではないだろう。
「誰が行くの?」
「魔王様とリナ様の他には私を筆頭とした臣下数名と近衛騎士数名、後はミーアとアロンが同行します。」
「結構少ないんだね。しばらくってどれくらい向こうにいるの?」
「最低でも一週間。魔王様の存在感を見せつけるのが今回の目的ですからね。魔王様には休暇と思ってゆっくりしていただきたいものです。」
「俺に休暇など必要ない。」
「魔王様には必要なくとも、他の者は必要なのですよ。魔王様がいらっしゃらない間は、この城の者も休暇を取れるのです。」
「ふん。」
そう、確かにレオには休日がない。ここに来てしばらく発つけど、休日らしい休日なんてないんだよね。謁見の日なんて執務に支障をきたすってイライラしてるし。仕事人間なんだろうな。
「レオも少しは休めば良いのに。ずっと仕事してて疲れないの?」
「疲れない。睡眠だってサムエルが煩いからわざわざ毎日取ってやってるんだ。俺は一年くらいなら寝なくても平気だ。」
やっぱ魔族ってスケール違うわあ~。
「リナ様がいらっしゃるまで、魔王様は朝から晩までずっと働き詰めだったのです。リナ様がお側でゴロゴロしていると、魔王様も釣られて休息をとってくれるのでとても助かっていますよ。」
「う、うん…」
役立つのは良いことだよね?ただの穀潰しよりはいいよ、うん。
「睡眠時間も以前は2,3時間だった所が、リナ様と一緒に寝る様になってから8時間にまで伸びました。本当に感謝しているのですよ。」
「前がおかしいだけでしょ。」
「何を言う。睡眠ほど無駄な時間はない。考えてもみろ。毎日8時間寝るとしたら一日の内三分の一を、人生一万年とすると三千年は無駄にしていることになる。」
「三千年…」
だから時間感覚が違うんだよな。あんまり数が大きいと実感湧かないよ。
人間の時間に換算してみようかな。多分百分の一くらいだと思うんだよ。だからさっきの一年寝なくて大丈夫ってやつは「三徹くらいできらあ!」って言うことだね。うん、そう考えると体力のある人だなあって感想に落ち着くな。
「そうだね、こんなに可愛いもんねえ。」
私は艶々の黒髪を指でクルクルしながら答える。ナルシストだって良いじゃない。だって実際に美幼女だし。街を一人で歩いてたら、きっと私の後ろに誘拐犯達が列をなすよ。
「理由は違いますが、大魔王国でもお一人での行動はお控えくださいね。人間に非友好的な魔族もいますから。」
「うん、ミーアとアロンと一緒にいるよ。」
次はスリチア王国の情報誌を読んでみる。今度行く国だからね、少し勉強しておかないと。
「こちらがスリチア王国王都の街並みですね。」
「へえ、雰囲気は結構似てるね。」
「人間は魔族と違い魔法が使えませんから、電気やガスを使って生活しているそうです。」
「え、電気ガスあるんだ。」
「大魔王国にはありませんが、ほとんどの人間の国では普及していますね。なんでも百年前の勇者達が広めたのだとか。」
「あー、なるほど。それならスリチア王国に行っても不便とかはなさそうだね。」
「はい、文明の遅れなどは特にございませんので問題ないかと。」
その後も何冊か情報誌に目を通したけど、どれも似たような内容で特に新しい情報はなかった。まあ、この世界が古いヨーロッパの雰囲気を持ってるってことだけでも分かって良かったよ。人間の国でも不便なく過ごせるみたいだしね。
写真を見ながらミーアの解説を聞いていただけなので、まだあまり時間は経っていない。これなら余裕で昼前にレオの所に帰れるね。私はミーアに入れてもらった甘いミルクティを飲んで一休みしてから、図書室を後にした。
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「明日スリチア王国に発つ。」
「え。」
図書室で人間の国の事を調べてから一週間。執務室のソファで寝転がる私に、レオが唐突にそう言った。
「旅支度をしておけ。しばらく滞在する。」
「かしこまりました。」
レオの言葉にミーアが恭しく頭を下げる。一週間前に人間の国に行くぞって言われてから今まで、いつ行くとかの話は出ていなかったからもっと先のことなのかと思ってた。明日って。ポカンと口を開けたままの私の姿は、さぞかしアホっぽかったことだろう。
休憩を取ることにしたのか、レオは執務机からソファに移動し、開いたままの私の口を手で閉めると私を膝に乗せた。あのままだと涎垂れちゃいそうだったもんね。危ない危ない。またレオの一張羅を汚す所だった。いくらペットといえど、お行儀が悪いのはだめだ。なんてったって魔王様のペットなんだから。お上品でないと。
私は姿勢を正して頭上にあるレオの顔を見上げた。
「明日行くの?」
「そう言っている。」
「聞いてない。」
「言わなかったからな。」
「むむ…」
「何か問題でもあるのか?」
「うーん…ない。」
「なら良いではないか。」
ただのペットの私は、旅の準備とか必要ない。そういうのは飼い主が用意してくれるものだし。政治的な仕事があるわけでもないからその類の準備もいらない。うん、何の問題もなかったわ。私は気を取り直してレオに向き直った。
「どうやって行くの?」
「馬車に乗って転移する。」
「それ馬車必要?」
「体裁だな。面倒臭いが。人間には分かりやすく力を見せつける必要があると、サムエルが。」
「ふーん。」
「そうです。大陸の支配者である魔王様が、徒歩で城に入るわけにはいきませんからね。」
確かに、そのまま転移したらなんかシュールかも。昔のヨーロッパっぽい雰囲気に、王朝でしょ。やっぱり馬車の進む道の両脇に兵隊さんが並んでて、ラッパとか吹いて歓迎するんじゃないかな。私はその兵隊でできた道をレオが歩いて進む場面を想像した。その傍らには鎖に繋がれキックボードで進む私。うん、シュール。馬車必要だな、確実に。
「どんな馬車に乗るの?大きい?」
「お前を基準にしたらどんな馬車も大きいだろうな。」
「そうですね、魔王様が6人乗っても余裕がある大きさの馬車を用意してあります。」
なんでもレオを基準にすれば良いってもんじゃないのよ。レオが6人馬車に乗ってる姿を想像しちゃったじゃない。
「まず国境まで転移し正式に入国。その後王都に転移し、そこから馬車で王城まで進みます。」
「馬車は本当にただのパフォーマンスなんだねえ。」
「全く無駄な事だ。城に直接転移すれば良いものを。」
レオはこの周りくどい訪問に不満があるみたい。無駄なことは嫌いだもんね。でも確かに権威を示すのは人間相手には有効かもしれない。ただ力が強いだけの野蛮な種族と誤解されるのは得策ではないだろう。
「誰が行くの?」
「魔王様とリナ様の他には私を筆頭とした臣下数名と近衛騎士数名、後はミーアとアロンが同行します。」
「結構少ないんだね。しばらくってどれくらい向こうにいるの?」
「最低でも一週間。魔王様の存在感を見せつけるのが今回の目的ですからね。魔王様には休暇と思ってゆっくりしていただきたいものです。」
「俺に休暇など必要ない。」
「魔王様には必要なくとも、他の者は必要なのですよ。魔王様がいらっしゃらない間は、この城の者も休暇を取れるのです。」
「ふん。」
そう、確かにレオには休日がない。ここに来てしばらく発つけど、休日らしい休日なんてないんだよね。謁見の日なんて執務に支障をきたすってイライラしてるし。仕事人間なんだろうな。
「レオも少しは休めば良いのに。ずっと仕事してて疲れないの?」
「疲れない。睡眠だってサムエルが煩いからわざわざ毎日取ってやってるんだ。俺は一年くらいなら寝なくても平気だ。」
やっぱ魔族ってスケール違うわあ~。
「リナ様がいらっしゃるまで、魔王様は朝から晩までずっと働き詰めだったのです。リナ様がお側でゴロゴロしていると、魔王様も釣られて休息をとってくれるのでとても助かっていますよ。」
「う、うん…」
役立つのは良いことだよね?ただの穀潰しよりはいいよ、うん。
「睡眠時間も以前は2,3時間だった所が、リナ様と一緒に寝る様になってから8時間にまで伸びました。本当に感謝しているのですよ。」
「前がおかしいだけでしょ。」
「何を言う。睡眠ほど無駄な時間はない。考えてもみろ。毎日8時間寝るとしたら一日の内三分の一を、人生一万年とすると三千年は無駄にしていることになる。」
「三千年…」
だから時間感覚が違うんだよな。あんまり数が大きいと実感湧かないよ。
人間の時間に換算してみようかな。多分百分の一くらいだと思うんだよ。だからさっきの一年寝なくて大丈夫ってやつは「三徹くらいできらあ!」って言うことだね。うん、そう考えると体力のある人だなあって感想に落ち着くな。
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