誰か私と結婚してくれ。〜婚活の邪魔をしていたのは公爵家の幼馴染みでした〜

こたきんぐ

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第10話

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モイフナー様達が帰った後、私は両親と少し話をしてから自室に戻った。
そして布団へ顔面からダイブし、大きなため息を吐く。


「はぁあああああ……」
「お嬢様、まずはお着替えしましょうか」
「……キャシー、私もうこのまま寝たい」
「ダメですお嬢様。ホラ起きて」
「私さっき5度目のお断り入れられてきたところなんだけど…」


関係ありません、とメイドのキャシーにぴしゃりと言われしぶしぶ立ち上がる。
あとはキャシーや他のメイドのされるがままになり、部屋着に着替えた。
そしてもう一度布団へダイブ。勿論顔面から。


「……疲れた」
「お疲れ様です」


先程私が着ていたドレスを片づけた後、キャシーはこぽこぽこぽと美味しそうな匂いがする紅茶を入れてくれていた。
そういえば、全然水分取っていなかったな。
私はのそのそと起き上がりベッドのフチに腰かける。


「丁度いい温度だと」
「ありがとう」


キャシーから入れてもらった紅茶を受け取り、ふー、と一度だけ息をかけてから口をつける。
うん、いつも通り美味しい。甘くないスコーンによく合うんだろうな、と思ってたらそばに用意してあった。
相変わらず出来るメイドさんである。

でも今は食欲がない、いつもならすぐに手が伸びていたけれど今日は流石に…。


「…お嬢様、元気出してっ!」
「うん、ごめん無理させたね。無理してキャピらなくていいからねキャシー」


普段は表情筋を動かさないキャシーが、私を元気付けるためにか、腕を脇によせ、キャピっとした顔を私に向けてくれる。
可愛いけどね、無理しないで。

キャシーは12年くらい前にこのコルケニア家の屋敷にやって来たメイドだ。
仕事は早いし、忠誠心も強くて、私が10歳の時からずっとそばで身の回りの世話をしてくれてる。


「はあ……」
「お労しや」
「……ほんとに思ってる?」
「もちろんでございます」
「あぁそう」


あまりにも棒読みな忠誠心の強いはずのメイドにジト目を送れば、真っ直ぐな青い目が返ってきたのでそれ以上言うのはやめた。

モイフナー様達は帰る間際にまた深く頭を下げて行かれた。
父も母も私も、もうお気になさらず~な態度で見送り、その後両親に大丈夫かと心配された。

もちろん大丈夫であって、大丈夫ではなかったけれど。
失恋とはまた違った悲しみに、体力と気力を奪われた。

また大きくため息を吐いていると、扉がノックされる。
私はどうぞ、と返して持っていた紅茶をちみっと飲んだ。

誰だろ、と扉に目をやれば、同じ顔が2つ。
ニヤニヤした顔つきで入ってきた。


「「姉ちゃんまた振られたって?」」
「振られっ、ては、ない!」


振られるってのは、私に好意があった場合であって……。
ブツブツ言う私に容赦なく、えーー、と笑いながら近づいてくる双子。


「何しに来たの、笑いに来たの?」
「「うん」」
「アンタ達はほんといつも正直者ね」


相変わらず腹の立つ弟達である。
2人は私の両隣にそれぞれ座り、足をプラプラさせていた。
そんな2人を見たキャシーは、少し長居するのだろうと察してか、さっさと2人分の紅茶を用意していた。


「ま、笑いに来たのもあるけど、ルカが姉ちゃん心配してたから来たんだよ」
「違うだろ、ロキが言ったんだ。5回も断られてて流石に泣いてるんじゃないかって」
「違うルカが」
「違うロキが」
「わぁった、わかったから、ありがとう心配してくれて。だから私を挟んで喧嘩しないで」


気がつけばバチっていた双子をなだめ、頭を撫でる。
2人はむっとした顔をしてから、キャシーが用意した紅茶を同時に一気飲みした。

私の弟であるルカとロキ。
顔がそっくりで、仕草もそっくり。
皆が見分けがつくように前髪の分け目をルカは左側、ロキは右側。服もルカは黒のシャツ、ロキは白のシャツを基本的に着ている。
時々…、というか週に2回くらいお互いの特徴を交換して周りを騙して遊んでるけど…ほんといい趣味である。


「……姉ちゃんさぁ、別に婚活とかしなくてもよくね?」
「は、なんで?…お姉ちゃんがお嫁に行っちゃうのが寂しいの?」
「そ、そんなんじゃないっての!自意識過剰すぎ!」
「じゃあ何さ」
「だってさぁ、」


ルカのツンデレのデレ部分が出てきたのかと期待したがそうではなかったみたい。
続く言葉を待ったが、また扉のノックが叩かれ会話が途切れる。
誰かと思えば執事長のリカードで、なんでも父が私を呼んでいると。


「私お父様のところ行ってくるから、キャシーが用意してくれたスコーン食べていいよ」
「「わかった」」


2人とキャシーを自分の部屋に残し、私は父のいる執務室へリカードと向かった。













「……ほんと、別に婚活なんてしなくたって優良物件がすぐソコにいんのにな」
「なんでソコに行こうとしないんだろね。あんなの、姉ちゃんのこと好きなの丸わかりじゃん」



部屋に残るルカとロキは、置かれたスコーンをむしゃりと齧る。
それからキャシーに再度入れてもらったあっさりした紅茶を、また同時に1口ごくんと飲み込んだ。



「まぁ面倒臭い男だしな」
「だいぶね。回りくどいし。でも姉ちゃんしかあんな面倒な男扱えないよ」
「「はーあ、早くくっつけばいいのに」」



ハモる双子の言葉に、キャシーも自然と頷いていた。
けれど余計な助言は誰もラティには告げない。

理由は人の好意をペラペラと本人に伝えるなんて……みたいな良心的なものでは無い。



「ま、面白いし本人が気づくまで言わないでおくのがいっか」
「うん、もちろん」



面白いか面白くないか。

どうせ最後にラティの隣にいるのはあの男なんだから、今くらい鈍感なラティの様子を楽しんでおかないと。

そう思う人間しか周りにいないため、ラティがあの男……レイの好意に気づくのはもっと先になるのである。



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