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暗雲

第40話 スライムの効能(後)

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「そうか……分かった。なら、さっき話した通りに」

「……ぁ、……き……?」

 報告を受けて追加の指示を出していると、背後から掠れた声が聞こえた。
 ドアを閉めてベッドまで戻り、ぼんやりと目を開いている男の顔を覗き込む。

「起きたのか、旭陽。体の調子はどうだ?」

 額に張り付いている黒髪を撫で上げれば、投げ出されている腕が力なくシーツを引っ掻いた。
 触れた肌は汗ばんで、発熱しているのかと思うほどに熱い。

「っぁ……つ、い……」

 喘ぐように呻いた声も、体にこもった熱を訴える言葉だ。

「ずっと咥え込んだままだからな」

 昨日のことを覚えているのかも定かではない、まだ半分以上夢の中に沈んだままの男に笑いかける。


 旭陽が意識を失ってから一晩が経過して、今は昼前だ。
 その間、桃紅色のスライムは旭陽のナカでじっと大人しくしていた。
 勿論勝手な行為ではなく、そうするように命じた。

 俺の牙より控えめな効能の媚薬に長時間浸せば、じっくり体を慣らせるのではと思ったからだ。
 今でも既に、元の体から比べると相当作り変えることに成功している。
 昨日実感できて感動したし、とても嬉しいとも感じている。

 でもやっぱり噛まずに挿入しようと思えば、どう頑張っても裂けてしまうだろう。
 俺が望んで行うのはともかく、毎回というのはどうにか避けたい。

「く、わえ……?」

 ペニスとアナルの両方に、一晩かけて媚薬を浸透させた。
 まだ自分の体がどうなっているのか、夢現の旭陽は気付いていない。

 水滴を浮かべた裸体が真っ赤に色付いているのも、自分がどれだけ淫靡な色を浮かべて俺を見上げているのかも。
 本人だけが自覚していない。

「そう……ここに、入ってるだろ」

 しっとりとした肌に手を触れさせ、何もせずとも微かながら震えている腹部を撫でた。

「ッあ、っ!?」

 驚きの嬌声と共に、旭陽の体が揺れる。
 触れられただけでも快感が走ったことで、ようやく自分の状態に気付いたらしかった。

「ッぁ、あっ? ヒッ、っな、なにっ……ッま……さ、かッ、おまえ……っ!」

 気付いた男が反射的に後孔を締め、静かだった場所の動きに反応したスライムが体を揺らす。
 ペニスとアナルの中で蠢く存在に、低い声を上擦らせて旭陽が目を見開いた。

 信じられないと視線で詰られて、つい苦笑してしまう。
 旭陽にそんな目で見られる日がくるとは思わなかったから、何とも不思議な気分だ。

「お前が早々に気絶しちゃうからだろ?」

 俺が飛ばしすぎた所為だと自覚しているが、わざと詰ってやる。
 反論する余裕がなさそうなのを良いことに、腕を掴んで上半身を引き起こさせた。

「ッあ、んンぁ……っ」

 肌が擦れただけでも甘い声を上げている男の背中を、自分の胸に押し付けさせる。
 昨日と同じ姿勢だ。
 旭陽が鋭く息を飲み込んだ。

「昨日の続き、シような」
「ッぁ、ヤ、ゃだっ……」

 項に軽く吸い付きながら声をかける。
 思いがけず、否定の言葉が返ってきた。

「――」

 一瞬、自分でも驚くほどにショックだった。
 何故だろうと咄嗟に考える。
 感じすぎて嫌というのはよくあっても、行為そのものを拒否されたことはなかったのだと今更気付いた。

 ……嬉しい事実のはずなのに。こんな形で気付きたくなかった。
 もやっとした気持ちで、褐色の胸板でツンと尖っている突起を引っ掻く。

「ッぁ、アッ」
 膝が跳ねるのを見ながら、前立腺を包み込んで振動を与える。

「ッっあ゛ひィッ!」
 がくっ! と大きく腰が揺れた。

 震える手が、俺の腕を掴んで制止しようとしてきた。
 随分と体を伸ばせるようになったスライムに念じて命じ、旭陽の両腕に絡み付かせる。
 頭上に腕を持ち上げさせ、下ろせないように固定させた。

「ッゃ、め、っやだ、あきらぁ……ッ!」

 ぶるぶると振られる頭は意図的に無視する。
 言葉を奪ってやりたいと思えば、指先が僅かに痺れる感覚がした。
 あれ?
 これ、何か。

「ア゛ぁああ゛ぁあッ!」

 バチッ!

 何かが迸る感覚がしたと思えば、旭陽の体が激しく跳ね上がった。

「旭陽?」

 顎を掬って、ぶるぶると震えている顔を上向かせる。
 大きく見開かれた瞳が、何が起こったのか分からずにふらふらと揺れている。

「ッヒ゛ぁアアああッ! っぁ゛ッひィっ! あっア゛ッきィッゃあア……!」

 パチ、バチ、と何かが弾けるような衝撃が伝わってくる。
 その度に大柄な体がしなって、切羽詰った悲鳴が溢れた。

 どくどくと濁流のように吐き出される白濁に喜んだ存在が、また精嚢に雪崩れ込んでいく。
 小さな器官の璧に身を擦り付け、精液を作り出す場所を内側から作り変えていこうとした。

「がッっぁ゛ぁあう! ひくッ、ぁ゛あーッ!」

 バチンッ! と一層大きな衝動が、旭陽の前と後ろの二箇所で弾ける。
 ぶわりと涙をせり上がらせた男の全身が、本人の意思を超えた動きで跳ね回った。

 腕をスライムに、腰を俺に固定されている体はどうにも衝撃を逃せない。
 それでも本能的に逃れようとして、四肢と腰が強い力で暴れてくる。

「ッぁひいっ!」
 指をアナルに押し込んでみれば、指先にばちりと衝撃が伝わってきた。

「これ……電気か?」
 俺の言葉に反応したのか、また旭陽の中で衝撃が生まれる。

「ッヒぅぐっ! ぁ゛、ぁアアーーッ!」

 バチ、バチッ、と電流が旭陽の前と後ろで何度も弾ける。
 その度に、だらだらと涙と唾液を溢れさせて男が腰を振り乱した。

「旭陽、痛くないのか? 凄い感じ方。ずっとイってる……」

 あまりに暴れるものだから、顎を掴んでいた手が外れてしまった。
 もう一度掴み直し、首を俺のほうへ捻らせて後ろから唇を塞ぐ。

「ッぅ゛、んンぅぅう……ッ!」

 いつもよりかなり早く焦点を失っている瞳が微かに動き、とろりと眦を垂らした。
 深く口を塞ぎ、伸ばした舌で喉まで舐め回す。

「ン゛ぐッ、ィうウ゛ーーッ!」

 がく、と腰を痙攣させた男がスライムに透明の液体を吐き出している。
 随分と気持ち良さそうだ。

「ッぅ゛、ッぁ、ゃ゛ッぅ、ンー……ッ」

 乳首を摘み上げてみれば、微かに首を振って抵抗してくる。

 まだ拒んでくるんだろうか。
 顎を掴み直そうとすれば、手元が狂って離してしまった。

「ゃ゛、アッ! ぁ゛、き……ッ!」

 唇に隙間ができて、旭陽の嫌がる悲鳴が微かに漏れ聞こえる。
 また塞いでしまおうと手を添えれば、弱い力で首を振ってきた。

「ャ、っだ、ぁ……ッら、――ぁ、んで、ぃれ……っ!」

 聞くつもりはなかった。でも思った内容とは違う泣き声が聞こえてきて、思わず視線を向ける。
 ぼとぼとと大粒の涙を落とす黄金は、焦点を失いながらも確かに俺を見ていた。

「ゃ、あ゛ッ……ぁきっ、……な、……い、と、ゃ……だ……ァッ……!」

 ひく、としゃくり上げる声が鼓膜を擽ってくる。

「ひっ……ぅ゛、ぅうー……っぃれ……ろ、よぉ……っ」

 聞き取りづらい本気の泣き声に混じって、命令の形を装った懇願が旭陽の唇から零れ落ちた。
 ちか、と視界が瞬く。

「っ……!」

 跡が残るだけの力で腰を掴んで、昨日からずっと焦らされ続けていた硬いモノを押し付ける。
 一晩中蕩けさせられていた場所は、触れさせただけで先端に吸い付いてきた。

 ぐっと唇を引き締め、一息に根元まで捻じ込んだ。
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