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旭陽生誕7 全部、おれのもの

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「ッ゛……っ……」
「旭陽、」

 体が碌に反応できなくなってきても、晃に流れ込んでいる力が途切れるまでは完全に意識を飛ばすわけにはいかなかった。
 痙攣も弱くなっているのに、それでも何度も噛んでくれと強請るおれに晃はその度困って制止しようとしてきた。

 強烈な絶頂で強制的に起こされりゃ、暫くは失神もできなくなる。
 戸惑う晃を促して、何度新たに噛ませたんだったか。
 やっと魂の繋がりが完了したのを感じると同時に、漸く完全に気を失えた。

 反応がなくなったおれを連れ帰った晃は、数日おれが目覚めないことを覚悟していたらしい。
 夜、微かに意識を取り戻したおれに驚いた様子で顔を覗き込んできた。

「旭陽、大丈夫か?」
「ッァ゛……っ!」

 頬に触れられた瞬間、甘い絶頂が全身を貫く。
 だがもう悶えるだけの力は残っちゃいない。
 僅かに腰が震え、力尽きているペニスと熱いアナルが疼くだけだ。

「あれだけ止めたのに、何度ももっと噛んでって煽ってくるからだぞ。今日ばっかりは旭陽が悪いんだからな」
 だから無茶苦茶したのは謝らない、と晃が膨れ面でぼやく。

 勿論、謝らせようなんざ思ってねえよ。
 おれがめちゃくちゃにされたがったんだから。
 晃以外から齎される熱なんざ、不愉快でしゃあねえからな。晃の熱で全部塗り潰したかった。

 ……けど、不思議には思ってる。
 何でいきなり今日あそこに行きたがったのか。
 見た限り、最初から今日って決めてたみてえだったしな。

「……旭陽、もしかして本当に今日が何の日か覚えてないのか?」
 疑問を視線から感じ取ったのか、拗ねていた晃が段々と信じがたいと言いたげな視線になっていった。

 今日?
 今日って、11月――ああ、まだ辛うじて日付は超えてなさそうだな。
 なら、今日は11月11日だ。…………ん、何かあった気がするな。
 晃が気にする日……

「――旭陽、本気で自分の誕生日忘れてるのか!?」

 おれに関することか?
 そう考えていると、目を見開いた晃がベッドから腰を浮かせた。

 おれの誕生日。
 ……ああ、そうか。そういやそうだった。
 そうだ。おれの生まれた日付だったな、今日は。

「わ、わすれてたのか……本気で……」

 納得していると、晃ががっくりと肩を落とす。
 本気で落ち込んでいる様子だ。

 望み通り、おれのこと好きにしたくせに?
 何が気に入らないのかと眉を寄せれば、晃が力なく呟いた。

「楽しみにしてたのに……旭陽に、欲しがられるの…………」
 欲しがられる。……おれに?

「さ……ぃ、そ……し、て……ほしか、った、のか……」

 意識を失っている間に、何度か水を飲まされていたらしい。
 どうにか搾り出した声は、思ったよりもまともな音になった。
 俯いていた晃が、恨めしげな視線を睨み上げてくる。

「当たり前だろ……俺が特別な証みたいで、嬉しかったのに」

 言い終わった後で、赤くなって口を押さえている。
 一生言うつもりなかったのに、ショックでうっかり零れたって顔に書いてあるぞ。

 あん? あれか、誕生日プレゼントとかってやつか。
 ああ。言われてみりゃ、晃以外に催促したことねえな。

 そりゃあな。晃以外の手から、タンジョウビイワイなんざかったりいもん受け取ったことねえし。
 そもそも地球って星は、元から自分の居場所じゃねえと感じ続けていた。
 そんな場所で生誕祝いなんざ、皮肉にしか取れねえだろ。

 晃は、おれが手に入れると決めた唯一だ。
 だから晃がおれに見つかった祝いとして、全部おれのもんになるまでのカウントダウンとして、毎年おれの為に晃が選んだ物を欲していただけだ。

 今年は何で忘れてたかって……晃が、全部おれのもんになったから。
 もう楽しみをカウントする必要がなくなったから、忘れてた。

 興味を失ったってわけじゃねえ。
 ただ――余計なもんが巣食ってねえ、おれだけの晃に欲される毎日が予想よりもずっと愉快で堪んねえから。
 目の前のおまえが、可愛くて堪んねえから。
 だから、カウントする為だけの日付なんざ頭から抜け落ちてた。

「お……ま、え……さぃ、そ……く、されね、と……とくべつじゃ、ねえの……」

 悩ませたままも面白そうなんだが。
 これ、晃が自覚してねえのも気に入らねえし。
 重い舌を動かして、また落ち込み始めた男に声をかける。

 え、と微かに晃が呟いた。
 丸くなった丁子染を見ながら、掠れた声に不満を乗せる。

「お、れの…………とくべつ、じゃ、ねえの……あき、らぁ」

 おまえはおれのものだろうが。
 おれを所有することを赦した、おれの唯一じゃねえのか。

「…………うん。……そうだな。俺は、お前の特別だ」

 ぱちぱちと何度か瞬いた後、晃が双眸をしならせた。
 目ぇ潤ませるようなことじゃねえだろ。当たり前のことを今更言わせてんじゃねえよ。
 不満を視線に込めれば、白い頬が緩んでいく。

「ごめん、旭陽」

 ……嬉しそうな顔しやがって。
 まあいい。体はキツいが、過ごし方は悪くなかった。

 目を閉じようとすれば、晃が上に覆い被さってくる。

「ん……」
「旭陽、」

 薄らと目を開く。
 頬を染めて、蕩けた瞳の男が微笑んでいた。

「生まれてきてくれて、おれと出逢ってくれて、ありがとう。旭陽」

 ――ハッ。
 最初からそう言っとけっての。

「合格」

 囁いて、少し軽くなった体を持ち上げる。
 笑っている唇に噛み付くようなキスを押し付ければ、晃が幸せそうな笑い声を零した。
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