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旭陽生誕8 腕のなかの、幸い
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「ッは、ァ……っふ……ッ、ぁ……っぁ゛、ぁ……ッ」
全身を巡る高熱に、薄らと意識が浮上する。
さっきからぼんやりと意識が戻っては、目が覚めきる前にまた沈むことを繰り返している。
あつい。
全身の震えが止まんねえ。
殆ど一日中イき続けてた体が、絶頂癖じみた状態になっていつまでも収まらねえ。
晃の声を聞いてる間はそこまでじゃなかったんだが。
晃が寝てから徐々に疼きが酷くなり、甘イキを繰り返し始めた。
今はイきっ放しに近い。
つっても絶頂の残骸に似た、甘ったるいばっかの軽いイき方だ。
ずっと終わんねえだけで、いつもの快感とは比べもんにならねえ程度の淡さでしかない。
だから耐え難いってわけじゃねえ。
ただ半端すぎて意識を飛ばせるほどじゃなく、いつまでもまともな眠りに沈めないってだけで。
疲弊している体は休息を要求している。
だがイってる最中に、失神以外で寝れるほど鈍い体でもねえ。
「っぁ、ん、ンぁ……っ、……ぁ、き、……ッ」
いつもなら、おれが悶えてりゃ晃はどれだけ熟睡してても飛び起きる。
けど今日ばかりは、まず起きないのは分かっていた。
おれが殆ど全ての衝撃を受け止めたとはいえ、魂の本質が塗り変わったのは晃のほうだ。
体力やら精神力やら、表面に出る部分以外が酷く疲弊したはず。
現に、寝落ちてからは寝息すら聞こえないほどの深い熟睡に沈んでいる。
おれを抱き締めて寝ている男の髪に、熱い頬を擦り寄せる。
いつの間にかまた流れ出していた涙が、飴色に何滴も付着した。
反応がないのを承知の上で、晃の名前を震える喉から絞り出す。
「ん……あ、さひ……、……」
反応はない、はずだったのに。
死んだように眠り続けていた男が、俄に呼吸の音を零した。
少し辿々しい、甘い声で呼んでくる。
腕が小さな反応を示して、おれを抱き締めている手に力が籠もった。
ゆっくりと髪に指が絡んできて、後頭部を撫でられる。
まさか、起きたのか?
そう思って顔を覗き込んでも、瞼は固く閉じられている。
……寝てる、な。
寝言か?
直前まで寝息すら立ててなかったのに?
「あきら……」
「ぁ、さひ…………」
顔を近付けて、もう一度呼んでみた。
唇がふにゃりと綻び、幸せそうに微笑む。
柔らかく髪が撫でられて、顔が僅かに動いた。
額が微かに触れ合う。
晃の顔が上向いて、鼻先に唇が触れてきた。
「す、き…………」
不明瞭な声で呟き、また動かなくなる。
……そういうの、あざといって言うんじゃねえのか。
心の中で呟いてみても、勿論晃は起きない。
自分の唇から締まりがなくなっていくのが分かった。
寝ててもおれのことしか頭にねえんだよな、晃は。
ほんと、かわいい。
なあ、分かってるんだぜ。
おまえがおれの生まれた日に、ゆりかごに行きたがった理由。
おれが地球に戻りたがってねえか、晃はまだ不安なんだろ。
おれが生まれた日に、もう絶対に戻れない決定打をおれへ打ち込みたかった。
おれが生まれた日に、おれを地球の全てから確実に奪い取りたかった。
そんなとこだろ?
生だけじゃなく、死の先も離さない。還してやらない。
おれの全部を欲しがる晃の執着は、そこまで達していたらしい。
魔王の魂は、死ねば自動的にゆりかごに引かれて収まる。
伴侶の魂も、魔王の伴侶となった瞬間から同じ性質を帯びるようになる。
それはゆりかごの前で体液を交わした時、魔王と伴侶の魂が結び付くからだ。
生きている間も、死んでからも、決して解けることはない繋がり。
晃が欲した、死の先も確約された拘束。
……ばかだなァ。捕まったのはおまえのほうだってのに。
誕生日なんざ、何の意味もねえ日付だと思ってたけどよ。
こんな心地良い贈り物を――晃自身を、丁寧に差し出してくるなんざ。
流石に嬉しいって感じちまうな。
重い腕を持ち上げて、飴色に引っ掛かっている白い花弁に触れる。
散々動いたはずだが、おれが髪に差した時から殆ど動いていない。
当然だ。飾る時、魔力で補強したからな。
穏やかな寝息を立て始めた男の髪系へ、無数の白が静かに絡み付いている。
カラスウリ。
夜にしか開かねえ、一部の昆虫にしか蜜を吸わせねえ花。
植物に興味はねえが、これは一度晃に飾ってみてやりたかった。
ああ。悪くねえな、やっぱ。
改めて見れば、満足が胸に広がった。
「っぁ……ァッ、ふ……っ」
身動ぐたびに、快感の波が大きくなる。
何度も震える足でシーツを掻きながら、両腕を持ち上げて晃の頭を抱き寄せた。
「ん…………」
あさひ、と晃がふやけた声で呟く。
「ッヒ、ぁあっ!」
不意に大きな波が体を貫いて、雄からどろりと透明の体液が溢れた。
「っぁ、あ……っ?」
見下ろせば、抱き寄せた晃の頭が胸元に触れている。
睡眠の中でもおれの体温に気付いた晃が、顔を上げて慣れた感触の突起に唇を押し当てていた。
「ッひっあ、アあっ! あッぁうっあッ! ヒぃっ!」
深夜からずっと甘イキし続けていた体は、乳首に吸い付かれるだけで容易く強い絶頂に陥った。
弱い力で舌を押し付けられるだけで、どろどろと薄い精が流れ出していく。
「ッぁ゛、ぁッき、ッひヤぅうー……ッ!」
ガクガクと全身が震えて止まらない。
視界が白く染まっていく。
晃の頭を抱えている腕に力を込め、飴色に顔を寄せた。
背中を抱いてきている晃の腕も、応えるように少し力を増す。
ああ、やっと意識が飛ばせそうだ。
溢れ出す涙を晃に押し付けながら、ほっと息を吐く。
悪くない一日だった。
来年は、どう祝ってくれんだろうな。
次を楽しみにするなんざ、初めてだ。
「ッひ、ぁ、あ゛ッアっ! ッぁ、ぁっ……ん……ッ――」
何処か浮つく心地を抱きながら、ふつりと意識が途切れた。
おやすみ、晃。
起きたら褒めてやるよ。
おまえはいつも、おれの知らねえ感情を運んでくる。
その度にまた恋してるって、晃は知らねえだろうけど。
◇◇◇
カラスウリ:花言葉「よき便り」「誠実」
(11月11日誕生花)
全身を巡る高熱に、薄らと意識が浮上する。
さっきからぼんやりと意識が戻っては、目が覚めきる前にまた沈むことを繰り返している。
あつい。
全身の震えが止まんねえ。
殆ど一日中イき続けてた体が、絶頂癖じみた状態になっていつまでも収まらねえ。
晃の声を聞いてる間はそこまでじゃなかったんだが。
晃が寝てから徐々に疼きが酷くなり、甘イキを繰り返し始めた。
今はイきっ放しに近い。
つっても絶頂の残骸に似た、甘ったるいばっかの軽いイき方だ。
ずっと終わんねえだけで、いつもの快感とは比べもんにならねえ程度の淡さでしかない。
だから耐え難いってわけじゃねえ。
ただ半端すぎて意識を飛ばせるほどじゃなく、いつまでもまともな眠りに沈めないってだけで。
疲弊している体は休息を要求している。
だがイってる最中に、失神以外で寝れるほど鈍い体でもねえ。
「っぁ、ん、ンぁ……っ、……ぁ、き、……ッ」
いつもなら、おれが悶えてりゃ晃はどれだけ熟睡してても飛び起きる。
けど今日ばかりは、まず起きないのは分かっていた。
おれが殆ど全ての衝撃を受け止めたとはいえ、魂の本質が塗り変わったのは晃のほうだ。
体力やら精神力やら、表面に出る部分以外が酷く疲弊したはず。
現に、寝落ちてからは寝息すら聞こえないほどの深い熟睡に沈んでいる。
おれを抱き締めて寝ている男の髪に、熱い頬を擦り寄せる。
いつの間にかまた流れ出していた涙が、飴色に何滴も付着した。
反応がないのを承知の上で、晃の名前を震える喉から絞り出す。
「ん……あ、さひ……、……」
反応はない、はずだったのに。
死んだように眠り続けていた男が、俄に呼吸の音を零した。
少し辿々しい、甘い声で呼んでくる。
腕が小さな反応を示して、おれを抱き締めている手に力が籠もった。
ゆっくりと髪に指が絡んできて、後頭部を撫でられる。
まさか、起きたのか?
そう思って顔を覗き込んでも、瞼は固く閉じられている。
……寝てる、な。
寝言か?
直前まで寝息すら立ててなかったのに?
「あきら……」
「ぁ、さひ…………」
顔を近付けて、もう一度呼んでみた。
唇がふにゃりと綻び、幸せそうに微笑む。
柔らかく髪が撫でられて、顔が僅かに動いた。
額が微かに触れ合う。
晃の顔が上向いて、鼻先に唇が触れてきた。
「す、き…………」
不明瞭な声で呟き、また動かなくなる。
……そういうの、あざといって言うんじゃねえのか。
心の中で呟いてみても、勿論晃は起きない。
自分の唇から締まりがなくなっていくのが分かった。
寝ててもおれのことしか頭にねえんだよな、晃は。
ほんと、かわいい。
なあ、分かってるんだぜ。
おまえがおれの生まれた日に、ゆりかごに行きたがった理由。
おれが地球に戻りたがってねえか、晃はまだ不安なんだろ。
おれが生まれた日に、もう絶対に戻れない決定打をおれへ打ち込みたかった。
おれが生まれた日に、おれを地球の全てから確実に奪い取りたかった。
そんなとこだろ?
生だけじゃなく、死の先も離さない。還してやらない。
おれの全部を欲しがる晃の執着は、そこまで達していたらしい。
魔王の魂は、死ねば自動的にゆりかごに引かれて収まる。
伴侶の魂も、魔王の伴侶となった瞬間から同じ性質を帯びるようになる。
それはゆりかごの前で体液を交わした時、魔王と伴侶の魂が結び付くからだ。
生きている間も、死んでからも、決して解けることはない繋がり。
晃が欲した、死の先も確約された拘束。
……ばかだなァ。捕まったのはおまえのほうだってのに。
誕生日なんざ、何の意味もねえ日付だと思ってたけどよ。
こんな心地良い贈り物を――晃自身を、丁寧に差し出してくるなんざ。
流石に嬉しいって感じちまうな。
重い腕を持ち上げて、飴色に引っ掛かっている白い花弁に触れる。
散々動いたはずだが、おれが髪に差した時から殆ど動いていない。
当然だ。飾る時、魔力で補強したからな。
穏やかな寝息を立て始めた男の髪系へ、無数の白が静かに絡み付いている。
カラスウリ。
夜にしか開かねえ、一部の昆虫にしか蜜を吸わせねえ花。
植物に興味はねえが、これは一度晃に飾ってみてやりたかった。
ああ。悪くねえな、やっぱ。
改めて見れば、満足が胸に広がった。
「っぁ……ァッ、ふ……っ」
身動ぐたびに、快感の波が大きくなる。
何度も震える足でシーツを掻きながら、両腕を持ち上げて晃の頭を抱き寄せた。
「ん…………」
あさひ、と晃がふやけた声で呟く。
「ッヒ、ぁあっ!」
不意に大きな波が体を貫いて、雄からどろりと透明の体液が溢れた。
「っぁ、あ……っ?」
見下ろせば、抱き寄せた晃の頭が胸元に触れている。
睡眠の中でもおれの体温に気付いた晃が、顔を上げて慣れた感触の突起に唇を押し当てていた。
「ッひっあ、アあっ! あッぁうっあッ! ヒぃっ!」
深夜からずっと甘イキし続けていた体は、乳首に吸い付かれるだけで容易く強い絶頂に陥った。
弱い力で舌を押し付けられるだけで、どろどろと薄い精が流れ出していく。
「ッぁ゛、ぁッき、ッひヤぅうー……ッ!」
ガクガクと全身が震えて止まらない。
視界が白く染まっていく。
晃の頭を抱えている腕に力を込め、飴色に顔を寄せた。
背中を抱いてきている晃の腕も、応えるように少し力を増す。
ああ、やっと意識が飛ばせそうだ。
溢れ出す涙を晃に押し付けながら、ほっと息を吐く。
悪くない一日だった。
来年は、どう祝ってくれんだろうな。
次を楽しみにするなんざ、初めてだ。
「ッひ、ぁ、あ゛ッアっ! ッぁ、ぁっ……ん……ッ――」
何処か浮つく心地を抱きながら、ふつりと意識が途切れた。
おやすみ、晃。
起きたら褒めてやるよ。
おまえはいつも、おれの知らねえ感情を運んでくる。
その度にまた恋してるって、晃は知らねえだろうけど。
◇◇◇
カラスウリ:花言葉「よき便り」「誠実」
(11月11日誕生花)
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