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第二章 少年期編
ダンジョンの主 後編
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「………やったっすか?」
イヴからの治療を受けて前線に戻ってきたルゥが、イヴも引き連れ、ひょこりと顔を出しながら問うてくる。
それフラグ、とルカも思わず彼女に言いかけたが、誰にもそのネタはわからないだろうと言葉を引っ込めた。
それに先程の魔法の手ごたえから、まず復活することはないだろうと思っていたルカは軽く頷くと、モンスターに一番近い位置にいたルドルフの元まで歩いて行った。
「終わり、でいいんだよね?」
「はい、間違いなく」
いつ対象が動き出しても良いように構えていたルドルフも、モンスターの絶命を確認し、構えを解いた。
その言葉が合図となったのか、ルカの頭の中でもレベルアップの音声が響く。
ようやくそれでダンジョンの主を討伐したという実感を得たルカは、得物を持った腕を天に掲げて、声を上げようとした。
「よっ…!」
パンパカパ~~~~~ン!!!
よっしゃあ!と張り上げようとした声は、周囲に突如として響いたチープなファンファーレの音にかき消された。
ぽかんとして、腕を上げたままの姿勢で固まるルカ。
しかし、直ぐにどういう状況か理解したのか、ふるふると震えながら天を仰いだ。
「やっぱりこのダンジョンは嫌いだ…」
どこかにいるかも知れないこのダンジョンのマスターに届けと、恨みがましい声音だった。
『ダンジョン踏破、おめでとうございます』
「「うわっ!!!」」
そうこうしている間に、今度は機械的な音声が広間に響き渡った。
予想していなかった事態に、ルカとルゥが揃って驚いて頭を跳ね上げた。
対してルドルフはこうなるのが分かっていたのか落ち着いた様子で、イヴはいつも通りの無表情を保ったまま、興味深げにこの状況を観察していた。
『皆様………どうやらこのダンジョンは初踏破のようですね。それでは特典を授与します』
驚くルカ達をよそに、勝手に話を進めていく機械音声。
パンパカパパパパ~ンとまたチープなファンファーレが響いたと思うと、それぞれの目の前に何かが浮かび上がっていた。
ルカの前には杖、ルドルフの前には羽、ルウの前には靴、イヴの前にはペンダントだった。
ルドルフ以外は初めての体験にどうすれば良いか分かっていない様子だったが、彼が迷いなく目の前の羽に手を伸ばすのに習って、他の三人もダンジョンからの特典を手に取った。
《雷鳴の杖 を手に入れました》
《帰還の羽 を手に入れました》
《綿毛の靴 を手に入れました》
《睡蓮のしずく を手に入れました》
それぞれの頭の中に響くアナウンス。
ルドルフについては自らの手の中にあるものがなんであるか分かっていたため、大した驚きは無いようであったが、ルカを始めとした他の三人については、ダンジョン踏破の特典を得るのもさることながら、それぞれが手にしたものが初めて見るものであったため、興味津々な様子だった。
「僕の杖は、魔法威力が10%上昇するのと、ごく低確率で雷の攻撃が追加されるってあるね」
「僕のは履くと足音がほとんどなくなるってあるっす。良いもんっすね!」
「私は毒無効化」
ルカ、ルゥ、イヴとそれぞれが特典の能力を口にする。
「ん~~~?なんかこれって個人の能力に合わせてる?」
「その通りです」
アイテムの能力の偏り方に、個人の能力の特徴が関係しているのではないかと思ったルカが、ルドルフの方に視線を向ける。
それに対して彼も直ぐに頷いた。
「特性にあったアイテムっていうのは、嬉しいは嬉しいんだけど………」
「気味が悪いですか?」
「うん………」
ルカはこのダンジョンとはとことん相性が悪いようだった。
使いやすいアイテムが都合よく手に入ったというのは良いのかも知れないが、かえって都合が良すぎて、それこそ一部始終をダンジョンマスターなるものに見られていたのではないか。
そんな気がして仕方がなかったのだ。
「まあ、考えても仕方ないか」
「はい」
ルドルフが落ち着いて返事をしていることからしても、このような現象はダンジョンにおいては常のことなのであろう。
そうルカは結論付けると、気持ちを切り替えた。
そして振り返った先には、いつの間にか開いた扉と、その先の通路が見えていた。
「問題なく帰れそうだね。じゃあ、帰ろうか!」
一仕事終えたような表情で、少し大きめに発せられたルカの声。
それに応じた三人の声が、主のいなくなった広間に木霊するように響き渡ったのだった。
イヴからの治療を受けて前線に戻ってきたルゥが、イヴも引き連れ、ひょこりと顔を出しながら問うてくる。
それフラグ、とルカも思わず彼女に言いかけたが、誰にもそのネタはわからないだろうと言葉を引っ込めた。
それに先程の魔法の手ごたえから、まず復活することはないだろうと思っていたルカは軽く頷くと、モンスターに一番近い位置にいたルドルフの元まで歩いて行った。
「終わり、でいいんだよね?」
「はい、間違いなく」
いつ対象が動き出しても良いように構えていたルドルフも、モンスターの絶命を確認し、構えを解いた。
その言葉が合図となったのか、ルカの頭の中でもレベルアップの音声が響く。
ようやくそれでダンジョンの主を討伐したという実感を得たルカは、得物を持った腕を天に掲げて、声を上げようとした。
「よっ…!」
パンパカパ~~~~~ン!!!
よっしゃあ!と張り上げようとした声は、周囲に突如として響いたチープなファンファーレの音にかき消された。
ぽかんとして、腕を上げたままの姿勢で固まるルカ。
しかし、直ぐにどういう状況か理解したのか、ふるふると震えながら天を仰いだ。
「やっぱりこのダンジョンは嫌いだ…」
どこかにいるかも知れないこのダンジョンのマスターに届けと、恨みがましい声音だった。
『ダンジョン踏破、おめでとうございます』
「「うわっ!!!」」
そうこうしている間に、今度は機械的な音声が広間に響き渡った。
予想していなかった事態に、ルカとルゥが揃って驚いて頭を跳ね上げた。
対してルドルフはこうなるのが分かっていたのか落ち着いた様子で、イヴはいつも通りの無表情を保ったまま、興味深げにこの状況を観察していた。
『皆様………どうやらこのダンジョンは初踏破のようですね。それでは特典を授与します』
驚くルカ達をよそに、勝手に話を進めていく機械音声。
パンパカパパパパ~ンとまたチープなファンファーレが響いたと思うと、それぞれの目の前に何かが浮かび上がっていた。
ルカの前には杖、ルドルフの前には羽、ルウの前には靴、イヴの前にはペンダントだった。
ルドルフ以外は初めての体験にどうすれば良いか分かっていない様子だったが、彼が迷いなく目の前の羽に手を伸ばすのに習って、他の三人もダンジョンからの特典を手に取った。
《雷鳴の杖 を手に入れました》
《帰還の羽 を手に入れました》
《綿毛の靴 を手に入れました》
《睡蓮のしずく を手に入れました》
それぞれの頭の中に響くアナウンス。
ルドルフについては自らの手の中にあるものがなんであるか分かっていたため、大した驚きは無いようであったが、ルカを始めとした他の三人については、ダンジョン踏破の特典を得るのもさることながら、それぞれが手にしたものが初めて見るものであったため、興味津々な様子だった。
「僕の杖は、魔法威力が10%上昇するのと、ごく低確率で雷の攻撃が追加されるってあるね」
「僕のは履くと足音がほとんどなくなるってあるっす。良いもんっすね!」
「私は毒無効化」
ルカ、ルゥ、イヴとそれぞれが特典の能力を口にする。
「ん~~~?なんかこれって個人の能力に合わせてる?」
「その通りです」
アイテムの能力の偏り方に、個人の能力の特徴が関係しているのではないかと思ったルカが、ルドルフの方に視線を向ける。
それに対して彼も直ぐに頷いた。
「特性にあったアイテムっていうのは、嬉しいは嬉しいんだけど………」
「気味が悪いですか?」
「うん………」
ルカはこのダンジョンとはとことん相性が悪いようだった。
使いやすいアイテムが都合よく手に入ったというのは良いのかも知れないが、かえって都合が良すぎて、それこそ一部始終をダンジョンマスターなるものに見られていたのではないか。
そんな気がして仕方がなかったのだ。
「まあ、考えても仕方ないか」
「はい」
ルドルフが落ち着いて返事をしていることからしても、このような現象はダンジョンにおいては常のことなのであろう。
そうルカは結論付けると、気持ちを切り替えた。
そして振り返った先には、いつの間にか開いた扉と、その先の通路が見えていた。
「問題なく帰れそうだね。じゃあ、帰ろうか!」
一仕事終えたような表情で、少し大きめに発せられたルカの声。
それに応じた三人の声が、主のいなくなった広間に木霊するように響き渡ったのだった。
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