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第二章 少年期編

ルカのこれから

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「ルカ、話があるんだけど」
「は、はい!」

 ダンジョンの探索を終え、踏破の報告も完了した翌日。

 若い身体といえど、さすがに疲労を感じていたルカは、よたよたとした歩みで廊下を歩いていた。

 そんな中での父からの切り出し。

 何か報告において手落ちでもあったのか、それとも探索はもう満足だろうと中止を言い渡されるのか、と思わず構えてしまった。

「いや、そんなに構えることじゃないんだけどね…」

 深刻な事ではないと言うように体の前で手を振るファリド。

「じゃあ……」
「いや、まぁ、ちょっと早いかも知れないんだけど、ルカもそろそろ学園に通ってみないかな、とね」
「学園!?」

 予想とは違った方向の話に、思わず大きな声で反応するルカ。

「そんなに驚くようなことかな?」
「い、いゃ……」

 確かにファリドの言うように学園というのは珍しいことではない。

 しかしそれはルカのような貴族にとっては、だ。

 一般的な町民は早くとも6歳くらいになってから。

 それも3年すれば卒業という短さ。

 対して今ファリドの口にした学園とは貴族用のそれで、貴族に関しては4歳くらいから通い始め、卒業は15歳になってからだった。

 まるでルカの前世日本で、幼稚園に通って中学校を卒業するのと似たようなスパンだ。

「特に問題ないと思うけど、来年から王都の学園に通うって事で考えておいてね」
「は、はい…」

 伝えることを伝えて満足したのか、くるりと反転して廊下を歩いていくファリド。

 その後ろ姿を見ながら、ルカはぽつりと呟いた。

「学園………か」


 ◇


「いきなりだけど、来年から学園に通う事になった」

 自室に戻るとすぐにリーナにお願いして、探索メンバーを呼びに行ってもらったルカ。

 前置きもなく言えばかなり驚くのでは、と思った彼の予想は外れて、いつも通りと言った様子の面々。

「あれ?」
「あの………私たちは先にファリド様より聞いておりまして……」
「え?ほんとに!?」
「はい」

 あまりの反応のなさに首を捻ったルカに、申し訳なさそうに答えるルドルフ。

「なんか、今後のこともあるからって言ってたっすよ」
「あぁ……」

 ルカもそのルゥの言葉で納得した。

 目の前の三人は、自分の探索に同行するために雇った人員である。

 その張本人が、何年もいなくなるのでは当然やる事もなくなる。

「ルゥは置いておいても、他の二人は引くて数多だろうしね」
「な!?僕にだっていくらでも声は掛かるっすよ!!」

 耳の毛を逆立てて、ルカに反論するルゥ。

 本人は意外と真剣な様子だったが、そのムキになった彼女の様子が可笑しかったのか皆が笑う。

「ははははは!ごめんごめん。冗談は置いておいて、どんな話になったの?」

 目の端に浮かんだ涙を拭いながら、ルカがルドルフに尋ねる。

「はい、私はルカ様に付き王都に向かい、身の回りの世話をさせていただくことに」
「はいはい!僕はファリド様の専属護衛になったよ!」
「私もルゥと同じ」

 ルドルフ、ルゥ、イヴの順で答えていく。

「皆、冒険者の仕事とかはよかったの?」

 単純な疑問として、ルカの口から言葉がついて出た。

「私はもとより冒険者は辞めようと思っておりましたから」
「うーん、僕もそんなに冒険者にこだわりはないからなぁ~」
「私は面白ければそれで良い」

 先ほどと同じ順で答えていく三人。

「ルドルフとルゥはわかったけど、イヴは大丈夫?」
「うん、問題ない。ここで調もあるし」

 そう言ってルカの方をじっと見るイヴ。

 彼女のその意味深な仕草にルゥは「うん?」と言いながら首を傾げていた。

「どうしたの?」
「いや、イヴっちが………。う~ん…。何でもないっす!」

 何かを感じたのか、イヴのほうをじ~~~っと眺めていたルゥだったが、彼女の表情が変わらない事で諦めたのか、切り替えたように大きな声を上げて否定した。

 対して、ルカの方は気が気ではなかった。

 それは、イヴにある秘密を言ってしまったから。

そう。あの秘密を、だ。

 なぜそうしたかは自分でも理解できなかった。

 錬金術ができるから?

 それもあるかも知れない。

 口が固そうだから?

 それも当然ある。

 しかし、そういった言葉で表せるような理由ではなく、イヴにはこの秘密を共有したほうが良い。

 そんな直感的な衝動から言ってしまっていたのだ。

 そう、全能ポーションの素材のことを。

 しかし、製法については伝えていない。

 なぜそんなに中途半端なことを、と自分でも不思議だったが、これもそうすることがベスト。

 これもルカの直感がそう言っていた。

「じゃあ少し先の話だけど、僕が学園に通っている間、父様と母様、それにリーナをよろしくね」
「はいっす!」
「了解」

 ルゥが元気よく答え、イヴもそれに追従する。

「ルドルフには引き続きお世話になります」
「承知しました」

 ルカの言葉に執事よろしく、恭しいお辞儀をするルドルフ。

 その様子に横で見ていたルゥも「まんま執事と主人じゃねえっすか」と呟いていた。








 


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