46 / 55
第三章 学園編
おきまりのアレ
しおりを挟む
王都への道は約1週間の行程。
神竜山脈の方向とは逆の、ルカの屋敷からすれば背面側の道をひたすらにまっすぐ進んでいく。
当然のことながら、その途中には森のように草木が生い茂る場所、湿地帯、湖に海など、様々な環境があるようだが、基本的には整地された太い街道を行けば王都に辿り着く。
決してルカの前世、地球のような立派な道路が整備されているわけではないが、それでも馬車がすれ違えるくらいのしっかりとした道が、辺境とも呼ばれるルカの故郷までまっすぐに走っている。
ルカもその話をルドルフから聞いた時には、素直に驚いた。
「この国が統一された時に、時の王が物流と人の行き来は国を栄えさせる血管だ、として一斉に整備したそうですよ」
とはルドルフの談。
それはその通りではあるが、それを国が統一されてまもない頃に整えるとは、コストや労力の面から見ても、実行に踏み切ったのは並大抵の事ではない。
「いやぁ、王様さまさまだね」
「はい、そうですね。とは言えかの王としても、自分の国であるという主張のためにこの道を作ったとされる話もございます。おや、ルカ様。あれがそう言われる所以です」
御者台で馬を操作しながら、横に座っているルカに道の脇を指し示すルドルフ。
ん?といいながらその指の方向を追って目を凝らすルカ。
見ると、ルカの身長くらいの高さの、墓石のような四角柱の石が立っていた。
「あれがどうしたの?」
「はい、あれには『この街道およびこの街道が走る街は我が国グランドベルの領土である』と刻まれています。元々小さな国が隣接し合い、小競り合いを長らく続けてきた地域でしたから。諸外国に対して何かしらの証を示しておく必要があったのでしょう」
「あ~~~」
なるほど、とばかりに声を上げ、何度も頷くルカ。
確かに日本でも似たような話は聞いたことがある。
他国との微妙な位置にある土地に対する権利の主張。
それは異世界でも変わらないんだなぁ、とルカは心の中で呟いた。
「それにしても………」
「はい?」
「日本に似てるなぁ……」
「ニホン、ですか?それはどこの事で?」
「あ、いや、ごめん。忘れて」
「はぁ…」
ルドルフから渡されたこの国の地図。
国防の観点から、一般人が手にできるのはざっくりとした内容だったが、その大まかとも言える内容であっても、既視感があるその形に思わずルカの口から言葉が溢れた。
まさに日本地図。
違う点があるとすれば、四国や北海道など、海で隔てられているはずの部分が全て陸地で繋がっている。
それに島国ではなく、ユーラシア大陸のような巨大な大陸の一部となっており、日本海側に当たる部分が他国との国境になっているようだった。
ルカの故郷はその中でも九州に位置し、今目指している王都は大阪ぐらいの位置にあった。
(これで関西弁風の訛りだったら…)
思わずそんな益体もない想像が頭を掠めたが、次の瞬間に聞こえてきた声に、それも一瞬で吹き飛ばされてしまった。
「キャーーーーーーー!!!」
切迫したような、女性の悲鳴だ。
その音量からしても、音源まではそう遠くなさそうだった。
「ルドルフ!!!」
「はっ!」
それに対する二人の反応は早かった。
のんびりとした雰囲気から一転。
戦闘モードに切り替わった鋭い目で周囲を見回すと、それぞれ索敵スキルと索敵魔法を展開する。
「いた!」
「あちらですね」
ルカ達のいるところから、王都側の方向におよそ500mほど。
街道を少し外れたところに、何者かに取り囲まれている存在を確認した。
「行こう!!!」
「はっ!」
迷う事なく、ルドルフに号令をかけるルカ。
それに応じた彼も、手綱を強く握りしめると、馬を全速に切り替えるために大きく鞭を振りかぶった。
神竜山脈の方向とは逆の、ルカの屋敷からすれば背面側の道をひたすらにまっすぐ進んでいく。
当然のことながら、その途中には森のように草木が生い茂る場所、湿地帯、湖に海など、様々な環境があるようだが、基本的には整地された太い街道を行けば王都に辿り着く。
決してルカの前世、地球のような立派な道路が整備されているわけではないが、それでも馬車がすれ違えるくらいのしっかりとした道が、辺境とも呼ばれるルカの故郷までまっすぐに走っている。
ルカもその話をルドルフから聞いた時には、素直に驚いた。
「この国が統一された時に、時の王が物流と人の行き来は国を栄えさせる血管だ、として一斉に整備したそうですよ」
とはルドルフの談。
それはその通りではあるが、それを国が統一されてまもない頃に整えるとは、コストや労力の面から見ても、実行に踏み切ったのは並大抵の事ではない。
「いやぁ、王様さまさまだね」
「はい、そうですね。とは言えかの王としても、自分の国であるという主張のためにこの道を作ったとされる話もございます。おや、ルカ様。あれがそう言われる所以です」
御者台で馬を操作しながら、横に座っているルカに道の脇を指し示すルドルフ。
ん?といいながらその指の方向を追って目を凝らすルカ。
見ると、ルカの身長くらいの高さの、墓石のような四角柱の石が立っていた。
「あれがどうしたの?」
「はい、あれには『この街道およびこの街道が走る街は我が国グランドベルの領土である』と刻まれています。元々小さな国が隣接し合い、小競り合いを長らく続けてきた地域でしたから。諸外国に対して何かしらの証を示しておく必要があったのでしょう」
「あ~~~」
なるほど、とばかりに声を上げ、何度も頷くルカ。
確かに日本でも似たような話は聞いたことがある。
他国との微妙な位置にある土地に対する権利の主張。
それは異世界でも変わらないんだなぁ、とルカは心の中で呟いた。
「それにしても………」
「はい?」
「日本に似てるなぁ……」
「ニホン、ですか?それはどこの事で?」
「あ、いや、ごめん。忘れて」
「はぁ…」
ルドルフから渡されたこの国の地図。
国防の観点から、一般人が手にできるのはざっくりとした内容だったが、その大まかとも言える内容であっても、既視感があるその形に思わずルカの口から言葉が溢れた。
まさに日本地図。
違う点があるとすれば、四国や北海道など、海で隔てられているはずの部分が全て陸地で繋がっている。
それに島国ではなく、ユーラシア大陸のような巨大な大陸の一部となっており、日本海側に当たる部分が他国との国境になっているようだった。
ルカの故郷はその中でも九州に位置し、今目指している王都は大阪ぐらいの位置にあった。
(これで関西弁風の訛りだったら…)
思わずそんな益体もない想像が頭を掠めたが、次の瞬間に聞こえてきた声に、それも一瞬で吹き飛ばされてしまった。
「キャーーーーーーー!!!」
切迫したような、女性の悲鳴だ。
その音量からしても、音源まではそう遠くなさそうだった。
「ルドルフ!!!」
「はっ!」
それに対する二人の反応は早かった。
のんびりとした雰囲気から一転。
戦闘モードに切り替わった鋭い目で周囲を見回すと、それぞれ索敵スキルと索敵魔法を展開する。
「いた!」
「あちらですね」
ルカ達のいるところから、王都側の方向におよそ500mほど。
街道を少し外れたところに、何者かに取り囲まれている存在を確認した。
「行こう!!!」
「はっ!」
迷う事なく、ルドルフに号令をかけるルカ。
それに応じた彼も、手綱を強く握りしめると、馬を全速に切り替えるために大きく鞭を振りかぶった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
8
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる