遠回りしたから僕らは出逢える

Iris

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遠回りした後は同じ帰り途で

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夜中に突然パチリと何かの拍子に目を覚ました。
(うるせ・・・)
風が急に吹いてきたのだろうか、ガタガタと窓が鳴っている。
せっかく寝付いたところだったのに、と、けれど音の出所が分かったことには安心を覚えてから、また横になった。
(帰ってたのか・・・)
すると、俺が寝るときにはまだいなかった蒼が横にいることに気がついた。
最近買った大きめのベッドは大の男が二人寝てもまだまだ余裕がある。
寝るときには空いていたスペースに収まりよく蒼が居ることに、妙に満たされた気になった。
お互い働き出してからは、忙しい日には同じ家に住んでいても会えない日だってできた。
仕事は大切だし、若いうちは誰でもそうなのかもしれない。お互いのスペースに自分の居場所を作るにも限界はある。だから仕方が無いと、とうの昔に諦めてはいた。
「声かけりゃいいのに」
頭をそっと撫でると、気持ち良さそうにして
「・・・いつき・・・」
なんて言うものだから参ってしまう。
たまにこいつは全部分かってやってるんじゃないかと思ったりもする、けれど思いの外、それこそ蒼本人が思っているよりずっと、彼は天然だった。
そっと腕を回して抱き寄せる。
(あったけぇ・・・)
本当に一緒に暮らすようになって良かったと思う。
確かに生活のリズムが合わなかったり、いろいろ不便なこともあるけど、それでいいのだと思う。
ケンカしたって、仲直りすればいい、掛け違えたボタンはもう一度掛け直せばいい。
少しでも一緒の時間を共有できることがしあわせだった。
「愛してる」
自然と口に出た言葉に、若干恥ずかしくなりつつも、この言葉が一番しっくりくる。
好きとか大好きとかを乗り越えて、愛してる領域まで入り込んでる男は、きっとこの人以外にいない。
温かい気持ちに包まれて、俺はいつのまにか眠ってしまった。

---

「ん・・・」
まだボンヤリとする頭で目が覚めた。
(ん?)
いつのまにか回された腕に気がついた。
確か寝るときは起こさずに布団に入ったはずなんだけど。
途中でトイレにでも起きたのだろうか。
腕はやんわりと回されているため苦しくはないけど、とても温かかった。
ついちょっと前まで、家に帰ると一人で、冷たい布団になんとも言えない気持ちで入っていたと言うのに。
昨日夜遅くに帰ると、既に樹は眠っていた。
体は資本だから、無理してお互いを待つのはやめよう、というのが最初に決めた約束の一つだった。
たまに寂しく思ったりもするけど、きちんと俺の寝るスペースは空いているので、自分の居場所は俺の横だ、とでも言われているようで、むしろ嬉しく感じたりもする。
なるべく音を立てないようにシャワーを浴びて、その後すぐ寝室に向かった。
(寝顔超可愛い・・・)
普段は格好良いと呼ぶに相応しいその顔つきも、眠りにつくときにはどこかあどけなさが、まだ残っているように感じられた。
もちろん望んで組み敷かれる側である立場にあるが、彼の寝顔を上から見下ろすのは、何だか優越感に浸ったような感覚に陥る。
そっと起こさないように横に入り込む。
静かに寝息を立てながら眠る樹の横はとても温かい。
布団に入ってからすぐに、疲れもあってか眠ってしまったのだ。
(今何時だろ・・・)
今日は会社に寄らず、そのまま現場に向かえば良いからいつもよりはゆっくりしていられるけど。
でも樹だってきっと仕事があるはずだ。
起こさないようにそーっと体を動かして枕元の時計を見る。
(七時・・・)
起きなければならないか微妙な時間だ。
どうしようかと悩んでいると、
「うー・・・」
隣で低いうなり声が聞こえたかと思ったら、回る腕に力が入り引き寄せられた。
「わっ」
「・・・あれ・・・、起きてんの?」
急なことに声が抑えられなくて、慌てて口を抑えるけどもう遅かった。
樹はガシガシと自分の顔をかき混ぜてから、起き上がって昨日俺がそうしたように、顔を覗き込んでくる。
「ごめん、起こした・・・?」
「ううん、全然」
ふんわりと笑った顔をしてから、俺に柔らかく体重をかけてから、深い呼吸を繰り返す。
きちんと腕に力を入れてくれているから重くはないけれど、息が首筋に当たって少しこしょぐったい。
「今何時?」
樹はそっと顔を離して、視線を絡ませながらそう尋ねた。
この甘すぎる目線は、二人だけのときはより一層甘さを増す。
「七時くらい」
「あー、じゃあもうちょい寝れるわ」
音を立てるように口付けをしてから、樹はゴロりと仰向きになった。もう一度眠る体勢だ。
「仕事何時から?」
「昼から。蒼は?」
顔だけこちらに向けて頭を撫でられる。
気持ち良くて目を閉じた。
「俺は十時から」
「じゃあもうちょい寝よ?」
俺の方が早く出なくてはいけないのに、そんな風に優しく言われては頷くしかないではないか。
「うん」
樹はもう一度ゴロりと横向きになって僕の唇をそっと奪った。
「おやすみ」
まるで愛してるとでも言われているかのような口付けにそっと瞼を下ろす。
「おやすみ」
俺もだよ、そう思いながらもう一度眠りに落ちていった。
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