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甘え上手になりたい

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 俺がカーターボイスで蕩けてる時、真面目な話を沢山してたらしい。
 その一つが俺の住む部屋について。都内にあるビルに支社の為に事務所を借りてるが同じビルに住む事になってた!
 どうやら太田や元カノの件で不安になったかららしいけど、家賃だけで俺の月給超えるだろ。無理だよ言うと実はビル一棟丸ごと持ちビルだからそもそも家賃などないと。どんだけ金持ちなんだよ!てか、うちの会社なぜ吸収されないんだろうか。資本力が違い過ぎるから秒で出来るだろうに。
 そのまま役員報酬の話になって目が飛び出た。会社の3倍近いし、更に成功報酬も付いてくると聞けば本来喜ぶところなんだろう。ただこれが恋人関係じゃなければと話だ。付き合ってる事だけを理由にこんな大金は受け取れない。会社は仕事の対価をもらうべきであって恋人に貢ぐためにあるんじゃないと思ってる。
 これにはカーターと一晩議論したかった。
 カーターも話たがっていた。俺が嫌がるのも見透かしていたんだろうな。

 ただそれよりも何よりも俺が猿だったのだ。
 触りたい。触られたい。
 そればっかりだった。仕方ないだろ、2ヶ月近く会ってなかったんだから!たまにしか電話もできなかったし。
 だから、カーターにミネラルウォーターを手渡す時に正面から向かい合うように腰の上に座った。
 「カーターが悪い。」
 「悪かった。」
 「うん。待ってたんだ、ずっと。」
 「悪かった。ごめん。」

 俺から顔を近づけて触れるだけのキスをしては離れる。チュと短い音を立てて。後頭部を全てを包むような大きな手で撫でられると気持ちが落ち着いていくのを実感する。
 「ずっと不安だった。」
 「あぁ」
 「本当は国に素敵な人がいて、もう帰って来ないんじゃないかって。」
 「そんな人いないさ。」
 「周りがカーターを放っておくはずない。だってこんな」
 「鷹、俺には鷹だけだよ。待たせて悪かった。それは心から謝る。怒らないでくれ。許して欲しい。」
 「怒ってない。仕事は仕事。分かってる。でもカーターが悪い。」
 「たっぷり時間かけて穴埋めさせて欲しい。」

 穴埋めと聞いて下ネタかと一瞬思ったが雰囲気をぶち壊したくないから黙ってた。

 チュ チュ
 ヂュ!ヂュル!

 触れてるだけのキスが吸い合うキスに変わる頃、カーターの手がボタンを外した。
 と同時に着信がきた。

 ジョーさんからだったからスピーカーで出ると、
 「お楽しみはそこまで。アポの時間です。」

 と。部屋にはいないのに見てたかのようなタイミングで!思わず見渡したが誰もいない。

 お互いはっきりと勃起した状態で向かい合ってたから股間を見て笑ってしまった。

 「シャワー浴びて行くか。」
 「そうですね。」
 
 仕事モードになれた。カーターに会えて気持ちが落ち着いたんだ。

 シャワー浴びて着替えるがカーターに取り上げられた。「時間ないですから!」ふざけてるんだと思ったら、「クローゼットの中にあるの着てくれ。」と言う。見るとどう見ても高級なオーダースーツが並んでる。これまさか。
 「そ。前にスーツ送らせてって採寸してたやつ。遅くなって悪かった。気に入らない?」   仕立ててもらったら1着200万から300万はするであろうスーツが10着並んでる。年収何年ぶんだよ、、、
 「知り合いのデザイナーだから安かったよ。その人もケンドー好きだから今度練習付き合ってあげて欲しいってさ。」
 軽く言ってくれる。3000万の稽古代ってなんだ?!
 スーツの中からチャコールグレーのスーツを着たら、「他のにしよう。」と却下されてしまった。「それエロいからさ。」と。
 そんな事言われたらまた発情モードになっちゃうじゃないか!と慌てて黒のスーツにした。というかワイシャツが一番も着たこともない肌触りしてる。
 靴はリー◯ルが用意されてる。
 鏡に映る俺、セレブじゃない?と勘違いさせてくれた。回りに行って最後に俺の会社に行く予定だったけど、カーターが突然「鷹の会社は今度にする。」と言い出した。声が不機嫌だったからカーターを見ると、「鷹を酷い目に合わせたんだ。顔見たくない。少なくとも今日は。」しそうになった。

 あぁ、今何か気の利いた事言いたい、けど何も思い浮かばない。嬉しさと気まずさと申し訳なさで横顔を見つめながら「分かった。」しか出て来なかった。カーターをがっかりさせたかなって思いつつ会社に電話して伝えた。専務は想定してたのかゴネる事なく了承を得て直帰していいと。というか、俺が出迎えたのは会社に連れて行くためだったから、これじゃ仕事してないのと同じなんだけどなぁ。何か分からない感情に少し凹む。
 電話してる間、ジョーさんとカーターは何か短い会話をして着いた先はホテルじゃなかった。小一時間かけて着いたのは誰かの家?と思ったら旅館らしい。日本家屋を極めたかのような豪華な作りなのに現代的。こんなところ聞いたこともない。多分セレブしか連絡も出来ないんだろう。
 部屋まで車を横付け出来るみたいだけど、玄関で立っている着物の女性の前に車を寄せる。女将さんかな。車から降りようとしたらガッと肩を掴まれて「まだだ」と言われたから待ってたら、先に降りたカーターがドアを開けて俺に顔を近づけたと思ったら背中と膝に腕を滑り込ませて頭をぶつけない様に抱き上げられた!
 見てるよ!女将さん!玄関の奥にも出迎えてる人いるから!
 「あぶないから、ぐずらないで」
 完全に笑ってるし。笑顔のカーターを久しぶりに見て嬉しくなったけど。けどだ、わざわざ見せつけなくてもよくないか?俺にだって恥はあるぜ!と思ってると女将さんが、
 「ようやくお泊まりに来て頂けてうれしゅうございます。お部屋までご案内いたしますか?」と平然と聞いている。あれ、俺いるよ?見えてる?と思ってると、流し目でこっちを見ると、「お邪魔でなければ、ですが。」と優美に笑みを浮かべてる。

 多分俺が決めていいよって教えてくれてるんだ。ピンときた。咄嗟に「カーターが案内して。」と慌てたように言ってしまった。女将さんが悪いのではないけど、邪魔だったから仕方ない。
 「部屋分かればだけど、どう?」
 「イエッサー」
 わざとカタカナっぽく言って笑うと歩き出した。女将さん達に笑われてるかな、でも関係ない、どこかで会う事もない人だし。
 そんな事をちらっと考えてたけど、家屋の中の素晴らしさに目を奪われたし、カーターが頭にキスをした事で真っ白になった。1日動いてたから臭かったよな?!と思う反面、汚いとこにキスされるのは嬉しくってドキドキした。ただ抱っこされてるのがお姫様だっこだし恥ずかしくなって顔をカーターの鎖骨というか顎の下に当てて隠れた。絶対にやけてるはずだから。
 歩く事10分弱!やっと部屋に着いた。こんなにあるとは思わなかった。離れと呼ぶにはあまりに豪華な部屋に着く。カーターは今日に靴を脱いで部屋に入る。俺は?下ろしてくれないの?と思っているとベッドにようやくおろしてもらえて、そのまま片足を持ち上げると優しく靴を脱がせてくれた。

 「履き慣れない靴で歩かせたから足痛めてないか?」片膝をついて靴を脱がせながら上目遣いで聞いてくる。
 3度目だ。もう心臓がもたないかもしれない。何でこんなスマートに出来るんだろうか。もうされるがまま靴を脱がされ、靴下も脱がされると抱き上げられ部屋の中を案内された。

 何も入ってこなかったけど。
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