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9話 デート、そして一つに
しおりを挟む「うーん、これで大丈夫だろうか?」
鏡に映る自分の服装を確認し、1人呟く。
ダンジョンから帰った後、シャーロットにデートに行こうという旨の手紙を出すと、すぐに返事が返ってきて快諾してくれた。
今日がその王都でシャーロットとデートする日な訳だが、前世で1度も彼女のできたことのない俺にとって上手く彼女をエスコート出来るだろうかという緊張で、朝から何度も鏡を見ては服装を確認しているのだ。
ここ3日ほどで、デートコースの下見はしたし、人気のお店なんかも調べた。
「シャーロットに喜んでもらえるといいんだけど。」
▼
シャーロットの家の前で彼女が出てくるのを待つ。シュトレーゼン家と同じで彼女の家も公爵家なので恐ろしく広い。
庭では、魔法使いたちが訓練をしている最中の様だ。
シャーロットの家は、アルカディア王国で代々、魔法師団長を勤めてきたしてきた家門なだけあり、訓練している魔術師達のレベルもかなりのものだ。
シュトレーゼン公爵家が剣術の名家なのに対し、ルクレシア公爵家は魔法の名家なのだ。
魔術師たちの訓練をしばらく眺めていると、シャーロットが出てきた。
「お待たせしました。アルとデートに行ける日が来るなんて夢みたいです!」
屈託のない笑みを浮かべてながらそう告げるシャーロットを見て、勇気を出してデートに誘った甲斐があったなと思う。
「やあ、シャーロット。2週間ぶりだね。そのドレスとても似合っているよ。もしかして、俺の瞳と同じ色のドレスにしてくれたの?」
「はい!よかったです、気づいてもらえて。
アルの瞳と同じエメラルドグリーンのドレスにしてみました。」
「本当に可愛いよ!ずっと眺めていたいぐらいだ。」
「そしたらデートに行けなくなっちゃうじゃないですか~。」
クスクスと笑いながらそう言うシャーロットは冗談抜きでめちゃくちゃ可愛い。
俺は彼女の隣を歩いていて恥ずかしくないよな?痩せたことで俺もかなりイケメンになった自信はあるが、、。
「アルも、とってもかっこいいですよ。他の女性に奪われないか心配です。」
「今日はシャーロットとデートするんだから他の女性になんて興味ないよ。」
「それなら良かったです。でも、他に好な女性ができたら私に相談してくださいね。アルほどの男性を私が独り占めできるとは思ってませんから。」
え、いいの?!俺は日本人としての価値観で考えていたが、この世界では貴族が側室を迎え入れるのは当たり前のことなのだ。
シャーロットが許してくれるなら、そういう事も後々考えるとするか。
でも、今はそんなことよりシャーロットとのデートを楽しもう。
「じゃあ、出発しようか。歩いて街まだ行くから疲れたら言ってね。」
「はい、馬車以外で街に行くのは初めてなので新鮮でとてもワクワクします。」
馬車で移動する方が楽なのだが、せっかくのデートなので徒歩で移動することにした。安全面を考えると少し心配だが、今の俺ならシャーロットを守るぐらいの力はあるだろう。
▼
演劇を見た後、宝飾品店でシャーロットの瞳と同じ色の大きなサファイアの付いたネックレスを買いプレゼントすると、目を輝かせて喜んでくれた。
「こんな綺麗なネックレスをいただいてしまっていいんでしょうか?」
「もちろん、このネックレスはシャーロットにしか似合わないだろうし、俺もシャーロットがつけてくれると嬉しいな。」
「ッ、一生大切にします!!」
とても喜んでくれた様で良かった。これからもシャーロットに似合いそうなものがあれば、プレゼントしよう。
「次はどこに行きましょうか?」
「お腹も空いてきたし、昼ごはんを食べに行こうか。」
「いいですね。私は甘いものが食べたいです!」
「そう言うと思ったよ!昔から甘いものが大好きだったもんね。ちょうど良いお店が近くにあるんだ。」
「私の好みを覚えていてくれたんですね。嬉しいです!じゃあ早速、昼食にしましょう。」
少し歩くと、「小人の休日」と書かれた看板が見えてくる。石造りの建物がほとんどの王都にしては珍しく木でできたお店だ。
「ここだね。店員は全員小人族で、名物のパンケーキが美味しいみたいだよ。」
「パンケーキ!!早く食べましょう!私もうお腹がぺこぺこで我慢できません。」
普通はパンケーキよりも小人族に反応すると思うんだけどな。シャーロットはお腹がペコペコでそれどころではないらしい。
店の中に入ると、「いらっしゃいませ」という声が聞こえてくるが、何処から話しかけられているのかわからない。
俺とシャーロットがキョロキョロと辺りを見回していると、
「おーい、お客さん。下です下。」
下を向くとそこには50センチにも満たない大きさの女性が立っていた。本当に小人族がやっていたのか。
だけど想像してたのと違うな。もっと手のひらサイズで羽の生えた感じのを想像していたんだが。
なので、正直に思ったことを伝えてみる。
「小人族っていうのは、もっと小さくて羽が生えているのを想像していたんだが。」
「いや、それだったらフェアリー族ですよ!私たち小人族とは別の種族です。」
どうやら俺の想像していたのだと、フェアリー族に当たるらしい。ゲームに登場していなかった種族がどんどんと登場してきて非常に興味深いな!
いつか、この世界にいる色んな種族を探してみるのも楽しいかもしれない。
「このパンケーキとても美味しいですね!」
「ああ、ふわふわで口の中に入れるとすぐにとろけるね。」
「小人の休日」の看板メニューである、ふわふわパンケーキを食べすすめる。シャーロットが本当に美味しそうな顔をして食べてくれたので来た甲斐があった。
前世、日本で食べたパンケーキに比べると味は今ひとつのはずなのだが、とても美味しく感じる。
シャーロットと、愛する人と一緒に食べることで美味しく感じているのだろう。
▼
その後もしばらくデートを楽しみ日も沈み始めた頃、
「もうこんな時間か。シャーロット、今日は楽しめた?」
「はい!!こんなに幸せな時間を過ごせたのは生まれて初めてです。」
「それなら良かったよ。俺もメチャクチャ楽しかった!」
俺がそろそろ帰ろうかと言おうとしたところで、
「こ、この後ももっと幸せな時間を過ごしたいですっ。」
シャーロットが顔を赤らめながらボソッと呟いた。
え、これってそういうことだよね?!オッケーってことだよね?
▼
俺の部屋のベットで、隣に座るシャーロットを見ていると体が熱くなってくる。理性を保つのがやっとな状態だ。
俺がシャーロットを見つめていると、お互いの目があう。あまりの可愛さに俺は彼女を押し倒し口づけした。
もうこれ以上は理性を保てない。
「ア、アル、いいよ。」
その言葉を聞くと同時に俺の理性は崩壊した。
▼
翌朝、窓から差し込む光で目を覚ました。
隣では裸のシャーロットが気持ちよさそうに眠っている。透き通るような白い肌に、豊満な胸。眺めているだけでまた、下の方が熱くなってくる。
でも、今は我慢だ。
自分の欲望を満たすために、疲れ果てて寝ている彼女を起こすほど俺は野暮じゃない。
心地の良い充足感につつまれながら俺はもう一度、眠りについた。
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