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第2章(高一冬~)
2:二人の時間
しおりを挟む秦同家主催のパーティに誘われた僕は、
日下部と共にパーティ会場までやってきた訳だが、夢でも見ているんだろうか。
「なぁ、日下部。」
「どうしたの?ユズくん?」
「僕には、ここがあの有名な日本一の高級ホテルに見えるんだが。」
「?合ってるよ?」
そうだった、日下部も四家なんだった。四家にとってはこんなところでパーティをするのが普通なのか。庶民には、ついていけない…。
と思っていた瞬間、日下部からまた信じられない言葉が聞こえてきた。
「今日は、招待客が少ないから
ここのホテルにしたって言ってたよ?」
「そうか……。」
よし、何もかも忘れて過ごそう。
そう自分に思い込ませ、車を出た時だった。
「久城!」
「秦同!」
「やっほー!ヒロ!お姫様は無事送り届けたよ!」
「!?」
「ああ、ありがとう。友紀」
(お姫様ってなんだよ)
静かに心の中でツッコミを入れた。
さっきから、秦同の視線が痛い。もしかして、
スーツ似合ってないのかな?そうだったら、かなりショックだな。
「さっきからなんだよ?スーツ似合わないか?」
「い、いや。似合ってるよ」
そっぽを向きながら答えられた。
いや、そんな目も向けられないほど似合ってないのか!?確かに昔から女顔とは言われてきたが、
うう。秦同にそう思われてると考えるとやっぱりショックだ……
「ぶふっ。くくっ……。……ふっ。
あははははっ。もう無理、笑いこらえらんないよ。」
「いきなりどうしたんだ?日下部」
「いや、だってさ(笑)2人ともすれ違いすぎ!」
「????」
僕は、日下部の言った言葉に首を傾げていると
「だって~、ヒロは『似合ってるよ』とか言ってそっぽ向いて赤面してるし、ユズくんは似合ってないと思ってしょんぼりしてるし~(笑)2人とも可愛すぎ」
赤面?そんなはずない。そう思い、改めて秦同の顔を見てみると確かに少し赤くなっていた。
(似合ってないわけじゃなかったんだ。良かった)
「友紀」
「ん?なぁに?」
「少し久城と2人で抜けてくる。パーティまで1時間あるだろ?」
「ほいほい。りょーかい。叔父さんたちは
僕とミッチーで対応しておくね?」
「すまない。助かる。」
「え?ちょっ、まっ…」
言い終える前に、秦同に手を引かれ歩き出した。
(沈黙が辛いから、とりあえずあそこのベンチにでも座ろう)
そう思い、僕は秦同の袖を引っ張り公園のベンチを指さした。
「とりあえず、あそこのベンチにでも座る?」
「あ、ああ。」
「飲み物買ってくるよ。なにか飲む?」
「なんでもいいよ。」
「りょーかい。」
僕はいそいそと自分のジュースとコーヒーを買って秦同の元に戻った。
「はいどーぞ?」
「ありがとう。」
……………………………………。
(ち、沈黙が長い)
なにか話があった訳では無いのかな?
秦同の様子を伺おうと横目で秦同を見ると
燃えるような紅い瞳が、僕を一直線に見つめていた。その瞳はまるで、愛おしいものを見ている時ようだった。その瞳に耐えきれず、僕は視線をもとに戻した。
(やばい。なんかドキドキする。)
発情期はこないだ終わったし、心配はしていないが、妙に心臓がうるさい。
『僕もユズくんがヒロの運命の番だって思ってるんだ!ーーーーーーーーヒロの気持ちは本物だと思う。これだけは信じて欲しい。』
日下部の言葉を思い出した。
(こんな時に思い出すなんて…)
顔が熱くなるのを感じる。ついに我慢できなくなり、僕はジュースを飲み干し、秦同の方に向き合った。
「おい!秦同!」
「な、なんだ?」
いきなり怒鳴られて驚いたのか、秦同は腑抜けた声を出した。
「~っ。さっきから視線ずっと痛いんだけど。」
「視線?」
「お前、ずっと僕のこと見てるじゃん?
あんなずっと見つめてきて、顔に穴あくって」
一瞬驚いた顔をした秦同は、少し考え込んで
オロオロしながら謝ってきた。
「す、すまない。そんなに嫌だとは思ってなくて」
「別にいいけど、なにか話あったんじゃないの?」
「いや、久々だから2人きりになりたかったというか。少しお互いの近況報告でも出来たらと思っていただけなんだ。」
「そっか。僕のは聞いても平凡すぎて面白くないと思うから、秦同から教えてくれる?」
「ああ!もちろんだ!」
それから時間が許す限り、秦同のお互いの報告をし合っていた。僕の方の話は、日下部のことや叔父叔母のことばかりだったが、秦同は嬉しそうに僕の話を最後まで聞いてくれた。
「そろそろ時間だ。戻ろう。」
「あ、うん。」
「また今度聞かせてくれ。」
僕は、コクンと頷く。
(こんなにイケメンで優しくて、お金持ちのαって
モテて当然だよな)
そんなことを思いながら、秦同と会場に戻った。
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