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第2章(高一冬~)
5:将来の話
しおりを挟む秦同の家のパーティーから数日がたった。
学園のΩに対する態度は変わらずだが、日下部や本庄が最近は一緒にいてくれるせいか前より表立った悪意は、無くなったように感じる。
「Ω…か。」
「Ωがどうかしたのか?」
思っていたことが口に出ていたらしく、本庄に不思議そうな目で見られている。
「いや、Ωというだけでこの世界の扱いは少しひどいなと思っていただけだよ。ヒートに対する薬でも出来て、Ωも働けるようになったらなにか変わるのかな?」
「………。どうだろうな。変わるかもしれないが、すぐには無理だろうな。人々に根ずいた物をすぐに帰るというのは難しい。何年、何十年はかかるだろうな。」
「そうだよね。」
「いきなりそんなこと聞いてきてどうしたんだ?」
「うん。少しね。」
僕は小さい頃から、Ωの薬を開発したいと考えていた。難しいことも、まずΩを雇ってくれるわけが無いというのが現実で、誰にも相談できずにいた。
秦同たちに相談すれば、知り合いの所に口利きしてくれるかもなんて思っていた時期もあったが、そんなコネ入社みたいなことは絶対したくない。どうするべきか……。
「眉間にシワできてるぞ?」
「ん。ありがとう。」
「どういたしまして」
1度考え込みすぎると、時間を忘れてしまうため、こういう時に友達がいてくれると助かるなと改めて感じる。
「そういえば、今度の連休は何する予定なんだ
?」
「今度の連休は、オープンキャンパスに行く予定だ」
「オープンキャンパスか?1年のうちから行くなんて、しっかりしてんな?」
「そんなことないよ。自分のことは、余裕を持って考えておきたいだけなんだ…。」
「そうか…」
「本庄たちは、大学とか進学するのか?」
「あ~。俺は、家柄大学は別に必須ではないな。秦同や日下部は、代々通う大学が決まっていたはずだ。」
「まぁ、四家だもんな。」
「そういうことだ。」
ハハハと軽く笑いながら、本庄が頭をワシャワシャと撫でてくる。
「ちょっ!髪崩れるじゃんか!」
「すまんすまん。つい、な?(笑)」
僕は、キッと本庄を睨みながら、オープンキャンパスの資料をカバンから取り出した。
「お!それが今度行く大学?」
「あぁ。ここの大学でも良かったんだが、
他にも気になる学科のある学校があって、悩んでるんだ。」
「なるほどね~?俺も行こうかな?」
「は?さっき大学行かないって言ってなかった?」
「行く必要はないと言っただけで行かないとは言ってないよ?」
たしかに、行かないとは言ってなかった気がするな…?やられた。
「はぁ。気になるなら一緒に見るか?」
「おう!ありがとう!」
「写真も撮っていい?帰って自分でも調べてみるわ!」
「…?どうぞ?」
「サンキュー!」
パシャパシャと写真を撮ったかと思えば、
背を向けて、携帯を触りだした。誰かに連絡?しているのか?
「おい!」
僕の掛け声に、ビクッと方を震わせた本庄は、
涼しい顔で振り返ってきた。
「なんだ久城?」
「なんで急に後ろ向いたんだ?誰かと連絡してるのか?」
「ああ。家から連絡が入ってて、
人には見せられないから、後ろ向いて返信していたんだ。済まなかったな。」
「そうだったんだ。そういうことなら別にいいけど、」
「すまないな!オープンキャンパスの話の続きをしようか?」
「あ、ああ。」
この時の本庄の様子は本当におかしかったが、家の事と言われてしまえば、僕達は何も言えない。
だが、僕はこの時もっと疑い、問い詰めるべきだったと思うことになるのは、それから3日経った頃だった。
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