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第2章(高一冬~)
6:番
しおりを挟むあれから3日経った今日は、オープンキャンパスの日だった。僕は、早めの電車に乗ろうと家を出ると、なんとそこには、秦同がいた。
「え…?なんで僕の家知って…、」
「友紀に聞いた。オープンキャンパスに行くって聞いて、一緒の子と行くから迎えに来た。」
「・・・・。オープンキャンパスのこと、秦同に話したっけ?僕の記憶が正しければ、ずっと話してなかった気がするんだけど。」
オープンキャンパスのことは、本庄にしか話してないから、多分本庄情報だろうな。
「ああ。オープンキャンパスは道也から聞いた。」
……。やっぱり本庄からか。
「いや待てよ。確か、秦同たちは行く大学は家で決まっているんじゃなかったっけ?」
「?あれ?大学のこと話したっけ?」
「いや、本庄から聞いた。勝手にごめん。」
「いや、全然いいよ。俺の事興味持ってくれてるってことだろ?」
「!?オープンキャンパスのこと話してたついでだったから。」
「分かってる(ニコッ)」
その笑顔、少し黒い気がするのは気のせいかな?
「行く大学は決まってるけど、他の学校のオープンキャンパスに行くことは禁止されていないよ。一応勉強にはなるからね。」
「なるほど。でも、僕の志望大学についてきても秦同は全然関係ないからつまらないんじゃないか?」
そう、僕はΩ専用の大学や薬剤の専門学科を見る予定だった。秦同の家は、政治家関連の仕事してが中心な為、見たい学科が全然違う。
無理してまでついてこなくてもいいのに…と少し思ってしまう。
「いや、薬関係も見ておいて損はないし、安全かどうかチェックしておかないといけないからな!」
「安全??学校なんて、どこも安全じゃないのか?」
「いや、久城。全然分かってないな。こんなに華奢で美人なΩに安全な場所なんて、番のそばでしかないだろ。しかもお前は【蒼い瞳持ち】じゃないか!外はどこでも危険だ。」
それを言うとお前は、【紅い瞳持ち】じゃないか!と反論したくなったが、何も反論せず「ごめん」とだけ言って、視線をそらしてしまった。
すると何かを察したらしい秦同に
「ちなみに俺も珍しい【紅い瞳持ち】だが、
四家のαだから、自分の身は自分で守れる。
だが、久城は一般家庭の珍しいΩなんだ。めちゃくちゃ美人だし。口うるさくしてしまって、申し訳ないと思っているが、心配なんだ。俺の番だから。」
「秦同…。心配してくれてありがとう。その気持ちはとても嬉しいが、一つだけ言わせてもらうとまだ番の件了承してない!せめて候補と言っておいてくれ!」
「俺はお前以外、番を迎える気はない。久城も俺が運命の番なんだから、他のαとは番えないと思うけどな?」
「確かに、自分の意思では番えないと思うけど、襲われたら分からないな。」
「………。そうならないように俺が守るんだ。
だから、危ない所に行ったりとか無駄な外出は控えてくれ。行きたいところがあったら連れていくし、欲しいものがあったらなんでも用意するから。」
秦同の声があまりにも悲しげで、僕は「分かった」以外何も言えなかった。
これから将来のことも番のことも考えていかないといけない。でも、いくら運命の番だからって
僕と秦同は身分に差がありすぎてしまっていると思う。
僕も何も囚われず、番を決めて一緒に暮らすなら、秦同がいいと思うくらい、最初の頃と比べると惹かれてきていると思う。
このまま、何もせず否定するだけだったら、秦同は一生納得しない。それならいっその事番になると腹を括って、秦同の家に挨拶に行った時に、拒否されるからそれを理由にして断るのもありだ。
どうするのが正解なのかもう分からない。
自分の気持ち1つで判断していいくらい軽い問題でもない。
ひとまずは秦同が諦めてくれることを祈ろう。
僕は、隣で外の景色を見ている秦同に視線を移した。しばらくして、僕に見られているのに気がついたのか笑顔で頭を撫でてくる。
なぁ、秦同。僕は秦同が優しくしてくれる度に、秦同の温かさを感じる度に、胸が熱くなって涙が出そうになるんだ。僕は何も返してあげられないのに、なんでそこまで僕のことを考えてくれるんだ?
「どうしたんだ?久城、なんで泣いてるんだ…」
「え?」
いつの間にか涙が出ていたことに気づかなかった。我慢できなかったんだ。
「なんでもないよ。目にゴミが入っただけだよ。」
「……。何かあったらなんでも話せよ。」
「うん。」
いつまでもこうしていられたらいいのに。
何も考えず、何にも囚われていない今の時間。
今が今までで1番幸せかもしれない。
卒業したら一緒にいられるとは限らないから。
自分の運命の番、今までは会いたくなかった。
なんで僕の前に現れたんだとすら思った日もあった。でも、今は秦同と高校で出会えて良かったとすら思っている。
だって、別れまで時間がある…から
気持ちに区切りをつけることが出来るだろ?
「ごめんな。秦同。」
僕は静かに呟いた。
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