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第一章:ラファル・ウェントゥス
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ふと、微かにコツンと音がした。
「……?」
窓ガラスになにかが当たる音。気になって立ち上がる。吸い寄せられるようにして窓辺に近づいた。
ざっと周囲を見渡してみる。窓ガラスや金具、傍にある棚。どれも特に異変は見られない。ただの思い違いだったのかな、なんて考える。きっと風が吹いてガラスが揺れたのかも。
せっかくだから窓の外も見ておこう、と鍵を探す。鉤爪状の金具をカチャリと外す。フッと軽くなる窓枠に手を添え押し開けた。瞬間、爽やかな空気が入り込む。開放的な気分に思い切り伸びをした。
「……んんっ」
目の前に広がる景色を見渡す。近くの大木、清々しいほど緑が広がる庭園。隅々まで綺麗に整えられている植木もしっかり剪定されていて絵画のように美しい。
ふと反射する輝きに目を凝らす。なにか池のような、噴水のようなものがありそうだ。塀のような壁を越えたその先には小さな家々が見える。淡い赤色の屋根で壁はクリーム色をしているのが遠目でも分かった。
「……」
ふっと差し込んだ眩しい陽射しに瞳を細める。空を見上げると澄んだ青空が広がっている。浮かぶ雲はさまざまな形をしていて、近くからは可愛らしい小鳥の鳴き声も聴こえた。
穏やかな雰囲気に状況すら忘れ、休暇気分に浸ってしまう。次に有休取れたら旅行でもしようかな。なんて思うほどに。どこ行こうかな。海とか山とか、自然があるところでさ。
清々しい空気に包まれて、大きく深呼吸をする。
さて、そろそろ閉めようかと手を伸ばした時だった。視界の端、大木の葉のかげに人影が見えた気がした。反射的に探してしまう。
けどその直後、その人影が窓目掛けて飛び込んできた。慌てて数歩後ずさる。
「……!」
スローモーションのような姿を目で追う。燃えるような赤い髪がたなびき風に乗って流れる。黒いウエスタンハットを目深に被っていて表情は見えない。
けど、風貌からして男性なのは分かる。焦げ茶色の長いコートについてる装飾品がドクロとか金の錨。パッと見だったけど海賊のような印象を受けた。肩には縄の束。
その人が華麗に床へと着地する。
「??」
一瞬、何が起こったのか理解できなかった。景色が一望出来る高さなのに人が入り込むなんて普通ならあり得ない。でも、すぐに身を翻す。
とにかく逃げよう。分からないからこそ離れた方がいい。だけど──。
「っ!」
焦ったせいか足がもつれる。その拍子にバランスを崩してしまった。闇雲に手を出して衝撃に備えてギュッと目を瞑る。
────瞬間、グイッと腰を掴まれ引き寄せられた。
つい、しがみつくように男性の胸元を握る。おかげで転倒は免れたけど代わりに牽制するような低い声がする。
「逃げようなんて、考えるなよ」
「!?」
ハッと見上げた。間近にある男性の顔は端正な目鼻立ちをしていて、金色の瞳が射抜くように私を見つめている。
逃げなきゃ、と思うのに囚われたかのように体が動かせない。
目の前の彼が再度口を開きかけたその時、バタバタと騒がしい足音がして部屋の扉がバタンッと大きな音を立てた。
「……?」
窓ガラスになにかが当たる音。気になって立ち上がる。吸い寄せられるようにして窓辺に近づいた。
ざっと周囲を見渡してみる。窓ガラスや金具、傍にある棚。どれも特に異変は見られない。ただの思い違いだったのかな、なんて考える。きっと風が吹いてガラスが揺れたのかも。
せっかくだから窓の外も見ておこう、と鍵を探す。鉤爪状の金具をカチャリと外す。フッと軽くなる窓枠に手を添え押し開けた。瞬間、爽やかな空気が入り込む。開放的な気分に思い切り伸びをした。
「……んんっ」
目の前に広がる景色を見渡す。近くの大木、清々しいほど緑が広がる庭園。隅々まで綺麗に整えられている植木もしっかり剪定されていて絵画のように美しい。
ふと反射する輝きに目を凝らす。なにか池のような、噴水のようなものがありそうだ。塀のような壁を越えたその先には小さな家々が見える。淡い赤色の屋根で壁はクリーム色をしているのが遠目でも分かった。
「……」
ふっと差し込んだ眩しい陽射しに瞳を細める。空を見上げると澄んだ青空が広がっている。浮かぶ雲はさまざまな形をしていて、近くからは可愛らしい小鳥の鳴き声も聴こえた。
穏やかな雰囲気に状況すら忘れ、休暇気分に浸ってしまう。次に有休取れたら旅行でもしようかな。なんて思うほどに。どこ行こうかな。海とか山とか、自然があるところでさ。
清々しい空気に包まれて、大きく深呼吸をする。
さて、そろそろ閉めようかと手を伸ばした時だった。視界の端、大木の葉のかげに人影が見えた気がした。反射的に探してしまう。
けどその直後、その人影が窓目掛けて飛び込んできた。慌てて数歩後ずさる。
「……!」
スローモーションのような姿を目で追う。燃えるような赤い髪がたなびき風に乗って流れる。黒いウエスタンハットを目深に被っていて表情は見えない。
けど、風貌からして男性なのは分かる。焦げ茶色の長いコートについてる装飾品がドクロとか金の錨。パッと見だったけど海賊のような印象を受けた。肩には縄の束。
その人が華麗に床へと着地する。
「??」
一瞬、何が起こったのか理解できなかった。景色が一望出来る高さなのに人が入り込むなんて普通ならあり得ない。でも、すぐに身を翻す。
とにかく逃げよう。分からないからこそ離れた方がいい。だけど──。
「っ!」
焦ったせいか足がもつれる。その拍子にバランスを崩してしまった。闇雲に手を出して衝撃に備えてギュッと目を瞑る。
────瞬間、グイッと腰を掴まれ引き寄せられた。
つい、しがみつくように男性の胸元を握る。おかげで転倒は免れたけど代わりに牽制するような低い声がする。
「逃げようなんて、考えるなよ」
「!?」
ハッと見上げた。間近にある男性の顔は端正な目鼻立ちをしていて、金色の瞳が射抜くように私を見つめている。
逃げなきゃ、と思うのに囚われたかのように体が動かせない。
目の前の彼が再度口を開きかけたその時、バタバタと騒がしい足音がして部屋の扉がバタンッと大きな音を立てた。
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