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《莉兎視点》
手負いの獲物 01
しおりを挟む「はぁ? なんだよ、代わりにバイト行けって」
レポート明け。
ようやく訪れた莉兎の平穏な時間を邪魔したのは、双子の兄・呂亜からの電話だった。ぐっすり眠っていたところを無理やり叩き起こされ、莉兎の不機嫌度は既にマックスだ。
ベッドの上でごろりと寝返りを打ちながら、わざと聞こえるように大きく舌打ちをする。
『莉兎、レポート終わったんだろ? 頼むよー』
「それなら、同じバイト先のやつに代わってもらえばいいだろ」
『こないだ代わってもらったばっかなんだって。それに休みも結構無理してもらったとこでさぁ……今月これ以上休むとクビになりそうなんだよ。なぁ、お前金欠っつってたろ? なんなら、時給に色つけて渡すから』
――確かに金欠だけど。
先月、値段も見ずに衝動買いしたティーセットのせいで、財布の中はまだ寂しいままだった。
それでも無駄な買い物をしたとは思っていない。一目惚れしたカップとポットは棚の一番いい位置に飾って、いつだって見られるようにしてある。
だが、金欠が厳しくなってきたのも間違いなかった。
今月も実家から送られてきた米とふりかけだけを頼りに生活していたが、そろそろ限界を感じていたところだ。
――でも、あれだろ。呂亜のバイト先って。
Subを相手にする仕事だったはずだ。
金をもらって、相手を満足させるためにプレイをする。その点において呂亜は確かに優れたDomだったが、莉兎はあまりそういう目的のプレイが得意ではなかった。
Domとしての欲求が少ないわけではない。むしろ、その逆だ。Domの欲求が強すぎるが故に、プレイが暴走しがちになる。
仕事にするには全く向いていない性質だった。
『今日は予約も一人だけだし、その人だけ相手してもらったら帰ってもらって大丈夫だから』
「いや、待て。予約入ってんのかよ」
『予約っつっても新規の客だから俺の顔は写真でしか知らねえよ。そのほうが楽だろ? 喋んなきゃ、俺たちそっくりなんだし』
「そういう問題か?」
『なあ、お願い! マジでレポートやべえんだよ』
呂亜がここまで焦っている声を聞くのは久しぶりだった。本気でレポートがやばいのだろう。
眉間に皺を寄せながら、壁に掛けてあるカレンダーを見上げる。メインのバイト先であるカフェの給料日までまだ十日以上あるという現実に、莉兎は小さく溜め息をついた。
「報酬は即金?」
『もちろん! すぐに渡す!』
「……本当に色つけろよ。マジで金欠なんだから」
『助かる!!』
了承した途端、電話はあっさりと切れた。
すぐにメッセージアプリでバイト先の場所と時間が送られてくる。
そこに書かれた報酬金額に、呂亜が無理をしてでもこのバイトを続ける理由がわかったような気がした。
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