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《莉兎視点》
幸せなうさぎ 01
しおりを挟む軽くシャワーを浴びて部屋に戻った後、莉兎はコウキの身体を清めてやった。
濡らしたタオルで飛び散った体液を優しく拭き取ると、コウキが嬉しそうに表情を緩める。だが時折、店でも見せたような悲しげな表情を浮かべるのが気になった。
誰のことを考えているのかはわかる。前のパートナーのことだろう。
何を考えているのかまではわからないが、首輪の跡に触れる仕草でその相手が誰なのかすぐにわかる。
「コウキさ、たまにすごく寂しそうな顔してること気づいてる?」
思い切って聞いてみた。
コウキが驚いた表情で莉兎のほうを見上げる。
「今もそうなんだけどね。それって、前の人を思い出してたりする?」
別に問い詰めるつもりはなかった。コウキの考えていることが、少し気になっただけだ。
コウキは黙り込むと、自分の顔に手を当てた。どうやら、表情に出ているとは思っていなかったらしい。
質問の返事を急かすつもりはなかった。答えを待つ間も身体の汚れを拭き取ってやる。
コウキは何か言おうとしては、言葉に詰まっているようだった。その表情には明らかな罪悪感が募っている。莉兎に申し訳ないと思っている顔だ。
「ごめん。そんな顔させるつもりじゃなかったんだけど」
「ううん……僕こそ、ごめん」
コウキは肯定も否定もしなかったが、その縋るような視線から感情が伝わってくる。
莉兎に嫌われたくない――そう思ってくれているのがわかる。
感情が言葉よりも顔に出るのは場合によっては不便かもしれないが、今この状況においては嘘をつけないコウキの表情にひどく安心できた。
――嫌われてないのか。
あんな嫌がるようなことをしたのに。
コウキはまだ、自分に好意を寄せてくれているらしい。
「リウ、僕――……っ」
コウキの泣きそうな声に、莉兎まで少し泣きそうになった。
涙があふれてしまう前に身体を折り曲げ、優しく唇を重ねる。くちゅりと舌を絡め、頭を優しく撫でてやると強張っていたコウキの身体から力が抜けた。
まだGlareを当ててもいないのに、簡単に莉兎に身体を委ねてしまうコウキに愛しさがこみ上げてくる。
「謝らなくていいからね。コウキは少し人の反応を怖がりすぎだよ、大丈夫だから」
謝らなくてはいけないのはひどいことばかりをした莉兎のほうだ。
だけど、きっとコウキは謝罪など望んでいない。
「でも……」
「Good。ちゃんと俺のCommandは守れたし、たくさん気持ちよくなれたでしょ?」
「……ぅ、ん」
「俺のGlareを素直に受け止めて、そうやって蕩けた顔をたくさん見せてくれるだけでいいんだよ。苦しそうな顔も泣き顔も、悲鳴だって……コウキは全部、俺の理想なんだから」
――そして、俺を赦してくれるところだって。
DomとSubが互いに支え合う関係なのだと、初めて理解できた。
Subを支配し、コントロールすることこそがDomの役割なのだと思っていた。これはそのための力なのだと。だからこそ、歪んだ自分を認められなかった。
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