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第77話 祠の影、息づくもの
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森の奥にある古い祠は、昼でも薄暗い。
木々が重なり合い、風が通るたびに葉擦れの音がざわめくように響く。
「……ここね」
春香が静かに呟いた。
美奈はうなずき、震える指で懐中電灯のスイッチを入れる。
祐真は背後で懐中電灯を構え、辺りを警戒するように見回していた。
「この祠、昔は村の守り神を祀ってたって言われてる。でも──」
祐真が口を濁す。
春香が問うように視線を向けた。
「でも?」
「二十年前、美桜ちゃんが消えたときも、この祠の近くで靴が見つかったんです。……ただ、それ以上は、何も」
風が一瞬止む。
森全体が息を潜めたように静まり返る。
「紅葉も……秋祭りの夜、ここへ来たのかもしれない」
春香の声は震えていた。
母としての直感が、何かを確信している。
美奈は懐中電灯を祠の内部へ向けた。
その光の先に、湿った土の上──新しい靴跡があった。
「……誰か、最近来てる」
祐真が膝をつき、跡を確かめる。
「……この靴跡、紅葉ちゃんのじゃない。もっと大きい。大人の男の靴だ」
春香の喉がごくりと鳴る。
「誰が……なんのために……」
そのとき、祠の奥から何かが転がり出た。
カラン──
それは、赤い紐のついた鈴だった。
美奈が息を呑む。
「紅葉の……髪飾り」
春香は震える手で鈴を拾い上げた。冷たく、湿っている。
けれど、それ以上に不気味なのは、祠の奥の足跡が“外へ”ではなく“中へ”続いていることだった。
「中に……誰かいるの?」
美奈が呟くと、祐真が制するように手を伸ばした。
「下がって。俺が見る」
祐真が懐中電灯を構え、祠の奥へ顔を近づけた瞬間、
中の闇が“ふっと動いた”。
「──っ!」
祐真が一歩のけぞる。光が揺れ、木々の影が歪む。
春香が慌てて美奈の肩を抱き寄せた。
その奥から、湿った土の匂いとともに冷たい息のようなものが漏れ出してくる。
祐真の頬に何かがかすめた。長い髪のような、細いもの。
「……春香さん、美奈ちゃん。すぐに下がって」
低く言いながら、祐真は懐中電灯をもう一度照らす。
──そこには、祠の壁の奥に開いた“細い裂け目”があった。
まるで、人ひとりが通れるほどの……隠し通路のような。
春香が青ざめた顔で呟く。
「紅葉は……ここから、どこへ?」
そのとき、どこからともなく鈴の音がひとつ、森の奥へと遠ざかっていった。
まるで、彼女たちを“導くように”。
しかし祐真は、その音の方向をにらみつけたまま、小さく首を振った。
「……違う。あれは、呼んでるんじゃない。警告してる」
木々が重なり合い、風が通るたびに葉擦れの音がざわめくように響く。
「……ここね」
春香が静かに呟いた。
美奈はうなずき、震える指で懐中電灯のスイッチを入れる。
祐真は背後で懐中電灯を構え、辺りを警戒するように見回していた。
「この祠、昔は村の守り神を祀ってたって言われてる。でも──」
祐真が口を濁す。
春香が問うように視線を向けた。
「でも?」
「二十年前、美桜ちゃんが消えたときも、この祠の近くで靴が見つかったんです。……ただ、それ以上は、何も」
風が一瞬止む。
森全体が息を潜めたように静まり返る。
「紅葉も……秋祭りの夜、ここへ来たのかもしれない」
春香の声は震えていた。
母としての直感が、何かを確信している。
美奈は懐中電灯を祠の内部へ向けた。
その光の先に、湿った土の上──新しい靴跡があった。
「……誰か、最近来てる」
祐真が膝をつき、跡を確かめる。
「……この靴跡、紅葉ちゃんのじゃない。もっと大きい。大人の男の靴だ」
春香の喉がごくりと鳴る。
「誰が……なんのために……」
そのとき、祠の奥から何かが転がり出た。
カラン──
それは、赤い紐のついた鈴だった。
美奈が息を呑む。
「紅葉の……髪飾り」
春香は震える手で鈴を拾い上げた。冷たく、湿っている。
けれど、それ以上に不気味なのは、祠の奥の足跡が“外へ”ではなく“中へ”続いていることだった。
「中に……誰かいるの?」
美奈が呟くと、祐真が制するように手を伸ばした。
「下がって。俺が見る」
祐真が懐中電灯を構え、祠の奥へ顔を近づけた瞬間、
中の闇が“ふっと動いた”。
「──っ!」
祐真が一歩のけぞる。光が揺れ、木々の影が歪む。
春香が慌てて美奈の肩を抱き寄せた。
その奥から、湿った土の匂いとともに冷たい息のようなものが漏れ出してくる。
祐真の頬に何かがかすめた。長い髪のような、細いもの。
「……春香さん、美奈ちゃん。すぐに下がって」
低く言いながら、祐真は懐中電灯をもう一度照らす。
──そこには、祠の壁の奥に開いた“細い裂け目”があった。
まるで、人ひとりが通れるほどの……隠し通路のような。
春香が青ざめた顔で呟く。
「紅葉は……ここから、どこへ?」
そのとき、どこからともなく鈴の音がひとつ、森の奥へと遠ざかっていった。
まるで、彼女たちを“導くように”。
しかし祐真は、その音の方向をにらみつけたまま、小さく首を振った。
「……違う。あれは、呼んでるんじゃない。警告してる」
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