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第一章
1 夢の出来事
しおりを挟むがたがたからのカランゴロン
切り立つ崖からの馬車ごとダイブは猛スピードで滑落する中でふわりとした初体験な無重力感覚。
ちょっと嬉しい……ってそんな事を言っている場合ではない。
このままでは120%間違いなく真下の森だろうな。
内陸だから海はない。
湖らしいものも見た事はない……と思う。
一面の緑だからこの際森……って今はそんな定義を決めなくてもいいの!!
一番の問題は後数分?
数十秒先には間違いなく私は転落死が待っている。
死――――ってこの前死んだばかりなのにまた死ぬのはちょっと、出来ればその遠慮をしたい。
いやいやそれすらももう敵わないか。
何故ならもう既に馬車は地面へ向かって重力に引き寄せられる様に堕ちて行っているのだから。
本当ならばここは深窓の令嬢として儚くも『あ』って声と共に気を失う間に死んでしまいたかった。
だが悲しい事に私は深窓の令嬢でもなければよ。
か細い精神しか持ち合わせない華奢で儚い性格でもなければ見た目でもない。
それだけにいま激しく自分自身の性格と置かれた状況に後悔していたりするぅぅぅぅぅぅぅ。
「あ……」
な、何だ夢?
今までの、そう義妹に婚約者を奪われたのもお母様と約束した男爵家の相続までも奪われ挙句に朝起きた早々お父様からベーアかバーカかは知らないけれどもよ。
妾になれと言われて何時も乗り慣れたぼろ馬車へ放り込まれればね。
修道院で清く美しく生きて行こうって娘を問答無用とばかりにそのアホっぽい名前の豪商の許へと送りつけようとしたのもよ。
まして義妹のマルティナの企みで、御者を誘惑し私を崖から落として転落死迄画策するだなんて流石に小説の読み過ぎよね。
ああ本当に小説みたいな展開過ぎて何処からどの様に突っ込めばいいのか全く分からなかったわ。
あはははー。
私は気が付くと寝台の中で眠っていた。
なので上体を起こし頭をぽりぽりと無造作に搔きながら夢の内容を思い出していた。
余りにリアルな夢過ぎてちょっと……かなり引いたのは内緒。
本当に最近色々と着かれていたのかもしれない。
いやいや最近ではないわよね。
これもそれも全てはお母さまが亡くなられてからずっとよ。
もうずっと私はゆっくりとした環境で、こうしてふわふわな寝台に滑らかな手触りのお布団に包まって眠っていなかったわよ……?
ふわふわな寝台?
滑らかな手触りのよい上質なお布団?
何時もの様に硬くて少しじめっとした感じの、理念も中々交換してくれないから自分で交換するしかない寝台で、お布団も昔話あるあるの見事な煎餅布団さま。
こんなに羽毛が沢山入っている様な、適度に温かいのにでも物凄く軽いお布団なんてお母様がご存命の頃でもなかったものよ!!
だって、だってリネンも綿ではなく絹。
そう絹は万国共通お高いのです!!
以上の点からいえばこの寝台は私のものではない!!
――――では一体誰のもの?
そうそこですよ。
私が突っ込みたいのはまさにそれ。
あれが夢ならば私は今自分の部屋に居る筈……なのに!?
そろり~っとここで初めて私は周囲を見回した。
全体にシックな感じだけれどもこの寝台と言い調度品やソファにテーブル、壁紙から重厚感のある重そうな扉迄我が家の者でないのは直ぐに理解したと言うかよ。
こんなにお高いものは我が家には存在しません!!
確かに我が家は男爵家としては裕福な方だけれども何と言うか、そうどの家具にしても格式が違うって言うかお偉い王様や高位のお貴族様がお使いになられているもの――――って感じが半端ない。
そして罷り間違ってもしがない男爵令嬢である私が使っていいものは何一つ存在しない。
そこでふと我に返ってみよう。
うん、私は何故ここにいる?
またべたな質問だけれどここは何処?
「……漸くその煩い口を閉じる気になったか。全く騒がしい娘だ」
ひぇぇぇぇぇぇぇ!?
私一人ではなくって言うか今までの独り言を他人様に聞かれてしまっていた。
そして貴方こそ誰なのですかと私は問いたい!!
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