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三章 ケリュネオン参戦編
単行本9巻ダイジェスト① 真の言い分
しおりを挟む今回学園都市を襲った騒動。
人が強力な怪物に変わるという惨事。
僕らはそれを逆手にとってクズノハ商会が今おかれている、あまりよろしくない立場を好転させようと考えた。
実際上手く事は進み、期待した成果はもう目の前にあった。
なのにだ。
好事魔多し、なんて言葉では到底納得できないけれど。
自分の不幸体質がここまでとも思ってなかったけれど。
はい、また邪魔が入りました。
しかも今度は久々にご登場の女神様ご本人と来たもんだ。
それも拉致ですよ。拉致。
芸が無いよねあいつ。
流石に今回は僕も抵抗したからなのか、問答無用にどこかに飛ばされた訳じゃなく、この世界に召喚された時にあの女と話した場所と似たような空間に連れてこられた。
……前回の苦い経験から僕らなりの対策をしていたのに、結局通用しなかったってのはひとまず置いておくとして。
あのやたらと耳に触れる心地だけは良い女神との交渉で、今回使われる報酬にようやくヒューマンと話せる都合をつけ、僕と識は魔族の奇襲からリミアの勇者さんを救う為に女神式のとても丁寧な移送方法でリミア王国の王都を訪れる。
それはもう快適だったと、いつかあいつの耳元で大声でお礼を言ってやりたい。
速やかに放り込まれたのはリミアの王都ウル。
僕はそこで……予想もしていなかったとある再会を果たした。
中津原高校の有名人だったその人は、今はリミアの勇者をしてたんだ。
響先輩。
ははは、なんて心底から乾いた笑いが出る経験ってのは現実にはそれほどあるもんじゃない。
何故かこの世界に来てからはそれなりにあるのが恐ろしいとこだけどな。
なんで貴女が、と喉元まで出かけた言葉を飲み込む。
これ自体は悪くないサプライズだったから思いがけない再開を喜ぶのもアリではあった。
けれど僕は今の自分の状況と、具体的に僕がしてるそれは恥ずかしい格好、そして何故先輩が着てたグラビアアイドルも引くかもしれない過激な服装を見て思いとどまった。
結局あの時は聞けなかったけど、あれどうして……。
何とか気持ちを切り替えて、先輩と戦っていた魔族の将軍と対峙する僕。
仕方ない、やるしかないと気持ちを切り替える。
多様な亜人を軍の構成員として受け入れ、高い士気の元作戦を行う魔族の軍は見事だった。
正直ヒューマンよりも好感を抱いたのは事実。
それでも今回はその魔族と戦わないといけない。
女神との、と前置きはつくけど間違いなく自分が交わした約束だ。
破りたくない。
それに、巴と澪に命令をしてしまった手前もある。
僕らが王都を何とかしている間に、あの二人と亜空の皆に結構な頼みごとをしたんだ。
亡国の奪還。
亜空で巴や澪の指導のもと戦士として更なる訓練を積んでいたハイランドオークとミスティオリザードは強い。
強いけど、これが大規模な戦いともなれば損害なしとは流石にいかないだろう。
誰かが命を失う事も十分に考えられる。
それでも僕は命令した。
なのに、魔族の将軍がちょっと気に入ったから相手にするのをやめといた、とか。
女神との約束だったし反故にしたよ、とか。
とても言えたもんじゃない。
僕は僕でやるべき事を。
それが筋だ。
だから今回は逃げない。
誰が相手であろうと、先輩は守り、魔族は撃退する。
そう、誰が相手であろうとだ。
ちょっと前の夏休みで得た新しい力の、本格的な実戦投入の機会でもある。
ロッツガルドも、こっちも。
クズノハ商会の無理、通させてもらうよ。
推して参る、ってね。
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