リスティリア救世譚

ともざわ きよあき

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第一章  眩きレブレーベント

第七話 眩きその名は①

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 総司の目が、ぎらりと、飛んでくる砲弾を見据える。
 雷をかわし、ゾルゾディアの腕をかわし、高速で飛来する砲弾に跳び、蹴り飛ばして進路を変えた。
 器用な発想だった。空中で自由に動けない総司が、鋭く進路を変えられる唯一の方法だ。
 その唯一の方法が、アレインの思考から外れているわけもなく。
 ゾルゾディアは的確に、総司を見ていた。
 思いついた決死の特攻は、冷静さを欠いた突撃だ。
 ブレスが総司の体を包む。蒼い魔力がわずかに途切れる。
 莫大な雷の海から音を立てて抜け出す総司だったが、地上に降りた瞬間、がくんと膝が落ちた。
 電撃が体を駆け巡る。腕も足も、思考すらも言うことを聞かない。
 まさしく会心の一撃。致命傷にならないのは流石といったところだが、完全に機動力を奪われた。回復するまで、アレインが見逃すはずもない。
 もとより勝ち目のない戦いだ。総司がアレインの命を切り捨てられない限り、ゾルゾディアを打ち倒す手段はなかった。それでも総司が粘ったのは――――
「今度こそ終幕ね」
 ゾルゾディアが再び口を開く。周囲にも金色の球体が出現し、必殺の一撃を構えた。
「見事な戦いぶりだったわ。あなたは強い。けれど届かないのよ、その程度では」
「ぐっ……!」
 電撃を何とか振り払い、自由を取り戻そうともがく。そして――――
 総司の目が、その姿を捉えた。
 足への集中を切る。今必要な力は、腕を本気で動かす力。リバース・オーダーを握り、総司は上半身に意識を集中して、剣を思いきり投げた。
 凄まじい膂力で放たれたリバース・オーダーが、ゾルゾディアの二の腕に突き刺さった。
 女神の騎士の剣は、ゾルゾディアの魔力を受けても弾かれることはなかった。
 しかし当然、ゾルゾディアに通じるはずはない。アレインは下らなさそうに剣を見下ろして――――
 その方向から地を蹴り、突き刺さった剣を踏み下ろし、駆け上ってくる姿を見た。
 一瞬の油断、いや、それすら過言と思えるほどの気のゆるみ。
 総司に集中し、騎士団の援軍に気を取られ、尚も強者として君臨し、今まさに女神の騎士を押さえ込んだが故の、意識の外。
 そうだ、最初は認識していた。ゾルゾディアと言う圧倒的な力に立ち向かう“二人の勇者”の存在を。
 いつから彼女の存在を見逃していたのか、アレインにも覚えがなかった。
 脅威足りえるのは女神の騎士だけ。ゾルゾディアの攻撃を悉く凌ぐ彼を見て確信してしまった。その思い込みが――――
「はああああ!!」
 リシア・アリンティアスの存在を、己の意識から消し去ってしまっていたと理解した時には既に、リシアが振り翳すレヴァンクロスが、アレインの背後にまで迫っていた。
 アレインとゾルゾディアを繋ぐ魔力のラインを、これでもかと叩き斬る。
 ブツン、と、アレインの内側で、全ての接続が切れる感覚が走った。魔力が体から抜け出していくのを感じる。全身の力が抜ける。
 敗北の予感が、確信に変わる。
「リシ……ア……」
「帰りましょう、アレイン様。あなたとゆっくり話がしたい」
 リシアがアレインの体をぎゅっと抱きかかえて、ゾルゾディアの体から引き剥がす。ゾルゾディアがうめき声をあげ、二人のことなど構いもせずに暴れ出した。
 リシアはアレインを離さない。思いきり跳躍し、総司を飛び越えて、騎士団が砲台を構える場所へ走った。
 総司も、電撃に奪われていた自由を取り戻した。暴れまわるゾルゾディアに向かって走り、二の腕に取りついて、リバース・オーダーを捕まえる。
 暴れるゾルゾディアに思いきり振り払われてしまったが、その勢いで剣も引き抜くことが出来た。勢いそのまま、リシアの後を追う。
 この世の終わり、そう形容された戦いは、ここに終わりを迎えたのだ。
「よぉしよくやったぞ、アリンティアス!」
 バルドが手を叩いて、リシアの帰還を大喜びで出迎えた。カルザスは緊張が解けたのか、どさっとその場にへたり込む。
「はぁ~……流石にダメかと思いましたよ。何にせよ、素晴らしい勝利です」
 騎士団の面々も、口々に勝鬨を上げながら、リシアを出迎えた。アレインに肩を貸すようにして騎士団の元へ戻ったリシアの顔も、どこか和らいでいる。
 だが、アレインの表情は硬かった。魔力を使い切り、疲れ切ってぐったりしているが、その表情には焦燥が見える。
 何かをしようとして、力が入っていない様子だった。リシアはアレインの異変に気づいて、心から気づかうようにその顔を覗き込んだ。
「アレイン様、お気を確かに。あなたの想いを私も十分に――――」
「リシア、バルド……! 全員連れて、すぐここから離れなさい……!」
 アレインが叫んだ。カルザスは呆れたように、
「アレイン様、まだそのようなことを――――」
 アレインがリシアをぶん、と騎士団の方へ投げるようにして引き剥がし、振り向いた。
 金色の閃光が、眼前にまで迫っていた。
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