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 あまりにも普通にそう言うものだから。
 は、と声が漏れたまま、ぽかんとしてしまった。
 だって俺、何回か女神が出てこないか試してみたのに出てくることなくて。
 ……え、なんで?
 固まってしまった俺の代わりに、いつ会ったのかと確認したのは莉央くんだった。
 また嫌そうなかおを向ける怜くんに、反対に莉央くんは傷付くじゃん~と笑う。

「それじゃあ多分、終わらせないといけないんだと思う」
「……終わらせる?」
「僕の話、ざっと話したことありますよね、その、小説通りのイベント。細かいのでいえばやってないのとかもあるんですけど、大筋のものは終わらせてて……最後のものが」

 ちらりとリアムを見る。
 あまり聞かせたくない話なのだろう。
 そのリアムは口許をべたべたにしてまだ食事中だ。

「……の親、を殺した奴を倒して終わり、なんですけど」

 リアムの両親を殺した奴。
 話を聞いてた俺は勿論、聞いてない莉央くんも、なんとなく察したようだった。
 俺は悪い奴ではないと思うんだけどな、莉央くん。怜くんと相性が悪いだけで。

「まさか殺したの?」
「……ッさねーよあの子の前で馬鹿かよ!」

 そういうとこだよ莉央くん、とそこは流石に呆れてしまう。堪えた怜くんは偉い。
 少し声を荒げた怜くんに、リアムはきょと、とした視線を向けたけど、大丈夫だよというように笑顔を見せた怜くんに、自身もまたにこーっと笑ってフォークを口に運んだ。
 危ない、こんなかわいい子にかなしいことを思い出させたくないもんな。

「拘束して突き出しただけ。そんなのあの子に見せたくないし」
「ふうん」
「で、物語もそれで終わりで、ふたりの生活は続きました、とか、ほのぼのした番外編とかはあったけど、話自体はそれで完結」
「……そしたら女神が?」
「そう、無事に終わらせてくれてありがとうございます、今後はすきに生きて大丈夫ですよって、それだけだったけど」

 訊きたいことはたくさんあった、でも突然だったし、まだ感情も昂っていて、大したこと訊けなかった、と。
 だから他の皆も完結したら女神に会えるんじゃない、と。
 完結したらって……

 思わず莉央くんと見つめ合ってしまった。
 ……無理でしょ、完結なんて。
 そもそも俺の話は未発表なんでしょ、完結以前に始まってもないのでしょ、で、莉央くんの話もまだ完結してないんでしょう?
 仮に怜くんも知らない間に完結していたとして、今から世界征服なんて何年掛かる?
 莉央くんはそれでいいとして、その間ノエに何も起きないとは言いきれない。
 そうだ、焦ってるのだ俺は。
 そして焦ってるのは俺だけなのだ。

「……どうやったら女神と会えると思う?」
「さあ……」

 怜くんも馬鹿じゃない、というかこの話でいちばん頼りになるのは、詳しいのは怜くんなのだ、いちばんまずいと思ってるのも彼だ。
 ふたりの完結が無理なら、残りふたりの完結の手伝いをするとか、とそういった話しか提案も出来ない。

「聖女の話って一冊って言ってたよね、それがいちばん早いんじゃない」
「でも災いってどうしようも出来なくない?引き起こせるものなの?」
「ていうか災いって何」
「小説では疫病と魔物が襲ってきて、それをどうにかして終わりでしたね」
「疫病を引き起こす訳にもいかないし、魔物も今殆どいないんじゃ……?」
「……」

 すぐに災いが起きるのであれば、完結までいちばん早いのは聖女さまの物語だろう。
 でもそれを人力でする訳にはいかない。
 そうなると、次に早いのは、国を立て直すこと。
 ……少なくとも世界征服よりは早い、と思う。
 が、問題はその彼がどこにいるのか、ということだ。
 見つけ出してどこまで進んでるのか、早く完結してくれとお願いしないといけないのだが、肝心の相手が誰かも居場所もわからなければ、俺たちに出来ることなんて……

「……いたわ」

 つい口に出してしまった。思い出したから。
 聖女さまが、日本人に会ったのは俺でふたりめ!とピースして見せたことを。
 聖女さまは知っている。
 居場所まではともかく、誰かということを。

「やっぱり王都行くかあ」
「王都に居るかはわからないだろ、てかあんたまで行く必要ないだろ」
「王都から始める世界征服もいいかなって」
「てめー絶対王都行くな」
「ここで変わらない生活しててもいいの?」
「止めろっつってんのに!」

 またわたしに会いに来てね、とさみしそうに小指を出した聖女さまを思い出す。
 怜くんよりも少し歳若い妹のような彼女が、ひとりで不安と戦っている。
 彼女にこの話を伝えることが出来たら少しくらい安心出来るだろうか。
 もしかしたら、もう彼女の近くにもうひとりの日本人はいないかもしれない、それでも聖女さまに話をしに行くのは有りではないか。
 俺たちが感じた安堵を、いちばん若いあの子に感じて貰ってもいいのではないか。
 少し対抗意識を持っていたノエも、流石にもう聖女さまに焼きもちは……妬くかもしれないけれど。

「俺も王都に戻ろうかな」
「えっ」
「約束を破るみたいでちょっと苦しいんだけど。……でもその代わり、ふたりのこと、ちゃんと守るよ、ね、怜くんも行かない?」

 手を差し出すと、怜くんは迷うように眉を寄せた。
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