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7.遺跡を守りしもの
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「おまえ、無事だったのかよ!」
「ごめんね、サカキ。
びっくりしちゃったでしょ?
これも、カエデの作戦だったの」
「うまくいって、よかったですわ」
水でびしょ濡れになったカエデも、こちらに近づいてきた。
「ゴーレムを倒すためにどうすればよいのか考えた結果、
ルーナが言っていた水場を利用することにしましたの」
そう、壁に穴が空き、隣の部屋に行けることになった。
それが、偶然ルーナが利用していた聖なる水場だったのだ。
「ルーナにわたくしが持っていた蔓草の種をわたして、
ゴーレムに食べさせるように頼んだんですの」
ルーナは食べられたのではなかった。
カエデからもらった種を、タイミングよくゴーレムの口の中に放りこんだのだ。
そして、自分は姿を消す魔法で消えていた。
「水は植物に力を与え、植物は土や岩をも砕く……。
この遺跡を見た時、植物が岩を侵食している姿を見て、ピンときましたの。
って、聞いてまして?」
さきほどからサカキは、きょろきょろと辺りを見回している。
「だって、ルーナの姿が見えないから、ホントに無事なのかなって……」
「あ、姿消しの魔法を解くのを忘れてたわ」
じゃーんっと言って、ルーナがあらわれる。
瞬間、サカキはルーナを抱きしめた。
「うわー、マジだ。マジで無事だった。
本当に、本当によかった……」
サカキは泣きそうになりながら、よかったとつぶやき続けた。
「サカキ、ちょっと、気持ちはうれしいんだけど、苦しい……」
もごもごとサカキの腕の中から声がして、
ぴょこんと黒いもやが飛び出した。
ああ、こんなうさんくさい黒いもやを見て、
安堵する日がくるなんて……。
サカキはしみじみと考える。
「……ルーナ? アナタ、本当にルーナですの?」
そんな中、疑問の声。
見ると、カエデがぽかんとした顔をしていた。
「何言ってんだよ、カエデ。
この真っ黒いもやもやに、赤い瞳。
どう見ても、ルーナじゃねーか」
サカキはルーナの頭だと思われる黒いもやのてっぺんを、
ぺしぺしと指で軽くたたいた。
「赤い瞳……」
カエデはぽつりとつぶやいた。
いったい、どうしてしまったんだろう?
サカキとルーナに見つめられ、カエデはゆっくりと首を振った。
「いいえ、なんでもありませんわ。
なんだか、ゴーレムを倒したら、安心してしまって……。
ぼうっとしていたみたいですわね」
そうして、カエデはくしゅんとくしゃみをした。
「あ、カエデ、びしょぬれだもんね。
今、乾かしてあげる。よき風よ、命の灯を燃やす手助けとなれ。
温かな風よ、かの者に吹け」
ごおおっという音とともに、カエデが風に包まれる。
あっという間に、身に着けていたものすべてが乾いてしまった。
「あいかわらず便利ですわね……。
ねえ、ルーナ。
アナタ、わたくしの魔法が奇妙だとおっしゃってましたわよね」
「え、うん。
さっきのも、ちょっと変だった。
やっぱり、植物たちがおびえていたもの」
「……そうですの」
カエデはじっと考えこんでしまった。
サカキとルーナは顔を見合わせる。
とりあえず、こういう時は放っておいた方がいいだろう。
「あー、おれも、水浴びしたかった。
今、水場、どろどろの泥水だもんなぁ」
「カエデのあれは水浴びっていわないでしょ。
まあ、聖なる水を浴びたといえば、浴びたけど……。
服のままよ?」
そんなたわいのない会話をしていると……。
「うぉおぉぉおおお‼」
空気がビリビリと震えた。
叫び声とともに、水場全体がざばりと盛り上がると、
それはそのまま上半身だけの人の形となる。
さきほどの攻撃で、核を壊しきれなかったのだろう。
ゴーレムは、水場にある泥をもとに、体を構成し直したのだ。
しかし、体全体がどろどろぬかるみ、形をたもてていない。
ぼちゃ、ぼちゃ。
ゴーレムの体から泥のかたまりがとれ、水場に落ちては音を立てる。
「しつこいな!」
サカキは剣を握り、ゴーレムへ向かって行く。
ゴーレムは手をのばしてサカキを握りつぶそうとするも、
サカキはそれを避けて、ゴーレムの体へと近づいていった。
「核が、丸見えなんだよ!」
そう、ゴーレムの核である魔鉱石が、ゴーレムの体の中で光を放っていた。
硬い岩の鎧がない今、弱点をさらけ出していると言っていい。
たんっ。
サカキは地面を強く蹴って飛び、核に向かって切りつけた。
バキャッ!
ひびの入っていた核は、サカキの剣で真っ二つになった。
その光が失われる。
今度こそ、完全に核が破壊されたのだ。
「あああぁぁぁ……」
ゴーレムは最後の悲鳴を上げて、どちゃりとくずれおちた。
「げ。うわっ、ちょっと待っ……!」
そのまま、サカキも泥の中に飲みこまれてしまった。
「ごめんね、サカキ。
びっくりしちゃったでしょ?
これも、カエデの作戦だったの」
「うまくいって、よかったですわ」
水でびしょ濡れになったカエデも、こちらに近づいてきた。
「ゴーレムを倒すためにどうすればよいのか考えた結果、
ルーナが言っていた水場を利用することにしましたの」
そう、壁に穴が空き、隣の部屋に行けることになった。
それが、偶然ルーナが利用していた聖なる水場だったのだ。
「ルーナにわたくしが持っていた蔓草の種をわたして、
ゴーレムに食べさせるように頼んだんですの」
ルーナは食べられたのではなかった。
カエデからもらった種を、タイミングよくゴーレムの口の中に放りこんだのだ。
そして、自分は姿を消す魔法で消えていた。
「水は植物に力を与え、植物は土や岩をも砕く……。
この遺跡を見た時、植物が岩を侵食している姿を見て、ピンときましたの。
って、聞いてまして?」
さきほどからサカキは、きょろきょろと辺りを見回している。
「だって、ルーナの姿が見えないから、ホントに無事なのかなって……」
「あ、姿消しの魔法を解くのを忘れてたわ」
じゃーんっと言って、ルーナがあらわれる。
瞬間、サカキはルーナを抱きしめた。
「うわー、マジだ。マジで無事だった。
本当に、本当によかった……」
サカキは泣きそうになりながら、よかったとつぶやき続けた。
「サカキ、ちょっと、気持ちはうれしいんだけど、苦しい……」
もごもごとサカキの腕の中から声がして、
ぴょこんと黒いもやが飛び出した。
ああ、こんなうさんくさい黒いもやを見て、
安堵する日がくるなんて……。
サカキはしみじみと考える。
「……ルーナ? アナタ、本当にルーナですの?」
そんな中、疑問の声。
見ると、カエデがぽかんとした顔をしていた。
「何言ってんだよ、カエデ。
この真っ黒いもやもやに、赤い瞳。
どう見ても、ルーナじゃねーか」
サカキはルーナの頭だと思われる黒いもやのてっぺんを、
ぺしぺしと指で軽くたたいた。
「赤い瞳……」
カエデはぽつりとつぶやいた。
いったい、どうしてしまったんだろう?
サカキとルーナに見つめられ、カエデはゆっくりと首を振った。
「いいえ、なんでもありませんわ。
なんだか、ゴーレムを倒したら、安心してしまって……。
ぼうっとしていたみたいですわね」
そうして、カエデはくしゅんとくしゃみをした。
「あ、カエデ、びしょぬれだもんね。
今、乾かしてあげる。よき風よ、命の灯を燃やす手助けとなれ。
温かな風よ、かの者に吹け」
ごおおっという音とともに、カエデが風に包まれる。
あっという間に、身に着けていたものすべてが乾いてしまった。
「あいかわらず便利ですわね……。
ねえ、ルーナ。
アナタ、わたくしの魔法が奇妙だとおっしゃってましたわよね」
「え、うん。
さっきのも、ちょっと変だった。
やっぱり、植物たちがおびえていたもの」
「……そうですの」
カエデはじっと考えこんでしまった。
サカキとルーナは顔を見合わせる。
とりあえず、こういう時は放っておいた方がいいだろう。
「あー、おれも、水浴びしたかった。
今、水場、どろどろの泥水だもんなぁ」
「カエデのあれは水浴びっていわないでしょ。
まあ、聖なる水を浴びたといえば、浴びたけど……。
服のままよ?」
そんなたわいのない会話をしていると……。
「うぉおぉぉおおお‼」
空気がビリビリと震えた。
叫び声とともに、水場全体がざばりと盛り上がると、
それはそのまま上半身だけの人の形となる。
さきほどの攻撃で、核を壊しきれなかったのだろう。
ゴーレムは、水場にある泥をもとに、体を構成し直したのだ。
しかし、体全体がどろどろぬかるみ、形をたもてていない。
ぼちゃ、ぼちゃ。
ゴーレムの体から泥のかたまりがとれ、水場に落ちては音を立てる。
「しつこいな!」
サカキは剣を握り、ゴーレムへ向かって行く。
ゴーレムは手をのばしてサカキを握りつぶそうとするも、
サカキはそれを避けて、ゴーレムの体へと近づいていった。
「核が、丸見えなんだよ!」
そう、ゴーレムの核である魔鉱石が、ゴーレムの体の中で光を放っていた。
硬い岩の鎧がない今、弱点をさらけ出していると言っていい。
たんっ。
サカキは地面を強く蹴って飛び、核に向かって切りつけた。
バキャッ!
ひびの入っていた核は、サカキの剣で真っ二つになった。
その光が失われる。
今度こそ、完全に核が破壊されたのだ。
「あああぁぁぁ……」
ゴーレムは最後の悲鳴を上げて、どちゃりとくずれおちた。
「げ。うわっ、ちょっと待っ……!」
そのまま、サカキも泥の中に飲みこまれてしまった。
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