お母様が私の恋路の邪魔をする

ものくろぱんだ

文字の大きさ
32 / 58

女神と天使の母娘の現状

しおりを挟む
「ただいま帰りました」

あー、疲れたわぁ。

誰もいないフロントに私の声が響く。
ステフと連れ立って部屋に向かう最中、一人も使用人を見なかった。

・・・お母様の部屋が騒がしいから、何かあったのかもしれない。

ステフと顔を見合せ、狼狽えている使用人を一人捕まえた。

「ねえ、何をしているの?」
「アッ、お、お嬢様っ・・・」
「エルメロージュゥウウウううううううう!!!!!!!!」
「「ひっ!?」」
「あっ、奥様!」

え、なになに怖すぎる。
急に叫び声が響いたかと思ったら、使用人たちが顔を真っ青にして転がり出てきた。

そして光が零れるその部屋に、影がかかった。

「ぴえ・・・」

やばいわお母様なのあれ怖すぎでしょあれ。

髪が乱れ、ぎょろりとした瞳がこちらを射抜く。

「・・・エルちゃん・・・?」
「ひっ」

おかしいわね、妃殿下と同じ呼び方のはずなのに寒気がするのよ。
ていうかさっきの叫びはなんだったの?

フラフラ近寄ってきたお母様に固まっていると、肩を掴まれた。
え、なになになに。

「・・・良かった。無事だったのね・・・もう、心配かけちゃメッ、よ?」
「・・・っ、はい・・・すみませんお母様」

お、お父様、お父様はどこなの?引き取ってちょうだい。

「学園に行ったと聞いたわ・・・それを貰ってきたの?」
「はい・・・ステフ」

ステフが手に持つものを見てそう呟いたお母様に、唾を飲み込みながらもステフに声をかける。
サッとステフが取り出したのは・・・。

「・・・あら、新しい魔道具?」
「ええ・・・えっと確かですね、ここを、こうすると・・・」
「まあっ、あったかい風が出たわ」
「はい、どらいやー?というそうです」

お兄様から貰ったカモフラージュの魔道具を、「お母様に渡したくて」と渡す。
満面の笑みを浮かべたお母様に解放され、安堵の息をつきながらきびすを返した。
けれど。

「エルちゃん」
「・・・、・・・はい」
「あんまりお母様に心配かけないでね?」
「・・・はい」

どらいやーを抱き締めて、幼子のように笑うお母様。
けれどもその目は笑っていない。

・・・ああ。

本当に貰ってきたものをドレスの上から触れて、私は今度こそ部屋に戻った。



「・・・怖かったわ」
「そうですね」
「・・・ものすごく女神やってなかった?」
「そうですね」
「・・・ステフお前それしか言わないのね?」
「そうですね・・・いや、こっちも考えてたんですよ」

ドレスの下から袋を取り出し、ステフに渡す。
数秒固まりながら袋と私のスカートを交互に見ながらも、ぎこちなくステフは動き出した。

「ちゃんと隠してね」
「ハイ」
「バレちゃダメよ?」
「ハイ」
「あ、ちょっとはみ出てる!」
「ハイ」
「うん、いい感じ~」
「ハイ」
「このまま計画通りに行くといいわね」
「ハイ」
「・・・聞いてる?」
「ハイ」
「・・・ダメね」
「ハイ」
「・・・とりあえず今日はおやすみ」
「ハイ」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】冷徹執事は、つれない侍女を溺愛し続ける。

たまこ
恋愛
 公爵の専属執事ハロルドは、美しい容姿に関わらず氷のように冷徹であり、多くの女性に思いを寄せられる。しかし、公爵の娘の侍女ソフィアだけは、ハロルドに見向きもしない。  ある日、ハロルドはソフィアの真っ直ぐすぎる内面に気付き、恋に落ちる。それからハロルドは、毎日ソフィアを口説き続けるが、ソフィアは靡いてくれないまま、五年の月日が経っていた。 ※『王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく。』のスピンオフ作品ですが、こちらだけでも楽しめるようになっております。

王命って何ですか? 虐げられ才女は理不尽な我慢をやめることにした

まるまる⭐️
恋愛
【第18回恋愛小説大賞において優秀賞を頂戴致しました。応援頂いた読者の皆様に心よりの感謝を申し上げます。本当にありがとうございました】 その日、貴族裁判所前には多くの貴族達が傍聴券を求め、所狭しと行列を作っていた。 貴族達にとって注目すべき裁判が開かれるからだ。 現国王の妹王女の嫁ぎ先である建国以来の名門侯爵家が、新興貴族である伯爵家から訴えを起こされたこの裁判。 人々の関心を集めないはずがない。 裁判の冒頭、証言台に立った伯爵家長女は涙ながらに訴えた。 「私には婚約者がいました…。 彼を愛していました。でも、私とその方の婚約は破棄され、私は意に沿わぬ男性の元へと嫁ぎ、侯爵夫人となったのです。 そう…。誰も覆す事の出来ない王命と言う理不尽な制度によって…。 ですが、理不尽な制度には理不尽な扱いが待っていました…」 裁判開始早々、王命を理不尽だと公衆の面前で公言した彼女。裁判での証言でなければ不敬罪に問われても可笑しくはない発言だ。 だが、彼女はそんな事は全て承知の上であえてこの言葉を発した。   彼女はこれより少し前、嫁ぎ先の侯爵家から彼女の有責で離縁されている。原因は彼女の不貞行為だ。彼女はそれを否定し、この裁判に於いて自身の無実を証明しようとしているのだ。 次々に積み重ねられていく証言に次第に追い込まれていく侯爵家。明らかになっていく真実を傍聴席の貴族達は息を飲んで見守る。 裁判の最後、彼女は傍聴席に向かって訴えかけた。 「王命って何ですか?」と。 ✳︎不定期更新、設定ゆるゆるです。

王宮に薬を届けに行ったなら

佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。 カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。 この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。 慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。 弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。 「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」 驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。 「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」 ※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。(貴族→庶民)それにより、内容も少し変更しておりますのであわせてお楽しみください。

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま

たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。 そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室? 王太子はまったく好みじゃない。 彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。 彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。 そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった! 彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。 そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。 恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。 この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?  ◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 R-Kingdom_1 他サイトでも掲載しています。

【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。

櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。 夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。 ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。 あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ? 子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。 「わたくしが代表して修道院へ参ります!」 野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。 この娘、誰!? 王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。 主人公は猫を被っているだけでお転婆です。 完結しました。 小説家になろう様にも投稿しています。

不当に扱われるメイドと不遇の王子達

ひづき
恋愛
下級メイドのアーネはいつも仕事を押し付けられていた。 ある日、体調不良の令息ウィルを押し付けられる。 そのウィルを迎えに来た、ウィルと瓜二つの青年エストと出会ったことで、アーネの生活は一変する。 実質解雇になったり、養女になったり、王太后の復讐に巻き込まれたりするアーネ。 復讐しか頭にない王太后、無関心な国王、善人すぎる第二王子、狂った王弟。様々な王家の柵に振り回されるウィルとエスト。 目指すハッピーエンドに辿り着けるのは誰なのか。 ■ 毎日21時更新 ■ 2021/10/20 開始 ■ 全24話 ■ 2021/11/12 完結予定 ■ 番外編 2021/11/13以降公開予定

今宵、薔薇の園で

天海月
恋愛
早世した母の代わりに妹たちの世話に励み、婚期を逃しかけていた伯爵家の長女・シャーロットは、これが最後のチャンスだと思い、唐突に持ち込まれた気の進まない婚約話を承諾する。 しかし、一か月も経たないうちに、その話は先方からの一方的な申し出によって破談になってしまう。 彼女は藁にもすがる思いで、幼馴染の公爵アルバート・グレアムに相談を持ち掛けるが、新たな婚約者候補として紹介されたのは彼の弟のキースだった。 キースは長年、シャーロットに思いを寄せていたが、遠慮して距離を縮めることが出来ないでいた。 そんな弟を見かねた兄が一計を図ったのだった。 彼女はキースのことを弟のようにしか思っていなかったが、次第に彼の情熱に絆されていく・・・。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

処理中です...